サウナイベントは数あれど、ホテル全館貸し切りでのイベントなんて、前代未聞! サウナ大好き芸人・マグ万平さんによるサウナイベント「万平蒸祭 in ホテルマウント富士」は、“サウナを遊びつくす”というコンセプトで2021年12月11~12日に開催。
2020年の第一回で大好評を博し、今回は待望の二回目。「万平蒸祭 in ホテルマウント富士 Vol.2~ホテルまるごと貸し切っちゃったよ~」というイベントタイトル通り、サウナーに愛されるホテルとしても名高いホテルマウント富士を、なんと2日間も貸し切りに。抽選で選ばれた約120名が、朝から晩まで心ゆくまでサウナを堪能しました。
よりパワーアップした怒涛のサウナコンテンツ
澄み渡る冬の青空に、悠然と姿を見せる富士山を望むホテルマウント富士。広大な中庭を全面的に使用し、5つの団体が手掛ける個性ゆたかなテントサウナ群がお目見え。日中のテントサウナ時間帯には、ホテルのダイナーにてホテルシェフによるサウナ飯が提供されたり、グッズを手作りできるワークショップコーナーも登場。
夜にはマグ万平さん、サウナ大使でマンガ家のタナカカツキさん、作曲家のとくさしけんごさんが登壇するディナーショー、アフターにはテントサウナエリアにナイトサウナがオープン。そして翌朝6時からは、MROラジオ『マグ万平ののちほどサウナで』年始放送の公開収録、同時にテントサウナではモーニングサウナが開催。そしてホテルマウント富士自慢の、サウナを備えた大浴場「満天星の湯」はイベント期間中はいつでも入れるように夜間も解放。…書き出しただけでも、圧巻のサウナ濃度と自由度の高さに、ヘビーサウナ―もライトサウナ―も、思い思いのスタイルでサウナを満喫した2日間となりました。
サウナってこんなに個性的!5団体によるテントサウナを紹介
なんといっても注目は、富士山の存在を感じながら楽しめるテントサウナ群。5つもの団体がそれぞれの個性を生かしたラインアップで設営し、ひとことで「テントサウナ」といっても、こんなに違うものかと比べる楽しみも。
1.自作の“自動ロウリュつき座テントサウナ”が大人気!山梨サ活倶楽部
イベント参加者のほぼ全員が初めて体験するのでは?と思われるのが、事業者ではなく個人のサウナ愛好同好会である「山梨サ活倶楽部」による、テントサウナ“Enthalpy3”。こちらはなんとDIYによるもので、自称「世界一熱いテントサウナ」をうたっているのですから見逃せません。
そして二重構造になったテントの内側へいよいよ入ってみると…
なんと椅子ではなく、まったく冷たさがつたわらない分厚いマットレスの上に、座るスタイル! 確かに、ベンチなどの上で体操座りをしたりあぐらをかいたりするより、床面に座るほうが安定感があり、自分の好きな座り方でリラックス。
しかし床に座ることで気になるのが温度。位置が低くなると温度も低くなるのでは…といいう懸念がありますよね。それを吹き飛ばすのが“自動ロウリュ”システム。もちろんこちらも、DIYによるもの。
温湿度センサーと電動ポンプを連動させ、設定した「絶対湿度g/㎥」(空気1㎥に存在する水蒸気の重さ)を下回ると、自動でストーンの上に水が投入される仕組み。温度が低いときは多めに、温度が高いときは少なめにと、人の出入りで温度が変わりやすいテントサウナでも、一定の体感温度を確保しようとするスゴイ仕組みです。
このテントサウナ“Enthalpy3”をメインで制作した、はま@山梨サ活倶楽部さん(写真右)にお話を伺いました。
「もともとは、山梨サ活倶楽部はサウナ活動を『サウナイキタイ』に書いたりする活動をしていましたが、テントサウナのイベントで自作のテントサウナを見たのがきっかけで、自分たちでもできるかな、と。ふだんは普通の会社員なので、ちょびちょびと制作を進めて、半年くらいで仕上げました。仕組みとしては、外側は通常のキャンプ用ワンタッチタープを改造し、断熱材などを加えて何層にもしています。中は、お風呂マットの上にマット類を重ねた“床に座る”スタイルで、薪ストーブはMORZH(モルジュ)と同じ、INTENTストーブを使用しています。これらは完全に分解することができて、ギリギリ自分の車に載せられるくらいに収めています」
細部を見ると本当に手作りであることがわかり、それもまた感動です。
友達や知人と楽しむことはあっても、イベントへの出展は初とのことで、レアな自作テントを体験すべく、常に順番待ちの人が絶えませんでした。
2.アウトドアサウナといえば!のSauna Campではお茶サウナやウィスキング体験も
何台もずらりとサウナを出展していたのは、ロシア製テントサウナMORZHの輸入代理店も務めるSauna Camp。本格的な寒さが訪れた富士のふもとでも、温度が下がりにくい3層式のMORZHならガッチリと温まるこあとができます。
芝生の上にゴロン!最高の外気浴です。
通常のテントサウナのほかにも、嬉野茶のロウリュができるサウナや、じゃんけん大会で勝ち抜いた人は、10~12名用のテントサウナMORZH MAXのなかで、ウィスキング集団 しらかばスポーツによるウィスキングを体験。ウィスキングに使われる植物は、白樺だけでなく、ナラやユーカリなどさまざま。葉が散りやすいなど、それぞれの特徴をいかして使い分けるんだとか。
3.いくつでも連結可能? METOSの新作サウナは大阪仕様?
