ドナウ川の”珍体験”、ならぬ”沈体験”の一部始終!こうして私は”沈”しました
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    2022.03.21

    ドナウ川の”珍体験”、ならぬ”沈体験”の一部始終!こうして私は”沈”しました

    フォールディングカヤックを背負う筆者

    フォールディングカヤックを背負って、いざドイツへ!

    出発早々のアクシデント

    こんにちは!現在、ドナウ川を源流地域のドイツから、エーゲ海沿いのトルコを目指して、カヤックの旅をしているジョアナです。約半年間の放浪を予定しています。

    フォールディングカヤックを意気揚々と背負って、ドイツ行きの便でフライトしたのが2022年1月の終わり。そして2月にドイツのウルムという町をカヤックで出発。ゴールまではまだまだ遠いのですが、そんな中で早速起こった事件が、「沈(ちん)」、つまりカヤックの沈没でした。

    ことが起こったのは、出発から4日目の朝。どうして沈に至ったのか、自分への反省と注意喚起を込めて解説します。

    カヤックは簡単には「沈」しないと思っていた

    私が初めてカヤックに出会ったのは、中学生のころ。当時入り浸っていた東京都大田区にある「ルミエール」というカメラ屋さんの店主が、フォールディングカヤックを収集していたのがきっかけでした。

    スペリオル湖でのカヤック旅の一コマ

    スペリオル湖でのカヤック旅の一コマ。

    週末になると、仲間と連れ立って三浦半島の海をツーリングしたり。そして私が成人して海外で住むようになると、世界最大の淡水湖であるスペリオル湖を一週間ほど島巡りして。

    ミシシッピ川で夕日をバックにした石油タンカー

    ミシシッピ川をカヤック旅行中に撮影した一コマ。

    アメリカのミシシッピ川を3,000km旅したときは、川を行き来する石油タンカーが生む波の中を漕いだことも。

    それでも私は一度も沈をしたことがありませんでした。

    沈をしたあと、再びカヤックに乗ることを再乗艇といいます。私ももちろん、安全のためにこの練習をしたことはあります。が、練習のためにわざとカヤックを転覆させた以外では、「あ、転覆するかも」という場面に遭遇したことがなかったのです。

    私のカヤックの遊び方は、いわゆる「ホワイトウォーター」という激流下りではありません。あくまで、穏やかなツーリングです。たまにちょっと波や風のある日を漕ぐことはあっても、嵐の中を漕いだりはしません。

    私は、「カヤックは不安定なように見えて、実はなかなか転覆しない乗り物」と、思い込んでいました。

    教訓1.カヤックは転覆する乗り物です

    穏やかな川面

    これは私が沈をした現場ではありませんが、沈をしたその日は、この写真くらい、川が穏やかな日でした

    今まで沈したことがなかったから、ついぼーっと、危機意識が飛んでいたのでしょう。私は特別大きなうねりも何もない、ただ一定に流れている比較的穏やかな川で、沈をしました。

    どういうわけだが、変な角度にパドルを入水させてしまって、川の流れにパドルが取られてカヤックの下に潜り込んでしまったのです。岸辺に町があって、その風景を見ようと、カヤックを回転させようとしたときの出来事です。あっという間にカヤックが傾いて、沈をしました。

    人生で初めての沈が、冬のドナウ川。朝になると、テント脇の2リットルのペットボトルがカチコチに凍っている寒さです。だけど、「えっ!嘘でしょ!」とびっくり仰天した脳味噌では、水の冷たさも感じませんでした。

    教訓2.カヤックのメンテナンスはしっかりと

    沈をしたあと、カヤックを掴んだままなんとか土手まで泳ぎ着いて、濡れたものを乾かす作業に入った私。そう、再乗艇できなかったのです。なぜ、できなかったか。それは、私のカヤックのメンテナンス不足が原因でした。

    フォールディングカヤックは基本的に、お尻から頭にかけて、両脇に細長い浮き袋が履いています。沈して万が一カヤックの中が水で満たされても、カヤックが浮力を保ち再乗艇できるようにするための、いわば安全装置でもあります。私が沈したとき、実はこの浮き袋のうちの片方の空気がパンクしていたのです。

