うちの庭の真上、しかも真ん中あたりを電線が横切っている。
家を建てているときは、当然、裏の道から電気がやってくるものだと思って、野外の配線もそのように準備されていた。
が、いざ配電工事をしようとしたら、公道だと思っていた家の真裏は人の土地で電柱を立てることができないという。
結果、表の公道側から通すしかなく、庭の上空を電気や通信の電線が横切ることになったのである。
かくして、電線の下に生えてきた木は定期的に伐ってやらなくてはいけない。そうしないと電力会社の人が「伐りましょうかーーー」と度々訪ねてくることになる。まかせてもいいのだけれど、彼らは数年先まで読んで、かなりバッサリと伐ってしまい、目かくしや日よけの要を成さなくなる可能性があるため、やはり自分でやるのが一番なのだ。
奥多摩の農産物直売所で数百円で買った親指ぐらいの太さのイロハモミジも十数年の時を経て、電線を囲い込むようになった。紅葉狩りには絶好の枝振りの枝が、風が吹く度、電線に秋波を送っている。スリスリのしすぎは摩擦を呼び危険だ。悲しいが伐り落とさなければならない。
切り取った枝でカトラリーをつくる。
先日は柿の木を使って中華の「散蓮華」をつくり、機能面で失敗している。ここはリベンジするしかあるまい。
まずはノコギリと山刀や鉈でざっくりとかたどる。仕上りのフォルムはここで決まる。枝のどの部分を使うのかが肝心なのです。
今回は水につけながら作業したので、形づくりに数日かけている。横にあるのは一緒に伐った月桂樹……これは次回活用する。
くぼみの部分はフックナイフと彫刻刀・丸刀をつかって抉っていく。フックナイフでルンルン削っていると、生木の場合、かなりの早さで薄くなる。調子にのると貫通するから要注意。
ヤスることも考え、適度なところで削りは止めて、あとはひたすら紙ヤスリで研ぎ上げる
取っ手裏にもくぼみをつけ散り蓮華らしさを強調。匙の部分はアヒルのくちばしのような仕上りになった。
銘「鴨嘴」。
※ラーメンは、西山製麺(株)『特一竜なつかし正油』 懐かしさを気取ってハムでいってみたがやっぱりチャーシューの方がいい。
イロハモミジを削っていると、なんとも甘い香りがする。できあがった散蓮華からも菓子パンのような香りが漂ってくる。
考えてみれば、イロハモミジはカエデつまりメープルである。これはメープルシロップの香りなんだ。
うーん、だったらホットケーキやスイーツに使うカトラリーにすればよかった。
それぞれの木が持っている特有の香りも、なにを作るかのヒントになるのですね。
追記:イロハモミジには花がいっぱいついていた。しばらくするとプロペラ型の実がいっぱいなって、あちらこちらにとんでいく。
放置された植木鉢から実生の芽が萌えている。
花がつく前に伐ればよかったなあ……
※こちらの記事は過去の読者投稿によるものです。
yuzuさん
野外活動好きのイラストレーターです