486段の階段を下りるか、1日数本の上越線で乗り込むか?
谷川岳の麓に近いJR上越線土合駅(群馬県利根郡みなかみ町)で2022年5月21日(土)、地下70メートルのホームで熟成されたビールが一挙開栓される「もぐらビアキャンプ」が開催される。
地下70メートルのホームで貯蔵されたビール
なぜこれほど深い場所にホームがあるのか。上越線が開通した1931年当時は、ホームは群馬県と新潟県をつなぐ清水トンネルの入り口付近にあった。それが1967年、複々線化にあたり、もう1本の線路(下り)を通すために、清水トンネルの下に新清水トンネルが掘削され、その脇に土合駅のホームができた。それが地上から486段、地下70メートルのわけである。
もともと冷涼な気候の土地である。電車や人が頻繁に行き来することもない地下70メートルのホームは、一年を通して一定の温度が保たれる。ビールの貯蔵庫としても好都合だ。
イベント会場は、土合駅前に2021年にオープンしたグランピングDOAI VILLAGEだ。
ニホンイヌワシを守れ! 売り上げの一部を森林保全活動に寄付
もぐらビアキャンプは、ビール醸造を通じて自然保護への取り組みをつづけるBrewing for Natureのメンバーの提案で実現した。
みなかみ町を囲む山々に、ニホンイヌワシの生息地がある。環境庁のデータによると、生息数は約650羽。絶滅危惧種に指定され、デッドラインとされる500羽を切るのではと危惧されている。翼を広げると2メートルにもなるニホンイヌワシには、それだけ広々とした環境が必要だが、間伐の行き届かない人工林が、その生息を脅かしている。
地元みなかみ町で2018年から営業するクラフトブルワリー「オクトワンブルーイング」の竹内康晴さんが、ニホンイヌワシ保護のアピールを込めてビアフェスを開催しようと、各地のクラフトブルワリーに呼びかけ、約10ブルワリーが賛同、参加する。
目玉は、地下70メートルのホームの一部を回収した貯蔵庫で熟成された各ブルワリーのビールである。参加ブルワリーによる250リットル以上が貯蔵されている。
2020年、参加ブルワリーのブリュワーが、みなかみ町のオクトワンブルーイングに集合した。水上駅から上越線に乗り、土合駅ホームの貯蔵庫にビール樽を搬入する予定だった。ところが当日、大雪に見舞われ、上越線が運転見合わせに。仕方なく、ビール樽を車で土合駅まで行き、ブリュワーたちが486段の階段を下りてホームまで運んだそうだ。
オクトワンブルーイングの竹内さんは、「スタウトやサワータイプのビールを熟成させています。どんな味になっているか、開けてみないとわかりません。楽しみです」と話していた。
秋田から参加する羽後麦酒の鈴木隆弘さんは、「黒いちごとIPAの2種を貯蔵しています。1年以上経っていますから、ドキドキしています」と、ブリュワー本人がワクワクしている。
同じレシピでつくられたビールでも、熟成期間が違えば味わいは変わる。1年から1年半も寝かせたビールは、土合駅でしか味わえない味になっているはず。そして、イベントの収益の一部は、地域の森林保全活動などに寄付される。
コロナ禍が長引く中、いつ開催できるかわからない状況が長く続いたビアフェス。5月21日、いよいよ日の目を見る!
【イベント概要】
開催日時:2022年5月21日(土)9:00―21:00
※商品が終わり次第終了
実施場所:上越線土合駅(群馬県利根郡みなかみ町湯檜曽)
主催:VILLAGE INC.、Brewing for Nature
https://brewingfornature.cbgeeks.com/work/mogurabeercamp2022/
<参加ブルワリー>
・オクトワンブルーイング(群馬県 みなかみ町)
・クランクビール(東京都 板橋区)
・グロウブリューハウス(埼玉県 川口市)
・十条すいけんブルワリー(東京都 北区)
・麦酒処ぬとり&ぬとりブルーイング(埼玉県 川口市)
・フジヤマハンターズビール(静岡県 富士宮市)
・レッツビアワークス(東京都 北区)
・羽後麦酒 (秋田県 羽後町)
<参加飲食店(みなかみ町)>
・育風堂精肉店・旅する台所・谷川岳の麓のおにぎりやfutamimi・The Skinny Arms・Yujuカンパニー
・たくみの里