砂漠に生える植物
アメリカの砂漠地帯、アリゾナ州。年中カラッと晴れていて、冬場も半袖で過ごせるほど快適な反面、夏場は暑すぎて、他州の避暑地へ移動する人が続出。そんなアリゾナで、夏も冬も関係なく、何百年と同じ場所で生き続けている植物がいます。それが”サボテン”です。
日本ではあまり見かけない野生のサボテンですが、ここアリゾナ州南部ツーソンでは、右を見ても左を見てもサボテンだらけ。みんなトゲトゲしていて、刺さったらいかにも痛そうだけど、じつはみんなそれぞれ個性的。しかもよく観察すると、他の動物との共生の様子まで、垣間見ることができるのです。
背の高いサボテン「スワロー」
アリゾナ州を象徴するサボテンといえば、この「スワロー」。
「Saguaro」 と表記されているので「サグアロ」にしか読めませんが、アリゾナの地元の人たちはみんな「スワロー」と呼んでいます。もちろんトゲトゲしていますが、器用につつく鳥もいるらしく、このように巣穴が開けられていることも。
大きなもので人間の何倍もの高さになりますが、スワローはものすごく成長速度が遅いサボテンなのです。アメリカ国立公園の紹介によると、早くても、8歳までに成長するのは3cm。腕のように見える部分が生えるのは、順調に育っても50歳ごろか、水が極端に少ない環境だと100歳近くになるまで腕が生えてこないことも。本当に少しずつしか成長しないので、トップ画像のような立派な大人のスワローは大体100歳以上と考えられます。寿命は大体、150歳から175歳の間だそうです。
(参考→https://www.nps.gov/sagu/learn/nature/how-saguaros-grow.htm)
では、スワローが枯れたあとはどうなるのか?朽ちると、このように何本もの細い木が束になった状態になります。地元では”スワローのスケレトン(骨)”と呼ばれていて、ちょうど良い長さに切って、ハイキング用のストックとして使う人もいます。
ちなみに枯れてからまだそんなに月日が経っていない場合は、このように中身の繊維質を観察することができます。おそらくこれで、効率よく水分を吸収して蓄えることができるのでしょう。雨がよく降る季節のスワローは普段より少し膨張して太って見えるそうです。
「ジャンピングチョーヤ」は、刺さりやすいので要注意
続いて、これも日常的によく見かけるサボテン「チョーヤ」。
またの名を「ジャンピングチョーヤ」と呼ぶこともあります。遠目で見ると、細かい毛のようなものがたくさん生えたフワフワした植物なのですが、近くで見ると、一面トゲに覆われていることがわかります。このトゲはとても細くて刺さりやすく、また本体の枝の部分がポロリと折れやすく脆いつくりになっています。動物に刺さってはチョーヤの先端の一部が本体から分離して、動物が行った先まで運ばれて、分布を拡大していく。そのため、「ジャンピング」と呼ばれているという説があります。
この通り、ちょっと触っただけでも指に刺さるので、要注意です。
ほかにも種類いろいろ、アリゾナのサボテン
アリゾナには本当にいろいろな種類のサボテンが生えていて、色や形も個性的。
例えばこのサボテン。本体は丸い樽のような形をしていてそれだけでも可愛らしいのですが、トゲをよく見ると、ピンク色。先端が魚の釣り針のように曲がっているので、「fishhook cuctus(釣り針サボテン)」 の愛称で親しまれています。が、川も一年中ほとんど枯れているような砂漠地帯アリゾナで、魚釣りができる場所があるのかどうか、私にはわかりません…。
サボテンはこのように、本体から垂直に生えた長いトゲとは別に、横方向に短いトゲをたくさん生やしていることがあります。だから刺さると、持つところがなくて、引き抜こうにも引き抜けなくなることがあります。そんなときは、手頃な大きさの石を2つ探して、石を巨大なピンセットのようにして摘んで引き抜きましょう。
アリゾナのイノシシはサボテンを食べるらしい
ちょっと信じられないかもしれませんが、これはサボテンが動物に食べられた痕です。
アリゾナのイノシシは、ほかにどうしても食べるものがないといには、サボテンを食べることもあるそう。痛くないのか、不思議です。
それに比べると、私たち人間は、本当に無力なもので。
ボーッと歩いていたら、サボテンが足に刺さってしまいました。痛いよ。
サボテンだらけのアリゾナを歩く際には、サボテンが刺さらないよう、十分に気をつけましょう。