日本全国、キャンプに山に……と、多くの人々のアウトドア熱がますます高まってきている今日この頃。売れに売れているヒット商品もいろいろとありそうが、いまどきはいったいどんなアウトドアギアが売れているのか? アウトドアショップ代表とBE-PAL編集部が、ベストヒット商品の傾向を座談会形式で徹底トーク。注目のベストヒット商品5選もご紹介します!
アウトドアギアのベストヒット商品は?
アウトドアライター・福瀧智子(以下・福): まさかコロナ禍が2年も続くとは思ってもいませんでしたが、’21年のお店の様子はどうでしたか?
「さかいやスポーツ」横田修宏さん(以下・横): そうですね、密を避けてオープンスペースへ行こうという心理の表われか、新規のお客様が増えた印象です。
BE-PAL編集長・沢木拓也(以下・沢): 接客で何か印象的なエピソードはあります?
横:「◎◎っていう商品あります? それって何なんですか?」みたいな問い合わせを受けて驚いたことはあります。
福: 不思議な質問! それくらいアウトドアやその道具が注目されているということか……。
横: 道具でいうと爆発的人気だったメスティンはやや落ち着きました。今はゴールゼロかな。ガレージブランドのサードパーティー製オプションがカッコよくて、依然人気があります。
福: アウトドア業界は明るい話題も少なくないですね。’20年は多くの大会が中止に追い込まれましたが、’21年は私の住む街でもトレランの草大会が開催されるなど動きが出てきた印象。
横: そうですね、1年間走っていなかったから……と、靴やパックの買い替えが増えたし、体力的に心配だという装備の相談もあります。トレラン、登山は動きがあると感じていますね。
福: そうなると、山では人との接触が少ないテント泊も注目されているんでしょうか。
横: ソロテントは相変わらず売れます。あとはご夫婦やカップルで2人用の軽いテントを購入されるケースも増えました。それにともなって、50L前後の大型ザックも売れていますね。
沢: 最近は道具の軽量コンパクト化で、昔のように60Lだと持て余しますよね。もうあんな巨大なパックは、背負って歩ける気がしないな~。
横: ちなみにウルトラライト界も元気です。ハイカーズデポの土屋智哉さんがプロデュースしたブランド……あれあれ、ほら。軽量なバックパックが手頃な価格でラインナップされているあのブランドです。
沢: あ~、表側に大きなメッシュポケットが付いてる……。
横: そうそう、あれ。
福: あれじゃわからないでしょう(笑)。パック系だと大型や軽量モデル以外も動いてます?
横: 東日本大震災以来、ビジネスバッグは手で持って避難できないという気付きから、各社ビジネス寄りのデイパックが出ています。代表的なブランドでいうとソリッドなデザインでアークテリクスが人気かな。
ウェアはやはりあのブランドの独壇場?
福: アークテリクスの製品は全般的に街でも多く見かけますね。ウェア部門でいえば、今回製品を取り寄せて撮影しましたが、各カテゴリでザ・ノース・フェイス祭りだったな~。
横: 確かに。ノースは入荷したらそのまま右から左へ全部売れてしまう。キャンプ場でも着ている人が多いし、ブランドHPではマウンテンジャケットは購入制限がかかり、バルトロライトジャケットは抽選。ひとり勝ち状態と思いますよ。
沢: ちなみにカラーの傾向は?
福: キャンプやフェスではやはりアースカラーが人気ですね。
横: 山でいえば女性が今年はネイビーやブラック、チャコールのようなベーシックな色を求める傾向がより強い印象です。
福: 確かに。女性の山の装備を取材すると、ピンクや水色といったかつての色合いから変化がある。機能性を重視する人も増えたように感じています。
ソロキャンプ専用のセットも登場!
福: キャンプ部門はどうです?
横: 登山をメインとしてきたうちも’21年はキャンプ製品を強化したことで、ソロキャンパーの男性の来店が増えました。「10年以上水道橋(神保町の隣街)に勤めていたけど、こんなアウトドアショップがあったとは!」なんていう男性がおられたり。あとはスパイスミックスも話題でしたね。ほりにしは本当に売れた! 他社も続々調味料を出してきていますね。
沢: うちもオリジナルをやればよかったと後悔ですよ…。
横: ’22年注目のトピックとしては、コールマンから出るソロキャンプセットでしょうね。テントや寝具、テーブル、焚き火台、ランタンなどがキャリーバッグに収納されている……。
沢: あれは売れそう! 8万円弱で一式そろうのは20代の若者の最初のギアとしていい。ええと、なんだっけ製品名。撮影で見たんだよな……。とにかくソロキャンプは’20年に続きコロナ禍が追い風になっているのは間違いないでしょうね。
福: 焚き火台では?
横: 手堅くスノーピークやユニフレームが売れています。あとは愛知県のズールーギア、広島の野良道具製作所。ジベタリアンとか仙人スタイルなどという、地面に直接座って楽しむソロキャンプが流行で、小型焚き火台と地面すれすれに座るヘリノックスのグラウンドチェアのような椅子とのセットが人気です。
沢: でもさぁ、あそこまで低いスタイルだと僕はもう立てないわ。手をつかないと起き上がれない(笑)。
福: ……ちょっとちょっと、さっきからモノ忘れとか、重いもの背負えないとか弱った足腰の話とか、これ老化座談会!? 土屋さんのはトレイルバムね。コールマンはソロキャンプスタートパッケージ! 若者よ、もっとアウトドア界に来ーい!
売れているアウトドアギア5選
コンパクトさを楽しむ無限の遊びゴコロ
ゴールゼロ/ライトハウス マイクロフラッシュ
手のひらサイズのコンパクトなLEDランタン。専用スタンドやシェードなどサードパーティー製のオプションアイテムが巷で話題!
両手フリーが大切です
アークテリクス/マンティス26
タウンユースからトレイルまでマルチに使えるパック。帰宅困難時の備えとしてデイパックがビジネスシーンでも活躍。
いったい誰が入手してるのだろう
ザ・ノース・フェイス/バルトロライトジャケット
ウェア部門は今年もザ・ノース・フェイスが圧勝。本ダウン製品はあまりの人気振りから、ここ数年連続抽選販売のシロモノ!
ふたりで装備を分担
MSR/エリクサー2
コロナ禍で登山はテント泊が人気。居住性が高く、軽量な2人用のテントを夫婦やカップルで購入するケースも増加。
話題の「ほりにし」今年も大人気!
オレンジ/ほりにし
和歌山発! 20種類のスパイスが調合された万能スパイスミックス「ほりにし」が今年も大人気。他社もそのあとを追う!
アウトドアライター・福瀧智子
男性の多いアウトドア業界の隙間を縫って地味に活動する編集ライター。女性の登山ムック本などを手がける。
「さかいやスポーツ エコープラザ」横田修宏さん
東京神保町「さかいやスポーツ エコープラザ店」責任者。登山好きだが3児の愛息と行くキャンプもマイブーム。
BE-PAL編集長・沢木拓也
飄々とした語り口の小誌編集長。学生時代はワンゲル部に所属し、現在はアウトドア全般を楽しむ。愛知県出身。
※構成/福瀧智子 撮影/山本 智
(BE-PAL 2022年2月号より)