ヒメイカを知っていますか?
“イカ”と聞くとアオリイカやヤリイカなど美味しそうなイカを思い浮かべる方が多いかと思います。今回は日本の沿岸付近で見られる“世界最小のイカ”と言われる“ヒメイカ”の話です。
アマモ(緑色の海藻)の群生地を探すと、アマモに身を潜めるヒメイカを見かけます。
写真の個体はメスで体長1~2cmの可愛いイカです。胴部に吸着器があり、海藻にくっつくことができます。
今回ヒメイカの観察をしたのは鹿児島・錦江湾、桜島北部エリアの浅場です。
ヒメイカの繁殖行動
冬から春にかけて浅場で海藻の繁茂が見られる頃、ヒメイカたちの繁殖期が始まります。
寒空の下、浅場でヒメイカの観察です。
ヒメイカはオスよりメスの方が体長が少し大きいです(写真上オス、下メス)。
皆さんは、どこにヒメイカが隠れているか分かりますか?
アマモの裏に隠れていたり、体色を変えたりと隠れんぼ上手です。
観察していると、じっとしているメスにオスが近づいてきました。
そして、オスはメスの様子を伺いながら勢いよく噛み付きます。
噛み付いているように見えるこの行動は、交接なのです。
小さいイカながら驚くべき俊敏さ、力溢れる光景です(左メス、右オス)。
ヒメイカの産卵
よく見ると、メスの頭部付近に白い紐状のものが付いているのが見えます。
白い紐状のものはオスが渡した精子の入ったカプセル(精莢)です。
メスはオスから受け渡された精莢を体内に取り入れで受精させます。
観察していたメスは交接後、海底近くの海藻に身を潜めて口元を動かし始めました。
そしてアマモに一粒ずつ卵を産み付け始めます。(写真左/一粒卵を産むメス)
一粒、一粒卵を産み付ける姿、見ていると、とても愛くるしいです。
1時間ほどかけて産卵を繰り返します。
産み付けては写真のように動きが止まり、少し休憩しているような……。
次の卵を体内で生成し、産み付けるまで時間を設けているようでした。
産み付けられた卵は、透明でとっても瑞々しく艶があります。
時間が経つにつれて付着物が付き守られ、新しい命は育まれていきます。
アマモが潮流に揺られ揺籠のようです。無事に成長できますように。
今回はここまでですが、機会がありましたら小さな命の誕生を記事にできればなと思います。
今回の1枚
ヒメイカの繁殖期が盛んになる2月上旬、鹿児島本土では梅や緋寒桜の花、菜の花が見られるようになります。写真は雨上がりの朝、雫と日差しでキラキラと咲き誇る菜の花を撮影しました。
撮影協力: ダイビングショップSB