世界100か国以上に約6000ホテルを有するIHGホテルズ&リゾーツ。日本ではインターコンチネンタルやキンプトン、ANAクラウンプラザ、ホリデイ・インなどを展開しています。そして2020年1月には、グループのホテルブランドカテゴリーの中でも一番上のランクに属する「ホテルインディゴ」が日本に初登場。最初の場所に選ばれたのは、箱根強羅の地でした。
この注目のホテルが2021年12月に打ち出したのが、日本有数の観光地である箱根をあらためて深堀りし、新しい魅力を発見して伝える「箱根強羅サスティナブル旅プラン」です。「箱根強羅・宮城野 100 年のストーリー:豊かな自然、歴史・文化の継承へ」をテーマにしたこのプラン、いったいどんな体験ができるのでしょうか。
箱根の豊かな自然を満喫!ナショナルパークトレッキング
四季折々に変化する大自然が広がる富士箱根伊豆国立公園は、東京都、神奈川県、山梨県、静岡県に広がる広大なスポット。ホテルで配布される専用散策マップをもとに、それぞれのペースでトレッキングを楽しみましょう。
ホテルから徒歩約10分で到着するのは、約2.5kmのゆるやかなトレッキングコースの入り口。日頃、運動をしていない人や子ども連れでも楽しめる初心者向けのコースなので、深い森に身をゆだねる感覚を味わうことができます。
木々の間を抜けて進むのは、早川渓谷自然探勝歩道。取材時はまだ紅葉途中でしたが、深い緑に木漏れ日、垣間見える清流など、さまざまな自然を楽しむことができ、ゆるやかな起伏や階段も交え、目に身体に飽きることなく歩き続けられます。
早川渓谷自然探勝歩道の終点は、桜橋(吊り橋)。ここから早川の渓谷沿いに、宮ノ下まで堂ヶ島渓谷遊歩道を進んでいきます。途中にはあちこちに発電施設が目につきます。
高低差のある地形をいかし、この地では古くから水力発電がさかんに行なわれていたことを今回初めて知りました。かつての発電所の跡から、今も現役で働く発電所まで見つけることができ、森林に加え、豊かな水と共に栄えた歴史が垣間見えるようでした。
間伐材を使った箸づくりで林業が直面している問題を考える
日本の国土において、森林が占める割合はおよそ70%。しかし木材価格の低迷や林業従事者の減少などが原因で、森林の手入れが行き届かず荒廃していく現象があちこちで起きています。森林を健全に維持するには、日光が行き届くように木を間引く「間伐」が必要なのにも関わらず、いまは必要な間伐の40%しか実施できていないのだそう。
取材では、実際に間伐する体験をしながら林業の方のお話を伺い、実際に体験することで、間伐作業は力だけなく、経験や正確さが必要な繊細な作業であることを学びました。
「サスティナブル旅プラン」には、地元の事業者と連携し、周辺地域の間伐材を利用した「オリジナル箸作り」を体験できる、ホテルオリジナルのプログラムも含まれています。
間伐材を箸にできるサイズにカットされたものと、布、やすり、ミツロウが配られ、箸にするための仕上げの作業を自分たちで行ないながら、好みの細さや形状に仕上げていきます。
作業をしながら地元の方のお話を伺うことで、森林の環境維持の問題について私たちもリアリティをもってうけとめ、考えるきっかけに。
同時に一生懸命、やすりをかけ、ミツロウを塗り込み、布で磨き上げて自分だけの箸が完成! この布は、オープン時につくった手ぬぐいの残布を利用しており、残ったミツロウと共に持ち帰れば、アイロンでミツロウを溶かしてミツロウラップが完成するはず! さらにゴミを出すことなく、一石二鳥ですよね(と、自画自賛)。
害獣とされている鹿肉を使ったエシカルダイニング体験
広大な森林に抱かれ、その森林が現在抱えている問題を知り、お次は「食」です。ホテルインディゴ箱根では、レストランで提供する料理の食材は可能な限り、半径10km圏内での調達を目指しているのだとか。
また、箱根町内全域でシカやイノシシが出没し、掘り起こしによる被害が続出しているため、捕獲を実施しているという現状を受け、害獣として扱われているシカをジビエという地域資源に変える試みが新たにスタート。
「INDIGOガストロノミー」というディナーコースで、農業を持続させるための環境保護や、貴重な恵みを余すところなく活用することで、地域や自然環境とのエシカルな共生を食を通じて体感できます。
