キャンピングカーの魅力
旅好きならきっと、バックパックひとつで出かける日本一周や鉄道パスの旅、カヤックでくだる大陸横断など、自由な冒険旅行を夢みたことがあるでしょう。キャンピングカーもそのひとつではないでしょうか。
私がキャンピングカーを購入したのは、新型コロナウィルスなど気配すらない数年前。仕事に忙殺される現役世代で、かつ女性オーナーということで当時は少数派だったかもしれませんが、後悔したことは一度もありません。
もちろんキャンピングカーは万能の乗り物ではありません。実際はどこに泊まるのにもお金がかかったり、思わぬ部分が故障したり、狭い車内で青あざを作ったりと困難もたくさん。
それでも、キャンピングカーは素晴らしい乗り物です。その理由を7つご紹介します。
1. 宿泊場所にとらわれない自由な旅
キャンピングカーの最大の魅力は、いうまでもなく宿泊場所にとらわれない自由な旅ができることです。
大型連休のような繁忙期でも予約争奪戦に勝ち抜く必要がなく、高いピーク料金を支払うこともありません。思い立ったら早朝でも深夜でも出発でき、逆に状況次第で「やっぱりやめよう」とキャンセルも簡単です。
RVパークには当日予約OKの施設や、無人チェックインが可能な「RVパークsmart」という施設もあります。
予約やチェックイン時間に縛られないので、直前になって行き先を変えることも容易です。風の吹くまま、そのときの気分で右に曲がるか左に曲がるかを決める……旅の究極形といえるかもしれません。
直前まで休みが決まらないビジネスパーソンや、体調の変わりやすい小さな子どもがいる家庭など、忙しい現役世代にもおすすめです。
初めて運転免許と自家用車を取得した10代の終わり、どこにでも行ける自由を手にした気がしました。ハンドルを握ってアクセルさえ踏めば、簡単に未知の土地に到達できる。
徒歩や自転車でその解放感を味わう人もいると思いますが、運動が苦手で体力に自信のない私にとっては自分の身体よりも信頼できる道具だったわけです。
キャンピングカーを所有したとき、同じ気持ちを味わいました。
ひとり旅だと、なおさら日程も目的地も自分次第です。すべてが自分の決定にかかっている代わりに、何が起きても自己責任。その自由と不安と解放感は何物にも代えがたいものがあります。
ただしキャンピングカーは「どこでも好きなところに滞在できる」わけではありません。一見すると手頃な空き地に思える場所でも、必ず所有者や管理者が存在します。ルールを守り、許可された場所で車中泊をするのが基本です。
2. ひとり旅でも安全
日本は治安のいい国です。けれど、見ず知らずの相手からの突発的な犯罪被害はゼロではありません。
防犯という観点からは「女性である」「ひとりでいる」「地理に詳しくなさそうな旅人である」などの要素はマイナスポイントになるでしょう。
同じ理由から、ひとり旅やソロキャンプに抵抗のある人もいるのではないでしょうか。価格重視のホテルの雰囲気の悪さに気分が落ち込んだり、近年人気の民泊でも盗撮などの心配は絶えません。
キャンピングカーは施錠さえすれば、かなり強固なシェルターでもあります。どんな旅先でも、慣れ親しんだ自分の車に帰って来るというのは安心感があります。いざというときにはその場から逃げる手段としても優秀です。
車に乗り込む前に周囲を見渡す、全ドアの施錠をするなど最低限の安全確認はしますが、これまで私は危険な目に遭ったことはありません。
3. キャンプではない旅にも大活躍
「キャンピングカー」という名称からアウトドアレジャーに分類されがちですが、キャンプにしか用途がないわけではありません。
現に私はキャンプに使うのは年に数回で、市街地のRVパークに滞在することがほとんどです。安心できる場所に車を停めたら、バスや自転車や市電を駆使してお出かけ。夜は住民気分で近隣の飲食店を開拓したり、Uber Eatsを頼んだりと、都市型の滞在をしています。
そもそも私は太陽も昆虫も苦手なインドア派なので、「キャンピングカー所有=キャンプ好き」というイメージに逆に驚いてしまうこともあります。
「うちはキャンプはしないから……」と敬遠している人にこそ、キャンピングカーをおすすめしたいです。車ですから公共交通機関の代わりになることはもちろん、ビジネスホテルのように使うことも十分にできるのです。
