ハクトウワシは春の訪れ
ハクトウワシは一年中ユーコンにいる鳥ではない。そう、渡り鳥。長かった冬もそろそろ終わりかな?と思う頃、ホワイトホースの街のはずれの巣にハクトウワシを見かけた。ハクトウワシが戻ってきた。自然を通して季節の変わり目を感じられるのは、いつになってもうれしい。
街中でも見られる! ホワイトホースで有名な巣
カナダ、ユーコン準州都のホワイトホース。北米有数の大河、ユーコン川が街の中を流れている。
ハクトウワシの主食は魚。冬は水面が凍って魚が捕れないから、その間は南へと移動している。それ以外の春から秋にかけては、ホワイトホースの街中や住宅地でも、水辺に近い場所では観察が可能だ。
2006年、街のすぐそばにあった巣が嵐によって壊れてしまった。それを人の手で直したところ、すぐには帰ってこなかったけれど、数年後には戻ってきて、今では毎年つがいで帰ってき、雛を産み育てている。
あらためてハクトウワシって??
タカ目、タカ科、ウミワシ属の大型鳥類。アメリカの国鳥としても有名で、頭と尾は白くてそれ以外の体毛は茶色、嘴は黄色い。
カルフォルニアなどの南に生息する個体に比べて、ユーコンなどの北に生息する個体の方が大きくて、体長は1メートル以上、体重は5キロ以上、両羽を広げると2メートルを超える。
寿命は28年前後で、5キロメートル先の獲物を見つけられて、地上4000メートルまで上昇、時速100キロメートルで飛ぶこともできるすごい鳥!
生態系の頂点に位置するせいで、生物濃縮が起こりやすく、過去には絶滅も危惧されたていた。
同じ巣に同じパートナーと戻ってくる
どちらかが死ぬまでずっとパートナーを変えることがない。そして毎年同じ巣に戻ってきて、直しながらそこに住む。
地面の雪が全て溶けてなくなる頃には、大体どこの巣にもつがいが戻ってきている。もうしばらくすると産卵、抱卵の季節だ。
巣が見える場所まで出かけてみると、2羽が巣の上で寄り添っていた。もうすでに卵を抱えているのだろうか? メスはオスよりも25〜30パーセント体が大きい。右側で巣の中にいる方大きく見えるから、こちらがメスだろうか? なんだか仲が良さそうに見える。産卵後約35日で孵化する。
成長するにつれて呼び名が変わる
生まれてから成長になるまで、イーグレット、ネストリング、フレッジディング、イマチュアーイーグル、アダルトの順で呼び名が変わっていく。
イーグレット(Eaglet:生まれたての雛)~ネストリング(Nestling:雛)
イーグレットの時期は、雛はまだ小さくて巣の外から見るのはなかなか難しい。
羽毛が生え揃ってネストリングと呼ばれる段階になると、少しずつ巣の外からでも雛の存在を確認できるようになってくる。巣のそばで待っていると、獲物を捕まえた親鳥が帰ってくるのが時々見られる。
この頃になると近くにはカモメなど他の鳥も巣を作って雛を育てているから、何もしていなくても親は目の敵にされる。自分の巣から飛び立とうものなら、威嚇、攻撃を受けるし、カモメに追いかけ回される姿も時々見かけるくらいだ。
フレッジリング(Fledgling:飛ぶ練習をはじめた幼鳥)
そして夏が終わる頃には親と同じ大きさの体になって、飛ぶ練習が始まる。親が離れた木の枝で気長に待っている姿は微笑ましい。
イマチュアーイーグル(Immature Eagle:未成年期)
茶色と白のマダラ模様の羽毛が4〜5年体を覆う。巣立ちをして間もなくは茶色の割合が多い。
成鳥に近づくにつれて、頭が少しずつ白く変わっていく。
アダルト(Adult:成鳥)
完全に頭と尾が白くて、体が濃い茶色になると、晴れて成長となる。
今年も彼らが春と一緒に戻ってきた。これからあっという間に過ぎていく春から秋にかけて、またヒナの成長が見られると思うとなんだかワクワクしてくる!
2008年にユーコン川下りで訪れて以来、ユーコン準州に通い始める。2011年に移住後も、ユーコンに生きる野生動物、風景、自然と共に生きる人々を引き続き撮影中。2019年、First Light Image Festivalにて最優秀賞受賞。ユーコンから色々なトピックをお届けします!