突然ですが、高さを表す言葉に標高、海抜、高度などがありますがどのような違いがあるか知っていますか?
「山頂には標高◯◯◯メートルと書いてある」
「海の近くの街では海抜◯メートルと書かれた標識を見かけた」
「GPSウオッチでは高度◯◯メートルと表示されていた」
など、どれも高さを表しているけど違いは?と改めて聞かれると、答えに困ると感じる人は少なくないはず。
標高ってなに?
日本国内での「標高」とは、東京湾の平均海面を基準(標高0m)として測られた高さをそう呼んでいます。山の高さは東京湾の平均海面からの値ということになります。
基準となる東京湾の海面は重力や波などの影響を受けるので常に一定ではありません。ではどうしているのかというと、その答えを知ることができる場所が東京都千代田区永田町の国会議事堂の向かい側にあります。そこには石造りの建物があり、「日本水準原点」と呼ばれる測量で使われる高さの基準になるものが納められています。
ここは明治24年(1891年)に日本の土地の高さ、つまり標高0mの基準点を地上に固定するために設置されました。 構造は長さ10mの基礎が打ち込まれ、花崗岩製の台石に水晶板が固定されているそうです。
歴史を遡れば、明治6年から12年までの東京湾の潮位観測により平均海面を測定。そこから水準原点の高さは24.5mに定められました。その後、1923年の関東大震災の地殻変動で24.414mに改正されましたが、2011年の東北地方太平洋沖地震でも地殻変動があり24mmも沈下したことで、現在の水準原点は24.39mに改正されています。
この建物の中に納められた日本水準原点は、毎年6月3日の「測量の日」に一般公開されることがありますので機会があったら見てみたいものです。※水準点と山の上で良く見かける三角点は異なるものです。
海抜ってなに?
一方の海抜とは、その地点の近隣の海面からの高さを表します。実際には近隣の海面の高さを測量するわけではなく、海抜と標高は同じ基準で示されることが殆どですので、値としてはイコールだと思って差し支えないでしょう。ではどんな使い分けがあるのかというと、その多くは津波や水没などによる水害が想定される土地で警告用の看板として設置される場合に海抜が使われています。これらを管轄する国土交通省や自治体が設置していることに関係し、防災上の警告として人々に危機感を感じてもらうのには海抜表記の方がイメージしやすいからだそうです。つまり国土地理院の測量に関する表記は「標高」、防災上の表記では「海抜」と使い分けられているのです。
高度って何?
最後にGPS機器などで良く見かける「高度」とは何でしょう。
「高度」は空中にある測定点の高さを意味しています。例えば飛行機などでは、その地点の海面からの高さを表しています。
登山者がよく活用しているGPSウォッチ。これで測定される高度(以下、GPS高度)は標高とは異なるのです。
標高は海面からの高さのことでしたが、GPS(米国のGlobal Positioning System)、みちびき(日本の準天頂衛星システム)などの人工衛星で測定された高さは、地球をおおまかな楕円体としたモデルの表面からの高さを表したものです。実は国内のGPS高度は標高に対して+30m~40mの誤差があります。
GPSウォッチの中には、この高さデータに独自の補正や高度気圧計を併用することで、より標高に近い数値として画面に表示するものもあります。デフォルトでこの補正がオフになっている場合がありますので誤差が大きいと感じたら設定を一度確認してみてください。スマホアプリの場合はAndroidやiOSの違いによってもアプリ側が使用する補正データは異なり、表示される高さには違いが表れることがありますので注意が必要です。
近年、電子測量の世界では、さまざまな取り組みでその補正に使われるジオイド高と呼ばれるデータのアップデートをおこない、より高精度なジオイドモデルを作ろうとする動きもありますから、将来はより標高に近い高度データを取得することができるようになるかもしれません。
まとめ
標高とは、国土地理院の定めで東京湾の平均海面からの高さ。測量や山の高さなどの表記に用いられる。
海抜とは、その地点の近隣海面からの高さのことで、主に防災上の表記に用いられる。
高度とは、通常はその地点からの上側の高さを表示する。人工衛星から得られるGPS高度では標高に対して+30m~40mの誤差があるが補正することで、より標高に近い高さを表示している。