ウィンタースポーツの楽園”ツェルマット”
スイスを代表する山といえばマッターホルン。この冬はコロナ禍の規制も緩和され、ツェルマットのスキー場では多くのスイス人をはじめ、近隣諸国やアメリカ方面からの観光客でにぎわっている。ツェルマットが位置するヴァレー州の晴天率は約300日。太陽を求めて多くの観光客が訪れる。
このスキー場の総滑走距離は驚きの約36km。スイスから国境を越えてイタリアのチェルビニアへスキーで滑走することもできる。さらに、クライン・マッターホルンにある標高3,883mの氷河エリア「マッターホルン・グレッシャー・パラダイス」では365日スキーが可能だ。
大人も子どもも楽しめる国民的スポーツ”ソリ”
スイスの代表的なウィンタースポーツといえば、スキー、ソリ、スノーハイキング、スノーシュー、ツアースキーなど。
今回は、そんな人気スポーツの中から、大人も子どもも楽しめる”ソリ”についてレポートする。
ソリは、ワールドクラスのダイナミックな景色の中、老若男女が楽しめるアクティビティとして親しまれている。まさにスイス人が大好きな国民的ウィンタースポーツだ。
まずは100年以上の歴史がある「ゴルナグラート鉄道」で移動
ソリのスタート地点までは、1898年に開通した「ゴルナグラート登山鉄道」で移動。
この鉄道は、歯車を歯軌条にかみあわせて急勾配を登っていくアプト式のラックレールを使用。登山鉄道はアルプスの絶景が広がるゴルナーグラートまで標高差1,469mを約40分で結ぶ。
標高3,089mの展望台からは名峰マッターホルンやスイス最高峰のモンテ・ローザ、ゴルナー氷河やフィンデルン氷河などの絶景を望む。ここからは、29座もの4,000m級の山々の眺望が可能だ。乗車する際には右側の窓側に座ると、進行方向の右側にマッターホルンが見えるのでおすすめ。
スイスの森林限界は少し標高が高い。約標高2,200mから少しずつカラマツやトウヒなどの木の大きさが小さくなっていく。車内では車窓から見えるマッターホルンに皆が大興奮。
ちなみに富士急行とマッターホルン・ゴッタルド鉄道は、1991年に姉妹鉄道の提携を開始。”富士山”と”マッターホルン”という国際的な観光地であり、両国を代表する名峰を眺めながら鉄道を運行する点が共通している。
最新マルチメディア「ズーム・ザ・マッターホルン」がある展望台に寄り道
ゴルナーグラート展望台に到着すると、新しい施設が目に入った。2021年に誕生した「ズーム・ザ・マッターホルン」だ。
この施設では、3DやVRなど最新のテクノロジーを使い、通常ではありえない角度や視点からアルプスの絶景や大自然に近づく体験ができる。
パラグライダーでのフライトを仮想体験もできる
「パラグライダーフライト」は、パラグライダーフライトの仮想体験がができるアトラクションだ。リラックスして楽しめる「遊覧パノラマ・フライト」と、ペースの速い「エキサイティング・フライト」のふたつから選択が可能だ。目にはVRグラスをかけ、揺れる座席でリアルに浮遊する仮想飛行を実現。実際にパラグライダーに乗っているような体感で、迫力あるマッターホルンとアルプスの絶景に近づく感覚を楽しめる。
そのほか、ツェルマットの四季、歴史、アルプスの自然界(植物相、動物相、氷河)、ゴルナーグラート鉄道の歴史などを紹介している。
いよいよ絶景ソリコースへ!
ソリコースは標高2,815mのローテンボーデンから、標高2,582mのリッフェルベルグまで続く。ローテンボーデンはゴルナグラートから電車で一駅下がった場所だ。ソリをするためのチケットを購入すれば、11時から15時40分まで滑走できる。このチケットは電車料金がセットになっていて、ソリコースのあるリッフェルベルクとローテンボーデンの間の列車は無制限に乗車することができる。
このエリアでは、一年を通してハイキングも大人気
ローテンボーデンからリッフェルベルグまで、マッターホルンを眺めながら歩く約1時間の絶景ハイキングコースとしても人気だ。スノーシーズンはもちろん、夏でも多くのハイカーが訪れ、途中にある山上湖のリッフェルゼーの水面に映る逆さマッターホルンを目指す(冬季にはこの湖は凍り、雪で埋まってしまう)。
ソリはレンタルで楽しめる
ソリのレンタルはローテンボーデンの駅舎でできる。返却はソリのゴール地点のリッフェルベルグで。レンタルを利用できるから、ツェルマットからでも気軽に遊びに来ることができる。
快晴の中、いよいよソリ滑走のスタート。約1.5kmのコースを進む。背後には昨年の夏に登頂したブライトホルンが美しく輝く。
マッターホルンを眺めながら大満足のソリ滑走
クラシックな木ソリには機械式のブレーキはない。ブレーキは足を雪面につけてかけるか、ソリの先端を少し引き上げて減速させる。そんな操縦をするため、足元は濡れて冷えないようにスノーブーツやゴアテックスの登山靴を履くことをすすめる。私はマッターホルンを一緒に登ったスポルティバの「トランゴ・キューブ」を履いて滑った。
慣れている人は高速で滑走していく。壮大な景色のなか、風を切って走るスピード感が最高だ。
リッフェルベルグが見えたらもうすぐゴール
ソリコースは専用でスキーヤーが入ってこないので、気にせず安心してソリ滑走が可能。
標高2,582mのリッフェルベルグが見えてくると一安心。
ゴールのリッフェルベルグにてマッターホルンを背景に記念撮影。大満足。
ソリは2人乗りもできるので、スイスではカップルのデートの定番としても親しまれている。もちろん、子どもと一緒に滑走するのもおすすめ。
休憩は、1853年創業の老舗山岳ホテル「リッフェルハウス」で優雅に
ランチやお茶休憩は赤い窓が可愛らしい「リッフェルハウス」にて。ここは、1853年に建設され、2014年に改装された大人気の山岳ホテルだ。「トム・ソーヤ」を書いた小説家のマーク・トゥエインもこのホテルに滞在したことで知られている。
夏はマウンテンバイカーにも人気のエリア。スイス政府観光局によって「バイクホテル」としても認定されている。
スイスでは、スキー場のレストランが充実している。
今回もそんな例にもれず、サラダ、スープ、メイン、デザートの3コースを味わった。贅沢な時間だ。この日のメインは「鶏肉とケール、甘く似た栗」。チーズフォンデュやフラムクーヘン(薄いパイ生地にサワークリームを塗り、ベーコンやタマネギをのせて焼いたピザのようなもの)も美味しくて人気。
テラス席では、ビールやコーヒーとマッターホルンを楽しむ人々で満席に。
大人も楽しめるソリ滑走とマッターホルンの絶景、そしてゆったり贅沢に楽しむ食事とカフェタイム。ツェルマットのスキーエリアは4月24日までオープン予定。安全な渡航が可能になった暁には、スノーシーズンのスイス旅行もおすすめしたい。
旅の情報
●スイス政府観光局(取材協力)
●ゴルナーグラート登山鉄道
●お得な交通パスの情報
https://www.myswitzerland.com/ja/planning/transport/tickets-public-transport/