世界一高い山に登る、世界を一周する、極点に立つなどは一般人にも分かりやすい冒険の姿です。でも2018年の現在、人跡未踏の地なんてほとんどなくって、この本を読んでいまや冒険はシステムの外側に出ることなのかぁ〜と、自分にとっては新たな視点でした。
そういう意味では、闇の氷河で4ヶ月過ごしその果てに昇る太陽はどう見えるのか? は、思ってもみなかった発想の冒険で、ひじょ〜に興味が湧きました。じつに内面的な探求でもあります。
タイトルどおり、太陽の昇らない真っ暗な中を愛犬・ウヤミリックとともに装備を曳いて冒険する話しですが、なにも見えないだけに回想と想像と妄想がいつもより膨らむのか、話しはいろいろな方向へ飛んでいきます。
同じ地グリーンランドを探検した先人たちに思いを馳せたり、星を見れば女優や政治家に見立てたり、かつて入れ込んだキャバ嬢を思い出したり。出てくる話題の振り幅が大きすぎて、俗っぽくて細かすぎて、飽きません(笑)。エンタメ満載。そんな話しが随所に入ってきます。
そんなアホっぽい(失敬!)話しがあったかと思えば、命がけでデポしておいた食糧を白クマに食い荒らされて絶望的な状況に陥ったりもします。犬もやせ細っちゃって…。ああ、これは死んでもおかしくない冒険なんだと、読んでるこちらもハッとしたりして。山場的場面はいくつかあって、ええ〜どうなるの、どうなるの〜と、まんまと本に引き込まれます。
読んでいると色んなシーンを頭に思い描いてしまうんですが、その度に、これは真っ暗な極夜だからそんな画は実際には見えないんだよなと、なんども思いました。
太陽がない日なんて経験したことないけれど、シオラパルク(角幡さんが旅の起点にした人が住んでいる最北の町)はどんなところだろうか。一度行ってみたい!とも思いました。
いつもザックに入れてちょっとずつ読んでいたので、本がボロボロです。
この『極夜行』、福音館書店から絵本になって出るらしいです。それもまた興味深い〜。
※こちらの記事は過去の読者投稿によるものです。
百之助さん
自然や旅が好きです。