そう、アラスカには、クマが至るところにいるのです。キャンプ中のある日、バスに乗ってアイルソン・ビジターセンターという場所を訪ねていた時、ビジターセンターの近くにクマが出没。レンジャーたちによって周辺のトレイルはすぐに閉鎖されました。クマが自ら人間に向かってきて攻撃することはめったにないそうですが、出会い頭に不用意に驚かせたり刺激したりすると、不測の事態も起こり得ます。国立公園内のトレイルを歩く時も、クマに対しては細心の注意が必要なのです。
キャンプ場では夕方になると、この区域を担当するレンジャーの方々によるレクチャーが開催されます。ゴールド・ラッシュの頃のエピソードとか、夏のアラスカで非常にやっかいな蚊についての話とか……。レクチャー自体はとても面白いのですが、何しろとても寒いので、じっと座って聞くのにはかなりの忍耐力が要求されます。
夜の8、9時頃、西の空が一瞬、燃えるような夕焼けに染まった後、ツンドラに夜が訪れます。
真夜中、北の空を音もなく静かに舞っていた、オーロラ。それは、この世の出来事とは思えないほど、現実離れした美しい光景でした。
【アラスカ・デナリ国立公園の旅1】
【アラスカ・デナリ国立公園の旅2】
【アラスカ・デナリ国立公園の旅4】
【アラスカ・デナリ国立公園の旅5】
◎文/写真=山本高樹 Takaki Yamamoto
著述家・編集者・写真家。インド北部のラダック地方の取材がライフワーク。著書『ラダックの風息 空の果てで暮らした日々[新装版]』(雷鳥社)ほか多数。
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