実際にお料理をいただいたところ、基本的に洋食メニューでありながら、使われている食材のみならず、スモークやグリルに使う木まで、近隣から手に入れてきたもの。コースで提供される各お料理の食材が味わい深いのはもちろん、フレンチ出身のシェフによるメニューは、ひと皿ひと皿に、初めて出会う新鮮な味わいがこめられた繊細な仕立て。デザートにいたるまで、余すところなく土地のおいしいものを堪能しました。
レストランは箱根を象徴する「火」と「水」にインスパイアされた設計で、メインに据えられたグリルでの調理は、華やかさもありつつ、あくまでも箱根強羅という土地が持つエレメントを大切に演出されています。
ホテルインディゴ箱根強羅が土地と深く関わり続ける理由
土地の食材や名産でもてなすプランは各地にあれど、土地の歴史や直面している問題の共有、そして地元の事業の活性化まで含めて循環するように考えられたホテルのプランは、SDGsがさかんに叫ばれている中でも、珍しいもの。なぜこのプランの発足にいたったのか、ホテルインディゴ箱根強羅の総支配人、山田智章さんにお話を伺いました。
「今回のプランは地元の方から、間伐材を使った箸のことや、箱根の伐採が抱える問題などの話を伺ったことから始まりました。やはり職人の話を聞いたり、間伐を体感できるようなことが、こんな東京からも近い場で体験できるってイメージ、あまりないと思うんです。そういうことを伝えたり、近くの農家の野菜を仕入れたり、このプランをつくって終わりではなく、もっと継続的にこの土地との関わり方を模索し続けていくことで、今後ももっとアイデアが生まれていくのではないかとか考えております」(山田さん)
この「土地との関わり方」について、表層的なものにとどまらず、土地の隠れた魅力、解決されていない問題まで踏み込む姿勢には、ホテルインディゴのブランドコンセプトが深くかかわっています。
「IHGグループにある約16のカテゴリの中で、ホテルインディゴは一番上の“ラグジュアリーライフスタイル”というカテゴリに属しています。でもどちらかというと、“ラグジュアリー”よりは“ライフスタイル“になります。
他のホテルブランドとの大きな違いは、ホテルが存在するロケーションの地域性や文化、歴史などを、ホテルのデザインやサービスのディテールに組み込んだ、新しいスタイルをとっているところ。ブランドで統一した世界観を世界のどこでも体験できるのとは逆で、同じホテルインディゴの名前でも、それぞれが、その土地でしか出会うことができない、唯一無二の“ネイバーフッドストーリー”を掲げています。
ある程度、その土地に関連したことを自由にやれる柔軟性もあるので、我々としても本当に面白いです。オープン当初はインバウンドの中でも比較的若年層をターゲットにしていましたが、コロナ禍になって、8割近くのお客様が日本人になってみると、意外とミドル層やシニア層の方にも受け入れられていたり、コネクティングルームを使って、親子3代で宿泊されたりと想定よりも幅広くご利用いただけることがわかったのは、収穫でした」
外国人客や若年層層向けに用意していた洋食スタイルが、箱根の旅館で和食というスタイルに飽きてきたシニア層に受けたり、男女が水着で入れるスタイルの大浴場やサウナがファミリー層に受けたりと、コロナ禍という逆境が新しい発見につながったというホテルインディゴ強羅。
首都圏からも気軽に行かれるロケーションで、今後ますます注目度が加速すること間違いなし。予約が取りにくくなる前に、新しい箱根を発見しに訪れてみては?
ホテルインディゴ箱根強羅「サスティナブル旅プラン」
料金/2名1室75,816円(1泊2食付宿泊、箸づくり体験キット、特別ディナーコース、トレッキングマップを含む)
予約/ホテルインディゴ箱根強羅公式HP https://hakonegora.hotelindigo.com/
プラン専用サイト https://reservation.anaihghotels.co.jp/booking/stay_pc/rsv/det_plan.aspx?smp_id=426&hi_id=40&lang=ja-JP
ホテルインディゴ箱根強羅
所在地:〒250-0402神奈川県足柄下郡箱根町木賀924番1
電話番号:0460-83-8310
アクセス:小田急ロマンスカー「箱根湯本」駅より、箱根登山バスで「宮城野橋」まで約15分(バス停より徒歩約2分)
JR「小田原」駅より、無料シャトルバスで約40分
箱根登山鉄道「強羅」駅より徒歩約15分強羅周辺送迎バスあり
ウェブサイト:hakonegora.hotelindigo.com
取材・文/nenko