剣鉈とは先端が刀のように尖った鉈のこと。しかし、遠藤さんの剣鉈は切っ先以外にも日本刀との共通点がある。
「刃が日本刀と同じ“蛤刃(はまぐりば)”なんだ。刃の断面がハマグリのような形だと、刃こぼれしづらく、切ったものを左右に割り開ける。直径10㎝程度の青竹なら一刀両断だよ」
遠藤さんは山に入ると、鉈一本で仕事のすべてをこなす。
「鉈は柄に対して刃が浅く角度がつけてあることが肝心。この角度があると軽く振り下ろしただけでも刃が木に食い込んでいくんだ。そして、長い刃にも役割がある。切っ先で穴を穿ち、刃のカーブでは刃を滑らせて魚の腹などを開く。刃の上部で枝を払い、刃の元では細かい細工をする。剣鉈は、山での万能の刃物なんだ」
◎構成/藤原祥弘 撮影/木村文吾