ただ、カヤックは自宅には持って帰らず、マリンボックスに毎月保管料を払って置かせてもらうことにした。腰越の自宅から海は近いので、頑張れば海まで引っ張って自力で海に出ることも不可能ではないが、やめた。なぜなら、何度か海に出てみて、まだ慣れないうちは自分の判断だけで海に出るのは危険だとわかったからだ。
陸からはなんともないように見えても、海の上では強風が吹いていたり、朝は平気でも昼から波が高くなったりということが、ごく普通にある(そのためこのロケもしょっちゅう延期になる)。そんな海に素人判断で出ていくのは無謀な行為といえる。実際、この連載の取材中にも、SUPで沖に出たはいいけど強風のため帰れなくなった女性から助けを求められ、沼野さんが陸まで引っ張るという出来事があった(足こぎカヤックは比較的風に強いため)。
稀なことかと思いきや、沼野さんは「しょっちゅうですよ」と笑っていた。その点、マリンボックスのようなショップに置いておけば、出て良いのか、やめておいた方がいいのか判断を揚げる。それに万が一、海の状況が変わるような場合は携帯に連絡してくれる。そうした安全管理は徹底しているため、これまで大きな事故はないという。
その他、水道やシャワーやトイレといった施設を利用できるメリットもあるが、やはり一番は安全面を考えて保管契約を結ぶことにした。カヤックフィッシングはたしかに楽しいが、やはり自然相手の遊びなので、楽しいだけでなく注意するべき点なども、今後お伝えできればと思う。
いずれにしても、遂に自分のカヤックを手に入れることができた。さぁ、今度は何を釣ってやろうか。
(次回はさらなる大物を狙います)
穴澤 賢(あなざわまさる)
1971年大阪生まれ。2005年7月から愛犬との暮らしを綴ったブログ「富士丸な日々」が話題となり、その後エッセイ、コラムなどを執筆するようになる。著書に「またね、富士丸。(集英社文庫)」、「明日もいっしょにおきようね(草思社)」、「また、犬と暮らして(世界文化社)」、自ら選曲したコンピレーションアルバムとエッセイをまとめたCDブック「Another Side Of Music」(ワーナーミュージック・ジャパン)などがある。株式会社デロリアンズ代表。Blog:Another Days
取材協力:MARINE BOX100
逗子市新宿2-14-4
http://www.marinebox.co.jp