暖炉や薪ストーブ、浴槽などの販売から施工までを行うMETOS(メトス)。サウナ―やお風呂好きなら、テントサウナのみならず、どこかの温浴施設で一度はMETOSの製品に出会っているはず。
そんなMETOSが今回出展していたのは、広々とした2連サウナ「ICOYA(イコヤ)」。ん、大阪弁っぽい?と思うのは正解。METOS大阪営業所が手掛けたもので、テーマは“関西”。人とサウナの文化がつながっていてほしい!という思いをこめ、 なんといくつでもジッパーにより連結ができるテントサウナをつくったのだそう。
ひとりでも、人とワイワイ集まるときでも、シーンや人数に合わせていくつでも連結でき、着替えたり荷物を置いたりする前室をつくるような使い方もできる、自由度の高い「ICOYA」。個人での所有はもちろん、サウナイベントでも人気が出そうな、注目の新商品です。
4.薪き火ならおまかせ、のFIRESIDEはテントサウナ以外にストーブも
テントサウナコーナーで特徴的だったのが、あちこちに薪ストーブや焚き火が置かれていたこと。本格的な寒さの中で、水風呂や外気浴で冷えすぎたときには、体の芯まで温めてくれる薪火の存在がありがたく、ゆらめく炎と森の木々、その奥にそびえたつ富士山…と、絶景に没入するのにも一役かってくれました。
これらの「薪火」とテントサウナ「Mobiba」を展示していたのが、FIRESIDE。アウトドアはもちろん、家庭用や業務用の薪ストーブなど、あらゆる「薪火」にまつわる商品や空間を開発している会社です。
5. SHONAN BEACH SAUNAの出展は子どもOKの低温サウナ、国産新サウナブランド
湘南地域でテントサウナイベントやレンタルを行なっているSHONAN BEACH SAUNA(湘南ビーチサウナ)。今回は2タイプのテントサウナで出展! プロデューサーの藤代実希さんによると、「今回ご用意したのは、国産の薪ストーブ&新ブランド『I am Sauna』のサウナ用テントと、子どもも入りやすいフィンランドの『Arctisauna』の低温テントサウナです」とのこと。
筆者たちは時間切れで体験できなかったのではすが、Arctisaunaはフィンランド製らしい優しいニュアンスカラーが素敵。一方、I am Saunaは見るからに保温効果抜群そうな中綿入りのうえ、ひもを引っ張るだけで簡単に設営できるんだとか。ストーブも含めて国産ということで、日本人ならではの細やかさでこれから注目が集まりそうです。
「今回の裏テーマはサウナ好きのファミリー層に楽しんでほしい」(マグ万平さん)
盛りだくさんとなった「万平蒸祭 in ホテルマウント富士 Vol.2」。今回はどのようにプランニングしたのか、マグ万平さんにお話を伺いました。
――今回の貸し切りには驚きましたが、どんな経緯で?
