体がほどよく温まったところで、「ダーカウやろうよ」と誘ってみる。
ところでダーカウとは!?
今年始めにベトナムを旅したときのこと。
首都ホーチミンシティにて、夕食後に公園前を通ったら、若者たちが羽根付きの何かをポーンポーンと蹴って遊んでいた。
鮮やかに宙を舞う羽根に魅せられ、じりじりと近づいていく息子。若者がそれに気づいて仲間に入れてくれた。でも、蹴ろうとしても空振りだったり、運良くつま先に当たってもあらぬ方向に飛んでいったりと、予想以上に難しかったようですぐに私たちのところに戻ってきた。
あとで調べたところ、「ダーカウ」という名の、ベトナム人が大好きな遊びであり、スポーツだということがわかった。一般的には「シャトルコック」と呼ばれ、発祥の地、中国でも盛んに行われているとか。
足で蹴るバドミントン、といったところか。羽根の下はバネのようになっているから、うまく当てると軽く蹴ってもよく飛ぶ。
ただし、バドミントンと違って、ダーカウは少し練習したぐらいではちっとも上達しない。力いっぱい蹴ってしまうとものすごく遠くに飛んでいってしまうし、そもそもまっすぐに蹴るのすら苦戦する。
ベトナムで見たときは、男子も女子も、簡単そうにやっていたのに。
それでも、まぐれでポン、ポン、ポーン! と続くことがあり、そうなるとバンザイしてお互いの成功を称え合う。
もうちょっとダーカウをやって、多少なりともコツを掴みたいところだったが、息子はすでに飽き気味。気分を変えて、池のほうに行ってみる。
浄明寺緑地には小さなビオトープがあり、ザリガニ釣りの絶好のスポットとしても知られている。
さっき拾った棒(ここで登場!)にタコ糸を巻き、エサとなるスルメをつけたら即席釣り竿の完成。さっそく水の中に糸を垂らして待つ。
……ん? ちょんちょんと引っ張る何かを感じるけれど、これがいわゆる「アタリ」か?
実は、ザリガニを釣るのは今回が初めて。ゆーっくりと引っ張り上げると、そこには小さなザリガニが!
こんなにも簡単に釣れるんだ。面白いなあ。
しばらくザリガニ釣りに没頭していると、小学校から帰ってきたお兄ちゃんたちが集まってきた。
「あ、オレもザリガニ釣ろうっと」と言うので、タコ糸やスルメをおすそ分けしようと思ったら、「いや、いらないです」とやんわり断られた。そして、持参していた虫取り網でわっさわっさ泥をすくい、その中からザリガニを見つけ出す、という荒業をやってのけた。す、すごい。
その勇姿を見ていた息子の心に、道具一式が揃っていなくても工夫で乗り切れるんだ、ということが刻まれるといいなあ、と、願わずにはいられなかった。
旅音(たびおと)
カメラマン(林澄里)、ライター(林加奈子)のふたりによる、旅にまつわるさまざまな仕事を手がける夫婦ユニット。単行本や雑誌の撮影・執筆、トークイベント出演など、活動は多岐にわたる。近年は息子といっしょに海外へ出かけるのが恒例行事に。著書に『インドホリック』(SPACE SHOWER BOOKS)、『中南米スイッチ』(新紀元社)。
http://tabioto.com