甲府のクラフトビール、アウトサイダーブルーイングで3月25日から日本では珍しいクラフトビールのバーチカル(垂直)テイスティングイベントが開かれる。近隣のセレクトショップSyrup(シロップ)とともに紹介しよう。
日本では珍しい同銘ビールの6年分のテイスティング
ヴィンテージ違いの同銘柄をテイスティングすることをバーチカル(垂直)テイスティングという。ワイン業界では当たり前に行われるが、1年以上も熟成させることが少ないビールの世界では年を越してのテイスティングはむずかしい。手間もかかるし、技術も要する。しかし近年、長期間熟成させるクラフトビールにトライするブルワリーが増え、バーチカルテイステイスティングを行うブルワリーも現れている。
山梨県甲府の商店街に2012年にオープンしたアウトサイダーブルーイング。BE-PAL.NETでも2021年11月に紹介しているが、クラフトビールファンにはつとに知られたブルワリーだ。そのオープン10周年を記念し、直営のバーHops & Herbsで2022年3月25日(金)〜4月3日(日)まで、バーレイワインスタイルの「Pit Bull」のバーチカルテイスティングが開かれる(29日(火曜日)は定休日)。2017年から今年元旦に開栓された分まで、6年分の「Pit Bull」」がテイスティングできる。
バーレイワインとは「麦のワイン」という意味。ワインのように長期熟成させることからこの名がついているが、れっきとしたビール。モルトの甘さ、フルーティさが際立つ。色は深い琥珀色に、アルコール度数も高めになる。ビールの奥深さを教えてくれるスタイルだ。
当初はアウトサイダーブルーイングの本当のアニバーサリー月の2月に開催予定のイベントだったが、コロナ禍の影響で約1か月延期された。さらに熟成感が増しているかもしれない。
同じレシピでつくられた同じ銘柄でありながら、年によって微妙に異なる味わいがバーチカルテイスティングのおもしろさだ。ビールは工業製品ではない。年によって、熟成させた年数によって変わる味わいを楽しめるのはワインやウイスキーだけではなく、ビールも同じだ。
Pit Bullとは気の荒い闘犬のことだが、アウトサイダーブルーイングのPit Bullもかなり強い。アルコール15度。熟成途中で糖を加え、ワインの酵母で二次発酵を行ない、1年間熟成させて造る。アウトサイダーブルーイングではPit Bullを毎年仕込み、毎年販売しているが、いくつかの樽はそのまま倉庫で寝せておく。10周年の今年、その6年分を一挙解放する。
こういう機会は滅多にあるものではない。クラフトビールファンはもちろん、Pit Bullと6杯勝負したい人もアウトサイダーブルーイングへいざ!
石和温泉のセレクトショップSyrupで掘り出し物を探せ
アウトサイダーブルーイングは甲府の町中にあり、近隣のクラフトファンに愛されている。その直営バーHops & Herbsで、アウトドアグッズを扱うセレクトショップSyrup(シロップ)取締役の中野玉樹さんが飲んでいたので、店舗を案内してもらった。
甲府と石和温泉は中央線で2駅。温泉地の、かつて土産屋だったという店舗を買い取り、2020年にオープンした。前職はアパレル業界という中野さん。そのネットワークを活かした品揃えはアウトドア用品だけでなく、スニーカーから軍の放出品、デッドストックなど希少なモノも並ぶ。ガチなアウトドアショップでないので、土産屋と勘違いして来店した人でも楽しめそう。
たとえば、ポーランド軍の放出品のカラフルなブランケット。カリフォルニア発の、日本でも人気に火がついたシェフパンツが豊富に並ぶ。かと思うと、かつてバドワイザーの犬として人気を博したブルテリアの置物。バットマンのフィギュア。いったい何屋さん? 意外性にあふれている。
この雑貨屋感、中野さんが10代のころ足繁く通ったという、アメリカの古着やグッズが所狭しと並んでいた雑貨店NEWYORK(山梨県内)をモチーフにしているという。
「アウトドアメーカーのモノはつくりがしっかりして、デザインもいい。普段から使いたいと思う。だから“普段使いできる”かどうかを基準にモノを選んでいます。普段から使っているものや着ているものでヒョイとキャンプに出かけられたらかっこいいじゃないですか」
中野さんはキャンプの達人でもある。コロナ禍以降、キャンプ人気が高まり、近隣のキャンプ場も来場者が急増。テントやランタン、バーナーなどのキャンプ用品は売り切れるほど売れ、商売的にはうれしいものの、本人は「あまり行けなくなった」ほど混んでいるとか。甲府近辺のおすすめのキャンプ場を教えてもらった。
「この近くには、ほったらかしキャンプ場、ふもとっぱらキャンプ場など、ゆるキャンにもソロキャンにも人気の高いキャンプ場があります。甲府市横根町のスリーストーンキャンプ場は甲府盆地が一望でき、おしゃれなバーもついて市内からのアクセスもいいですよ。少し遠いですが夏場におすすめなのが、みずがき山自然公園キャンプ場。標高1500mの高地で涼しく、夜には満天の星空が楽しめます。通り道には本谷川渓谷があり美しい渓谷が楽しめます」
キャンプ情報に詳しいSyrupの中野さん。ぜひアウトサイダーブルーイングで飲んだら、石和温泉にも寄ってほしい!