意外に悩む入浴場所
宿泊施設を利用しない長旅スタイル、たとえばテントを背負って出かける日本一周や車中泊旅で、意外に頭を悩ませるのが入浴場所。
短期の旅行であれば土地の名湯もよいですが、毎日のこととなると出費もかさみ、気候によっては湯冷めの心配もあります。キャンピングカーも例外ではありません。
ひとり旅、グループ旅、長旅、週末旅などシーンによってバスタイムに求める要素はさまざま。全国に存在する多様な入浴スポットについて、私の考えるメリットとデメリットをご紹介します。
銭湯(一般公衆浴場)
かつては家庭のお風呂の代わりとして、日本の地域社会の中心にあった公衆浴場。地元の暮らしに溶けこめるような素朴な風情や、料金の安さも魅力です。たとえば2022年現在の東京都の入浴料金は大人480円。
多くの場合、タオルやシャンプーは持参する必要がありますが、車中泊旅なら問題なし。一方で露天風呂やサウナのような豪華な設備はなく、老朽化が感じられる施設も多いため、人を選ぶかもしれません。転廃業が進み、年々見つけにくくなっているという事情もあります。
銭湯とよく似ていますが、地元の方が管理する「共同浴場」では住民以外の利用を制限している場合もあるため事前の確認が必要です。
歴史の古い街では到着までに狭い街路があったり、駐車場がなかったりすることも。大型のキャンピングカーの場合は少々ハードルが高い側面もあります。
メリット
- 安価な料金
- 昔懐かしい素朴な風情
- 地域の暮らしを体験できる
デメリット
- 駐車場がない、または狭い場合がある
- アメニティや設備は必要最小限
- 「共同浴場」では外来客は使えないことがある
日帰り入浴施設(スーパー銭湯・健康ランドなど)
昔ながらの公衆浴場に代わって存在感を増している、いわゆるスーパー銭湯や健康ランド。だれにでも門戸が開かれているぶん商業施設の色合いが強く、物価統制令の影響も受けないため料金はさまざまです。
おそらく、車中泊の旅ではもっともお世話になる施設でしょう。広い駐車場を有することが多く、大型のキャンピングカーでも駐車に困りません。休憩室やレストランなどを備え、一日過ごせる大規模施設もありますね。
利用料は700円くらいから、テーマパークに近いような数千円の施設まで。平日には安くなったり、逆に深夜料金が加算されたりもします。
ただ、一日700円とはいっても毎日利用したら一か月で2万円以上。家族みんなで、となると数倍にもなり、なかなかの出費です。
また、地域のレジャー施設として夜間や休日には大混雑のこともあります。騒然としていてゆっくりできなかったり、ときに清掃が追いついていない施設も目にします。
個人的な感想ですが、「満足する」「がっかりする」の落差がもっとも激しい施設でもあると思います。
メリット
- レストランや理容店など充実した付帯施設
- 広い駐車場を有することが多く駐車しやすい
- 深夜まで、あるいは24時間営業していることがある
デメリット
- 夜間や休日には混雑する
- 日数や人数によっては結構な出費となる
温泉旅館の日帰り利用
通常、温泉旅館の大浴場は宿泊客のための施設です。しかし、宿泊客のチェックアウトから次の宿泊客のチェックインまでの「すきま時間」に、日帰り入浴が可能なところが意外にもたくさんあります。
あまり宣伝せず、ホームページにも小さな文字でひっそりと載せているだけというケースも多く、まさに知る人ぞ知る利用法。電話で尋ねてみると「実は可」ということも多いので、気になる施設があったら問い合わせてみることをお勧めします。
料金は1000円から2000円程度のところが多いでしょうか。日帰り入浴の最高峰といえますが、価格に見合ったメリットもたくさんあります。
毎日利用するには気が引ける料金設定であることや、平日の日中などアイドルタイムであること、そもそもあまり知られていないことから、貸し切り状態になることも珍しくありません。
