「品質のいいものを国内で作り続けるには、価格決定権のある自社ブランドを立ち上げるしかないと思ったんです」
と昌樹さん。
大学時代の後輩で書籍編集の仕事をしていた久保正子さんを半年かけてブランドディレクターに口説き落とし、赤ちゃんの産着にも使われているガーゼという素材に特化した「ao」が誕生したといいます。
みなさんもガーゼは触れたことがあると思いますが、ふわふわと軽くて柔らかいぶん、裁断するにもミシンを掛けるにも生地がよれやすく、加工には技術を要します。
女性向けのブラウスで繊細な素材を扱ってきた美装いがらしのスタッフでも、扱いに慣れるまでは大変苦労したとのこと。
「ao」の特徴は、デザイナーに関してはフィーリングの合う外部のクリエイターとコラボレートして作っている点。新作も発表していますが、気に入ったデザインの服をずっと着続けられるよう定番アイテムが大半を占めます。
昌樹さんから印象深い話を聞きました。
代官山のお店に、擦り切れて穴のあいたパジャマを「直してほしい」と持参した年配の男性がやってきたそう。それは男性の奥様が着心地が気に入って、亡くなるまで着ていたものだったとのこと。
「肌触りがいい柔らかさと布の強度。すべての矛盾が解決できるわけではないけれど、昔からの付き合いのある糸や布の生産地を巡り、そのパジャマにあう素材を探しています」と昌樹さん。
素材に関しては、糸魚川で綿花を栽培するなどの試みもやっているそうです。
話は最初に戻りますが、その「ao」の昌樹さんとアウトドアで活躍をしている寒川さん。
「着心地のいいハンモック」「光が優しく透けるタープ」など、2人が考えたユニークな試作品や、なぜ「ガーゼ服 meets アウトドア」というアイデアが生まれたのか、そのあたりの裏話を、今後あらためてお伝えしたいと思っています!
◎文・写真=村岡利恵
(元女性誌編集者。都会育ちのアウトドア初心者なのに15年小谷村に移住。今後は大町市に移り、HÜTTE muu muuとしても活動開始予定)