子ども達に焚き火を教える講師をしたことがある。子ども達を集めて、まず質問する。「マッチを使ったことがある人?」すると、使ったことがない子どもが多いことに驚く。確かに日常生活でマッチを使う機会は、ほとんどない。「マッチを使える」というのは小さなことのように思う。一方で私は、ここに小さくない問題を感じる。
人間と他の動物の違いは、「火を使えるかどうか」である。焚き火を見て癒やされるのは、人間のDNAにすり込まれているからだと思う。その火が使えないのは人間としての根本が欠けているように思うのだ。子どもに火を使わせるいわば「焚き火教育」は必要である。子どもが自分で火を作れる小さな一歩がマッチである。
しかし、人間も動物であるので本能的に火がこわい。子どもならなおさらである。火が着いた瞬間にマッチを投げ捨てる光景はよく目にする。そこで、「マッチは熱くないこと」を子どもの前で見せてあげる。熱くないのは「炎の横」だ。これが極意になる。
では、子どもができるようになるマッチの教え方のノウハウを紹介する。
【ノウハウ-理論編-】
1マッチ棒は立てて使うと折れない。寝かして使うから折れるのだ。
2マッチの炎の横は熱くない。手を近づけ熱くないことを見せる。(写真C)子どもにも手を近づけさせて確認させる。逆に炎の上の方は熱いことも確認させる。
【ノウハウ-実技編-】
1鉛筆を持つようにマッチ棒の端の方を持つ。
2マッチ棒を立ててコンコンと音がするまで机を強くたたく練習をさせる。この強さでマッチを擦ることを教える。マッチ棒は立てると折れないが、横にすると折れやすいことを見せる。
3側薬(箱の茶色の部分)を斜めになるように持ち、マッチ棒を立ててぶつける。(写真D)
4火がついたらマッチ棒を素早く横にする。(写真B)立てたままだと炎の上に指が来るので熱いのだ。
5火が近づいてきても火の横は熱くないので、10秒は余裕で持つことができる。(写真A)子どもには、「ゆっくり10数えられたら合格!」と教える。
6応用編としてマッチ棒の角度を変えて燃え方を調整することも教える。
マッチを教えるとき忘れてはいけないことがある。「火遊び」は絶対にいけないことを必ず教えることだ。マッチの使い方を知った子どもは試してみたくなる。それが子どもである。泥棒は全部盗むことはないが、火事は家族の命、近所に住んでいる人の財産、命まで奪ってしまう。火事を出した人はどうなるかも語ってあげると良い。おそらく、今住んでいる場所から引っ越さなければならないこと、仲のいい友達とも離れ離れになること、家族が仕事をやめなければならなくなることなどである。
マッチは小さな一本だが、子どもにとっては偉大な飛躍である。マッチは、「焚き火教育」の第一歩だ。
※こちらの記事は過去の読者投稿によるものです。
一弛庵さん