情景や文脈を映像から読み取ってほしい
風が通り抜ける音、焚き火が燃える音…。そしてそれを映し出す世界は、実に穏やかでビックリするほどに心地いい時間が流れている。「モリノネチャンネル」の動画は、その映像美が人気だ。多くを語ることはなく、ひたすらその世界観に入り込める。
「実はYouTuberになろうと思ったこともは今も昔もないんです。最初にYouTubeに動画を上げたのは、20歳ぐらいのころ。多分まだYouTubeがそこまで浸透していないぐらいのときだと思います。自分の好きな風景を撮って、それに音楽をのせて編集するのが好きで、そういう動画を作っていました。そのあと、2018年から本格的にYouTubeを始めたんです。趣味の延長のような感じなので、YouTuberとして成功させるぞとかは、実はあまり考えてなくて(笑)。ただ、映像を作るのは好きなので、撮影やカット割りなどは人一倍時間をかけてるとは思います」
配信を始めて4年ほどでチャンネル登録者数は25.5万人(2022年1月現在)。どの動画も10万回以上再生されている。
「初めて再生回数が伸びたと思った動画は『スノーピークの焚き火台で過ごす休日』です。それまでは、道具を説明する動画を上げていたのですが、それでは自分自身がおもしろくなくて。内面的な部分を表現できるような動画を作るほうが自分も楽しいし、見ている人もおもしろいと思ってくれるのではないかと思って作ったのがこの動画でした。ちょうどスノーピークの焚き火台が売れていた時期だったのもあって、ニーズが合致したんだと思います」
すごいのは、動画の配信を頻繁に行なっているわけではないのに、人気が衰えないこと。1か月1本というスローペースながら、その1本のクオリティーが高いがゆえに視聴者が離れないのだ。
「動画の内容には期待していただいていると思っているので、クオリティーだけは落とさないように、内容第一で考えています。その思いはずっと変わっていないです。撮影に行くときに事前に何を撮るのかを考えていく場合とそうじゃない場合があって、例えば山登りのときにはテントと山のシーンの両方を入れようと思うと、事前に考えないとうまくいかないんですね。でも逆に予定を決めてしまうと、流れがおもしろくなくなるときもあるんです。何も考えずに行ったときにそれはそれで別のおもしろさも生まれるから、両方の良さを生かしていますね。キャンプだけを楽しもうと思ったら、撮影とは別にいったほうがもちろんいいんですが、僕の場合は撮影も楽しいから、撮影しながらキャンプをしても十分楽しめる。普通は嫌なんでしょうけど(笑)、僕はハードな仕事がけっこう好きなので」
ソロ同士が集まるデュオキャンが楽しい!
モリノネさんといえば「ソロキャン」のイメージも強い。いちばん人気の動画は124万回も再生されるほどだ。完全ソロ派なのかと思いきや、実は「デュオキャン」が好きなのだとか。
「僕がソロがいいと思うのは、小学校のときに行っていたキャンプが合宿みたいだったからなんです。5人用のテントに4人で泊まって、みんなで食材を買って決まったスケジュールで動く。そういうのが窮屈で。せっかくキャンプに行ったのなら自分の時間を楽しみたい。それでソロキャン派になったんです。同じくソロキャン派の友達がいて、お互いソロの装備でいって、隣同士にテントを張る『デュオキャン』をすることもあります。食事も各自で作って、基本的にはソロキャンをするんですね。それで夜になったら焚き火を囲んで語り合います。古い友だちなので、昔を振り返るときもありますし、深い話をする時間がすごくいいんですよね。自分のペースを確保しつつ友達といく楽しさも味わえるので、デュオキャンはおすすめですよ」
ソロキャン初心者に向けた本を発売
ソロで行くときのキャンプ道具、キャンプ場の選び方、アウトドアレシピやコーヒーの淹れ方まで! モリノネさん流のキャンプの楽しみ方がわかる書籍『おだやかに過ごす はじめてのソロキャンプ』(ワニブックス)が発売中です。のんびりと過ごす”スローキャンプ”の魅力が詰まった1冊になっています。
モリノネさん
大分県在住。2018年からキャンプの様子を記録したYouTubeを開始。映像作家としても活躍中。
構成・文=中山夏美