ユーコン・アイスウォーター・スイマーズ
僕の住むカナダ、ユーコン準州ホワイトホースの中心地から車で15分走ると、凍った湖チャドバンレイクに出る。ここは街からのアクセスも良く、夏はカヌーや湖水浴や釣りで、冬はクロスカントリースキーや犬の散歩などで、地元の人の憩いの場として親しまれている。
ここ近年、この湖で寒中水泳を楽しむグループ「Yukon Ice Water Swimmers」が現れた。
1年で登録者数700人越え!
もともと4〜5人の地元の人たちが寒中水泳を楽しんで、個人的にSNSに活動をアップしていた。そのうちに自然とグループが出来上がって、グループとしての寒中水泳イベントが始まったのが、2021年の元旦。その後、コロナ禍が始まって、寒中水泳のイベントが盛り上がってきた。長く寒く暗い冬に遠出できなくなってしまった極北に住む人たちにとって、一風変わった新しいアクティビティとして受け入れられたようだ。
SNS上のグループ登録者数は地元の人たちを中心に、今では800人近い!
魅力はなんだろう?
このグループの発起人の一人でもあるエキスパート、スコットさんに話を訊いてみた。
寒中水泳には、血中エンドルフィンの飽和状態が起こることで得られる鎮痛作用、脂肪の燃焼を高める効果、免疫力を高める効果、メンタル強化、心の健康を助ける効果、リフレッシュ効果などが寒中水泳にはあるようだ。
スコットさんもかつて膝が痛くて、曲げるのも大変だったことがあった。寒中水泳を始めてから痛みがなくなって、普通に生活を送れるようになったとのこと。今ではかなりのエキスパートで、寒中水泳ならぬ「寒中ダイビング」で自分の可能性を広げられることや、ビギナーの挑戦に協力することに楽しみを感じていると話してくれた。
体験してみないと何もわからないだろうと、僕も人生初の寒中水泳に挑戦することにした!
その前に注意点
水温は気温よりも暖かいとはいえ、冷たい水に入るからには色々と注意が必要。今回指導をしてくれるスコットさんから言われた注意点は
- 絶対に無理をしない。
- 水に入ってすぐは、体も心も驚いて呼吸が浅く速くなるから、特に体が水温に慣れるまで、はじめの30秒は意識して深くゆっくり呼吸を続けること。
- 無理だと思ったらすぐに水から上がる。他人や過去の自分の記録と絶対に比べたりしない。
というもの。
これら以外にも、よく準備体操をしたり、水から上がったら暖かい飲み物を飲むことや、氷で手や足を切らないようにネオプレーンのグローブやソックスをつけてプールサイドにはマットを敷いておくことも、より安全に寒中水泳を楽しむために必要な注意点だ。
さっそく水に入ってみよう!
恐る恐る後ろ向きに足から水に入って、腰まで浸かってみた。だんだんと冷たさが身体中に伝わってくる。冷たさに耐えながら言われたと通りにゆっくりと深い呼吸を繰り返していると、「肩まで浸かれるか?」と声がかけられた。この日の気温はマイナス3度C。ユーコンの冬としては暖かすぎる。体が外気に触れていると、余計に水の寒さを感じやすいということらしい。
夏でも体が水に浸かるとジンジンと痛いんだよなぁと、以前カヤックで沈した時のことを思い出していたら気がついたことがある。
寒中水泳は気温がより寒い時の方が、水温をより暖かく感じて水の中にいやすくなるのでは無いだろうか? もっと寒い日に試したほうがよかったのかな?と考えつつ、ひたすら冷たさに耐える。
「無理はするな」という言葉に従って、おそらく1分くらいは浸かっていられたと思うけど、水から上がることにした。時間を測る余裕すら僕にはなかったなと、後になって苦笑いだ。
痛かった後の効果は?
水から上がって服を着ると、水に浸かっていた部分がポカポカと火照ってきたのがすぐに分かった。暖房をつけた車に戻ると、すぐにお腹が減ってきた。気分もかなりリフレッシュできている。どうやらさっそくに寒中水泳効果が現れているみたいだ。
今回は人生初挑戦だったし、気温もかなり緩かったこともあって、まだまだ寒中水泳を堪能したとは言えるレベルには程遠い。それでもハマる人の気持ちの入口が垣間見れた気がした。
もしかしたらこれから何度か経験した後には、寒中水泳の深い魅力をレポートできる日がいつかやってくるかもしれない…かな?
ぜひ興味のある方はこちらをどうぞ!
https://www.facebook.com/groups/397393904712969?locale=ja_JP
2008年にユーコン川下りで訪れて以来、ユーコン準州に通い始める。2011年に移住後もユーコンに生きる野生動物、風景、自然と共に生きる人々を引き続き撮影中。2019年、First Light Image Festivalにて最優秀賞受賞。ユーコンから色々なトピックをお届けします!