    実際に転覆してみると、どういうわけだかカヤックの右側だけ水に浮かんでいて、左側は完全に沈んでいる状態。そう、左側がパンクしていたのです。これでは再乗艇できません。

    もし右側もパンクしていたら完全にカヤックが川の底に沈みかねない状況。かなり危険です。ちゃんと毎朝、出発前に空気の確認をするべきだったと大反省。

    後日浮き袋を抜いて、パンク箇所を修理。旅を再開しました。

    パンク修理をするために浮き袋を引き抜いた状態

    パンク修理のために浮き袋を一度引き抜き、修理。一晩待って、翌朝も空気が抜けていないのを確認してホッと一息

    教訓3.荷物はちゃんと積みましょう

    今回私が沈をした原因として、カヤックに積まれた荷物が不安定な状態にあったことも事実です。

    ドナウ川の上流は、多いところで5kmおきに水門がある状態。水力発電所関係の水門です。そのたびに、荷物を下ろし、土手沿いを歩いて岸を迂回します。が、オーストリア国境付近に行くまでは、ドイツのドナウ川沿いの迂回路にはボートランプもなく、急な石の階段を登って土手までカヤックを引っ張り上げなければいけない悪条件。

    何度も荷物を下ろしてまた積んで、それを繰り返しているうちに「どうせまたすぐ水門だし」と、荷物の積み方が雑になってしまいました。多少カヤックが不安定になっているのも無視して、漕いでいたのです。

    カヤックの上に適当に荷物を積んで状態

    荷物を1日に何度も積んだり下ろしたりするのが面倒くさくて、つい、こんなにたくさんカヤックの上にくくりつけてしまいました。こりゃ不安定だ!

    せめて荷物を減らして、毎回ちゃんと荷物を積めるようにと、余分な荷物は土手のベンチの下に置いていきました。登山靴やクライミングシューズなど。「どうか使ってください」と置き手紙を添えて。

    友人曰く、「ドイツ人は、道で良いものを見つけたら拾うことがよくある。この間も、とてもきれいなマダムが、バスの床に落ちていた手袋を拾ってカバンに入れていた」とのこと。私の荷物も、誰か拾って使ってくれますように。

    教訓4.防水袋は、事前に試してしっかり二重に防水するべし

    今回の沈で一番の打撃は、防水袋に入れていた電子機器が水没してしまったこと。寝袋や衣類を入れていた薄手の防水袋は少しも濡れなかったのに。電子機を入れていた厚手の防水袋が、浸水しました。

    きちんと端を3回以上折って閉じたはずが、きっと閉め方が甘かったのでしょう。中にはジップロックに入れて二重に防水していたものもありましたが、これもやはり閉め方が甘かったのか、浸水してしまったものが多数。

    幸い、記事を書くのに使っているタブレット端末や携帯電話は難を逃れたのですが、一番大事にしていたはずのカメラが、水没しました。とても悲しい。辛い、辛すぎる。

    水没したカメラとレンズ

    さようなら、相棒。実はかれこれ10年くらい、カヤックや登山などいろんなアウトドアのシーンにカメラを持参してきて、今回初めて、カメラを壊しました。よりによって一番のお気に入りのカメラが…。

    もし旅に出る前に、その頼りにしている防水袋が実際どれだけの防水性があって、どれだけの水圧に耐えられるのが、お風呂場などで実験していたら…。そして、二重の防水でジッパー付き保存袋をしっかりと閉じて、使っているうちに傷などつけていないか、確認していたら…。悔やみきれません。

    ちょっとした凡ミスが大事故につながってしまうカヤック旅行。反省のために、ここに記事を残します。あー辛い!!

    私が書きました!
    剥製師
    佐藤ジョアナ玲子
    フォールディングカヤックで世界を旅する剥製師。著書『ホームレス女子大生川を下る』(報知新聞社刊)。じつは山登りも好きで、アメリカのロッキー山脈にあるフォーティナーズ全58座(標高4,367m以上)をいつか制覇したいと思っている。

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