ようやく焚き火ができた3月のある日
こんにちは。ヨーロッパを流れるドナウ川を、その源流地域ドイツからエーゲ海沿いのトルコまでカヤックで漕いでみよう!と、旅をしているジョアナです。半年くらいの放浪を予定ししている長い旅です。
自己紹介するのは記事を書くときだけではなく、旅の途中で町の人に話しかけられても、ほぼこの通りの挨拶をしています。そして大抵、返ってくるのは、「えっ、どこで寝てるの?」という質問。答えは、野宿。川岸に、適当に平たくて、人が誰もこなさそうな場所を見つけてテントを張って、毎晩キャンプをしています。そして、キャンプの一番の楽しみといえば、そう、焚き火。
ドイツの寒さを乗りこえて
このカヤック旅を始めたのが2月の初旬。2月のドイツは、旅をしながら焚き火を楽しむには、厳しい季節でした。空は毎日どんより。薪になりそうなものはどれもちょっぴり湿っています。気温が寒すぎて、薪を集めて火をおこす気にもなりません。それに加えて日照時間が短いのも問題です。日の出が午前8時前で、日没が午後5時ごろ。一日漕ぎ終わるころには、うっすら暗くなり始めるので、薪集めに出かける気もおきず、すぐにテントに入って寝袋に包まるという生活パターンだったのです。
上の地図をクリックして拡大すると、オーストリアを越えてすぐ、ハンガリーとスロバキアの国境が交わることがわかります。
そんな私が今回のカヤック旅ではじめて焚き火をしたのが、出発から1か月半が経過した3月後半。厳しい寒さが急に和らぎ、やっと焚き火をする気になったのです。春がやってきました。これはこの旅でドイツ、オーストリア、スロバキアと移動してきて、4か国めのハンガリーへ入ったころの出来事でした。
ふたつの国をカヤックで行ったり来たり
ハンガリーの国境がドナウ川に食い込むあたりの地図を少し拡大してみると、川の形に、ある特徴がみられます。
ものすごく細長い島を境目に、ドナウ川が二分されているのです。北側の太い方は、大きな船だけが通れる水路。そして南側の細い方は、カヤックなど小さな船が通るための水路。たくさん枝分かれしていますが、全部あとで合流して、ひとつのドナウ川に戻ります。
上の写真は、細い方のドナウ川と、太い方のドナウ川を隔てる水門。ドイツのウルムという町を出発してから、この日までドナウ川で越えてきた水門の数はおそらく、30以上。でもこの水門のあとは、ハンガリーを抜けてセルビアの水門に行くまで、ドナウ川本流約800kmの間は、越えなければいけない水門は現われません。喜びの、笑顔。
水門の近くにある展望台から見おろろすドナウ川は、まるで海のように大きく膨らんでいます。この展望台から見て右側に続くのが、船が通るための大きなドナウ川。そして左に現われるのが、水門、私が漕ぐ小さなドナウ川です。
小さなほうのドナウ川へ
あれだけ海のようだった川幅が、急に細くなってしまいました。このカヤックが停まっているのは、スロバキア側。対岸がハンガリー側です。この小さなドナウ川に沿って、スロバキアとハンガリーの国境が敷かれているのです。
今回は、ちょっと「お花を摘みに」スロバキアに上陸しました。
それから、対岸のハンガリー側に、枝で組まれた秘密基地のようなものを見つけて上陸を試みたり。
ハンガリーとスロバキアは、ひとつの国として出入国を管理するシュンゲン協定内。だから、国境を越えてもパスポートチェックはなく、こうして自由に行き来することができるのです。
このあたりは両岸とも地元の釣り人やハンターがよく訪れるスポット。この日、私が見かけたのは、テントの周りに釣り竿を何本も設置して、まるで魚を待ち伏せするようなスタイルで釣りをする人たち。それから、胴長を着て川に入り釣り糸を遠くまでビュンビュン飛ばす人たち。さらに、焚き火が成功したのか歓喜の声をあげてはしゃぐ3人の若者。なんだか私も、焚き火がしたくなってきた。この日は漕ぐのを早々に切り上げて、適当な場所を見つけてキャンプすることに決めました。
キャンプに国境はない
この日、私が選んだキャンプ地はハンガリー側。
ちなみに私の携帯電話のSIMカードはドイツで買ったもの。EU圏内であればどの国でも使用できる便利なSIMカードです。とはいえ、国境を越えると通信会社の管轄が変わるのか、スロバキアからハンガリー側に上陸した途端、「ハンガリーへようこそ!EU圏内なのでローミング料金は無料です」とメッセージが。「たしかに国境を越えているんだなあ」と実感したものの、キャンプの楽しみ方は国境を越えても変わりません。
燃えそうな枝を拾ってきて。適当な長さに折って集めます。
炎が落ち着いてきたら、鍋を置いて料理を開始。今夜のメニューはスパゲティ。
ちょっと古くなってパサパサしてきたパンは、ホットサンドにすればおいしく蘇る。チーズと、ハムとケチャップを挟んでいただきます。取手が長いホットサンドメーカーなら、焚き火で料理しても、手が熱くならずに楽ちん。
よく食べて、よく寝て、それから迎える穏やかな朝。キャンプの楽しみに国境は、関係ないんだなあ。これから行く先々で、どんなキャンプ地を見つけて、どんな焚き火ご飯を作れるか、楽しみです。