マントルピース。欧米の住宅のリビングにみられる、暖炉を囲む室内側の装飾である。昨今は単なる飾りの場合もあり、こと暖炉が一般的ではない日本においては装飾としての導入がほとんどであろう。
私がマントルピースを初めて意識したのは、物心ついた時分から愛読していたコナン・ドイルの推理小説だった。名探偵シャーロック・ホームズが大事な手紙を無造作にナイフでぐさっと留めていたそれが、マントルピースだったのである。
時は流れ、縁があって出会った妻もやはりちょっとのシャーロキアンで、新婚旅行にて見事、ロンドンはホームズ博物館で再現された実物?を前に記念撮影をしたのだった(補足写真あり)。
私たちは子どもを授かり、ごく普通の中古の戸建てを35年ローンで購入し慎ましやかに暮らしていたのだが、次第に我慢がならなくなってきた。築10年の我が家に日本家屋の伝統は皆無。そうかといって欧米風にもなり切れず中途半端でどことなく、なにせ本気が感じられない。確かにこれが世間の並みではあるのだが。
とにかく私はふいにハンマーで自宅の内壁を壊しだし、むしろこちらが心配になるほど寛容な妻と娘の理解を得て?住みながら自宅のDIYリノベーションを始めたのである。
それから2年。ようやくリビングが完成し、ソファを置いた上座の壁面に据えたのが、当然自作のマントルピース。一見では気づかぬよう丁番で扉に仕立て、収納棚を兼ねるという実に日本らしい工夫を盛り込んだ。
ちなみにマントルピース後ろの杉板の壁も、柱から自分で新たに建てたものだ。
こうしたDIYの気概や手先は必ずやアウトドアに生きるに違いない。
キャンプ場で周囲のサイトを見渡せばその工夫に唸らされること限りなく、感嘆するアイデアは枚挙にいとまがないではないか。
特に炊事場との往復で生まれるそれらは(良くも悪くも)たいがい女性陣から生まれるのであり、私はいつも妻と娘に頭が上がらない。
DIYリノベーションで自宅を素敵に仕上げることは、したがって私なりの恩返しなのである。
※こちらの記事は過去の読者投稿によるものです。
浪マ楽団長さん
幼少期は父に連れられ、物心ついてからはモーターサイクルでソロ、結婚し子どもを授かってからはファミリーで。キャンプとは縁の切れない人生、悪くありませんよね。