マグ万平さん(以下、敬称略)「前回が好評だったということで、2021年にホテルマウント富士さんとまたやれたらやりたいよね、という話はしていたのですが、コロナの状況が見えなかった。すると運よく、9月くらいからできそうな雰囲気が出てきたので、一気に話が進みました。その時点では、貸し切りという話ではなかったのですが、12月11日に予約がまだ入っていない日があるということで、思い切って貸し切りにして、万平蒸祭のお客さんで全部埋めたら面白くないですか、とご提案くださったのです。正気かと思いました(笑)。それが本当にかなうのであれば、ホテルが全館貸し切りで、すれ違う人が全員サウナ好きなんていうイベント、今までなかったので、夢のような話だなと思ってやらせていただきました」
――ファミリーで参加されている方が多い印象でした。
マグ万平「万平蒸祭などのサウナイベントを、今までいろいろな施設でやらせていただくなかで、小さいお子さんを抱えているサウナ好きのご夫婦が、なかなかサウナに行けない現状があるというのは知っていました。僕自身も結婚して子供をもったというのもあり、そういう人たちが喜ぶイベントをやりたいなと思っていて。そんな折に、この貸し切りのお話をいただいて、このホテルマウント富士に一泊二日、ほかのお客さんに迷惑をかけない完全貸し切り、サウナ室を出て3分後には自分たちの部屋に戻れる…これ、サウナ好きの親子いけるじゃん!と。だから裏テーマとして、ファミリーでぜひサウナを楽しんでほしいっていうのがあったんですよね」
――だからお子さん連れの方が多かったんですね。
マグ万平「水着の上にバスローブでがっつり入る気満々なお母さんが、お子さんを載せたベビーカーを押しながら、どのテントサウナに入ろうかなぁ~って選んでいる傍ら、旦那さんはもうととのってて、ベンチで口開けて寝ていたり。なんて平和な家族の図なんだと感動して、こういうイベントがやりたかったんだと改めて思いました」
――実際に当日を迎えてみて狙い通りというか。
マグ万平「そうですね。チビたちが遊べる子供用の温水プールもあって、そこで遊ばせながら交代で親がサウナに入ってきたりとか。今まで、そういうサブイベントが自分たちも欲しくてもなかったので、今回はそれをつくれたのがよかったなと思います」
――テントサウナの5団体も、ご自身でお声がけされたとか。
マグ万平「そうですね! Sauna Campチームは昨年もここでテントサウナを担当していただいて。もう5年以上前から、サウナイベントでテントサウナを出展することで、お客さんにサウナの面白さを知って楽しんでもらう第一人者なので、アウトドアサウナに対するスタッフの経験値も果てしなく高いんです。僕もはいっているしらかばスポーツっていうウィスキングチームは、なかなか本格ウィスキングって体験できる機会が少ないので、みなさんに喜んでいただけてよかったです。
そしてMETOS大阪は、日本最大の暖炉やサウナなどを扱うメーカーの大阪チームです。新しいサウナを持ってきてくれて、知識なんかについてもプロフェッショナルなので、安心してお任せできました。
FIRESIDEさんは薪ストーブの専門メーカーで、アウトドアにおいてもキャンプやストーブなど、火を使うコンテンツのプロの方々。ロシアのテントサウナMobibaの設置のほか、あちこちに配した焚火の演出もお願いしました。
SHONAN BEACH SAUNAさんは、女性がホストを務めるテントサウナのアイデアがあるといいなと思い、声をかけさせていただきました。実際に何度も何度もイベントを運営されているので安心ですし、お子さんでも入れるようなサウナを用意してくださりましたね。
そして最後、山梨サ活倶楽部。ファミリー層に楽しんでほしいイベントといえど、万平蒸祭はやはりサウナ好きが集まるフェスでもあるので、ガチ勢を納得させたいという想いから、お誘いしました。
僕が今まで経験したテントサウナの中で、史上最高温度、史上最高湿度をたたき出すことができ、しかもデジタルを使ってパソコンで制御してセッティングをつくれるという、超マニアックな素人のテントサウナ集団ですから、ド変態ですよ。ずっとパソコンのモニターのグラフを眺めていて、これで中の様子がだいたいわかるんです、っていうから、ちょっとしたマッドサイエンティストです(笑)。それくらいテントサウナへの愛が強くて、知り合ったときに、この人はそのまま知られないのはもったいないと思ったんですよね。
そういう風に、僕が実際に知っていて信頼できるホストの方にお願いして、万平蒸祭の名のもとに、いろいろなテントサウナをお客さんが楽しめるようにできたのは、本当にありがたいし、やりたかったことです」
――気が早いですが、第3回を考えるなら?
マグ万平「今回は120名だったのですが、どこまで人数が増やせるかという調整もやってみたいですね。来客を増やすということは、テントサウナの数も増やさないといけないんです。12月だと、寒すぎてサウナ待ちをさせられない。これが夏だったらちょっと待ってても外は温かいしとか…それなら満員まで入れて300名とか…。
実験と挑戦の場なので、3回目ももっといろいろなチャレンジはしていきたいなと思っています。なので、この記事を読んだ方で、何かこういうイベントやってほしいですというのがあったら、僕のSNSのDMとかで何かお便りいただけると参考になるので、逆にお願いしますという感じです」
――このフォーマットで固まったというわけではないんですね。
マグ万平「そうですね。もしかしたら第3回はサウナがないかもしれない。サウナなしに果たしてととのえるのかっていう、大挑戦になっているかも…(笑)。何はともあれ、山にあるサウナ施設に行ったり、テントサウナにちょっと入ったことがある人は増えていても、アウトドアサウナイベントに実際に参加したことがある人って、まだほとんどいないんですよ。
サウナ好きが一堂に会するサウナフェス、音楽フェストはまた違う、体験した人にしかわからない気持ちのいいグルーヴ感っていうのが、もっと広がっていくといいなと思っています」
ホテルマウント富士
山梨県南都留郡山中湖村山中1360-83
TEL:0555-62-2111
万平蒸祭 in ホテルマウント富士 vol.2
https://www.mtfuji-hotel.com/event/mushimatsuri2021/
取材・文/安念美和子(nenko)