秋といえば「黄道光」の季節。
黄道光とは、夜間に黄道(天球における太陽の見かけ上の通り道)に沿って帯状に見える淡い光芒のこと。日本では、1~3月の夕方と9~11月の明け方に観測しやすくなる天文現象だ。
9年ほど前になるが、イギリスのロックバンド「クイーン」(先日来日しましたね!)のギタリスト、ブライアン・メイ氏の博士号論文が発表され話題になった。氏がロックミュージックで成功する以前に、大学で天体物理学を専攻していたという話はファンの間では有名だったが、まさか36年もの歳月を経て、再び博士号論文に着手するとは思ってもみなかった。と同時に、時を経ても尚、彼が宇宙への憧れやロマンを失っていなかったということに、同じ天文ファンとしてとても嬉しく思ったものだった。
論文テーマは「黄道塵の中の視線速度」。黄道塵とは地球軌道付近に散らばっている塵のことで、その塵が太陽光を散乱し黄道光として観測されるのだ。
そうそう、ブライアン・メイといえば、クイーンの名盤「オペラ座の夜」収録の「’39」はメイのペンによる曲で、なんと恒星間航行の“ウラシマ効果”を題材にした曲。カントリー調の佳曲で、一聴して好きになった曲なのだが、よくよく歌詞を読み返すと実に興味深い。まさか特殊相対性理論を歌っているとは思わなかった。さすが、天体物理学を学んだ者が書く曲である。
閑話休題。そんな黄道光だが、淡い光なので、観測は空のコンディションに大きく左右される。ぜひ星空のきれいな場所で見てほしい。
そして、この時期の黄道光は冬の天の川と対で楽しみたい。東の地平線から立ち上がる光芒は、天の川に届かんばかりで、その光景は神々しいという形容がぴったりだと思う。
一晩の撮影を終える頃、東空を見やると、この光芒が黎明を知らせてくれる。その時間は、秋らしく清々しいひと時だ。
僕にとって、黄道光は秋の星空散歩に欠かせないものとなっている。
星景写真家・武井伸吾
「星と人とのつながり」をテーマに、星景写真(星空のある風景写真)を撮影。著書に写真集『星空を見上げて』(ピエ・ブックス)など。http://takeishingo.com/
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