人気のテーマパークでは開園前から駐車場に入れる場所もありますが、仮眠や待機、途中で車に戻っての昼寝もできますよ。
4. もちろんキャンプにも便利
もちろんキャンプにも便利に使えます。サイドオーニングを搭載していれば、一瞬で設営完了。
「不便や不自由こそキャンプの醍醐味」という方には叱られてしまうかもしれませんが、明るいLED照明、ガスコンロや電子レンジや水道設備、立地によってはテレビまで点くので、自宅と変わらない過ごし方ができます。
それでいて一歩車外に出れば、海や山や川の自然を堪能できるのですから「いいとこどり」です。
寝るときは車内のベッドを使えるので、暑さ、寒さ、野生動物、浸水、強風といったアクシデントとも無縁。翌朝も泥のついたテントの撤収など手間のかかる作業をすべてスキップできます。
唯一の難点は、明るい室内照明にひかれて大量の羽虫が車内に入ってしまうことでしょうか。
車は開口部が大きいので、どんなに気をつけていても乗降の一瞬のすきで虫が入ります。キャンプを頻繁にする人なら、ドア全体にバグネットをつけるという方法もあります。
5. ペットと一緒に旅ができる
旅先で出会うキャンピングカー、とりわけ「キャブコン」と呼ばれる大型のキャンピングカーには、かなりの高確率で喜びいっぱいの犬が同乗しています。むしろ犬連れでない車の方が少ないくらいです。犬に比べるとかなり珍しいですが、猫連れの車も見かけたことがあります。
キャンピングカーの魅力のひとつに「ペットを同伴できる」ことを挙げる人は多いでしょう。
一般的な宿泊施設では、ペット同伴可でも室内での禁止事項など細々したルールがあったり、ほかのペットが過ごした痕跡が気になるなどの事情があると聞きます。
ペットの性格にもよるかと思いますが、冒険好きでどこでもリラックスできるタイプならキャンピングカー旅は最高の思い出になるはず。意気揚々と車から飛び出してくる犬の表情に、通りすがりの私まで笑顔になります。
キャンピングカー業界ではペット同乗を前提としたモデルや、その家庭のニーズに合わせてカスタマイズしてくれるビルダーもたくさんあります。
6. 災害時の備えとして
東日本大震災の直後。当時住んでいたところでは家屋や人身に直接の被害はありませんでしたが、停電とガソリン不足にはしばらく悩ませられました。
停電で困ったのが、とにかく寒さ。エアコンはもちろん、ガスや灯油が燃料でも着火時に電気を使う暖房機具が多く存在します。
暗闇の中、ダウンジャケットを着て布団にもぐりこむことしかできず、携帯電話で情報収集をしたくとも充電切れが心配で仕方ありません。
当時はキャンピングカーを所持していませんでした。けれどいまなら、わずかな燃料でFFヒーターが使えますし、電子機器の充電くらいならソーラー発電でまかなえます。テレビでニュースを見ることもできるでしょう。
あの頃キャンピングカーがあったら、どれだけ心強かっただろうかと思います。最近では災害時の備えを意識して、給電機能を強化したモデルも多く見かけます。
7. ウィズコロナ時代のレジャー
これは新たな価値といっていいと思いますが、三密を避けられるレジャーとしてアウトドアブームが到来しています。
まさにキャンピングカーは、公共交通機関や宿泊施設を利用せず、見知った人とだけ交流できる安全な空間。
自宅から食材を持ち込んで自炊をすれば、買い物や外食をする必要もありません。私のキャンピングカーはトイレを搭載しているので、その気になれば他人とまったく接触せずに過ごすことが可能です(入浴だけはどこか公共の施設を利用しなければなりませんが)。
県外ナンバーが敬遠されたり、「こんな時期にレジャー?」という心情的な問題はありますが、理論上はとても安全な乗り物です。これからはキャンピングカー旅が新たなスタンダードになるかもしれません。
人生が変わった
いかがでしょうか。ほかにも「テレワークの場所として使える」「車に泊まるという行為だけで楽しい」「手に入れた食材をすぐに調理できる」「キャンピングカーを拠点に海や山で遊べる」「こまめに休みながら行動できる」など、書ききれないほどの魅力があります。
決して安い買い物ではありませんでしたが、キャンピングカーを手に入れて私は人生が変わりました。「いつかは」「リタイアしたら」ではなく、いま所有してよかったと心から思っています。