大規模旅館ではずらりと並んだカランや、泳げるほどに大きな浴槽……それらすべてを独り占めできる贅沢。ハイクラスの宿ではアメニティも上質です。一度利用したら、やみつきになってしまう魅力があります。
私もさすがに毎回とはいきませんが、家族と一緒のときなど一点豪華主義で利用しています。
注意点としては、施設の都合で急きょ利用不可となる日があったり、利用できる時間が限られること。清掃終了後から宿泊客のピークタイムまで、ほんの数時間の開放であることも多いです。
メリット
- 温泉旅館ならではの豪華で上質な設備
- 広い駐車場を有することが多く駐車しやすい
- 貸し切りのように空いていることも
デメリット
- 料金が高め
- 情報を見つけにくい
- 利用可能時間が日中の短時間に限られる
コインシャワー
温泉旅館が最高の贅沢とするならば、今度は「どこまで節約できるか」を見てみましょう。
高速道路のSA・PAや道の駅、キャンプ場、RVパークなどに設置されているコインシャワー。お湯を出す時間に応じてコインを投入する仕組みで、早風呂に自信があれば節約効果は大。使い方によっては、おそらくもっとも安価な入浴手段になるでしょう。
ただし人によっては、なかなか心理的にハードルが高いかもしれません。時間に追われる感覚になるうえ、扉のすぐ向こうには他人がいるという環境。電話ボックスほどの小さな空間なので、衛生面が気になることもあるかもしれません。
男女別になっていないケースもあり、あくまでも簡易的な入浴施設、という位置づけでしょう。
私も過去に利用したのは「いますぐ汗を流したい!」という緊急時だけ。すぐ外は遊歩道で、なかなかにスリリングな体験でしたが、たった200円でシャワーを済ませられました。
メリット
- 安価な料金
- 手早く簡単に利用できる
デメリット
- 設置場所が限られる
- 時間制のため急いで利用する必要がある
- プライバシーや衛生面で人を選ぶ
インターネットカフェ
日本一周など節約しながら長旅をしている人にひそかに人気の入浴方法、インターネットカフェのシャワーサービス。なかでも全国に展開している「快活CLUB」(無料シャワーサービスは一部店舗)は有名です。
無料シャワーでも入館料は必要ですが、たとえば東京都内のある店舗では入会金が税込370円に、ブース30分の利用料金が税込290円から。平日デイタイムや○時間パックなど、お得な料金を狙うことが節約のポイントです。
私はシャワー利用の経験はありませんが、長旅のあいだ数日に一度利用して、高速インターネット回線の利用、ガジェットの充電、コインランドリーの利用など一度にたくさんの用事を済ませていました。
冷暖房完備の店内でドリンクバーを楽しみ、高速インターネットで仕事を片づけて心機一転。たまった写真のバックアップなどを済ませれば、気分もすっきりです。
メリット
- 安価な料金
- 店舗によっては無料タオルサービスも
- インターネット利用など複数の目的を同時に達成できる
デメリット
- プライバシーや衛生面で人を選ぶ
他にもいろいろ節約術
過去記事でもご紹介した湯YOUパークやRVパークでは、入浴料が最初から「込み」になっていたり、割引してくれるケースがあります。
また、温泉パスポート雑誌を購入する旅人も多いですね。雑誌や手形を購入すると、特定の施設の入浴料が無料になったり割引になったりするものです。
北海道の情報誌『HO』のように、各地に類似の地域版があったりもします。同じ施設では何度も使えない設定が多いため、あくまで「移動を繰り返す旅」の場合に限られますが、節約になるでしょう。
変わり種としては、最近流行のサウナ施設を利用したり、「お風呂のみ利用OK」のスポーツクラブの会員になるという方法も。私もいつも「もっとよい手がないか」と模索中です。
キャンピングカーを置いてバスで銭湯に行くルートを見つけたときなどは、我ながら妙案を思いついたとニヤリ。街中いたるところに温浴施設がある日本ならではの楽しみ方かもしれません。