——土地勘のない海外でそういう書類を揃えるのは、ちょっと大変そうですね。
平松:たしかに、それがいちばんのハードルですが……僕は最近、これをマニアックに楽しんでおりまして(笑)。数々のトラブルを「ほほう、こう来たか」とか「ついにラスボス!」などと、ゲーム感覚で楽しんでいます。でも、最近はそうした手続きもかなり楽になりました。メールやスマートフォンのメッセージ機能を使って、役所の人とやりとりしてアポを取りやすくなったので。昔はファクスでやりとりしてましたから。あとは、現地の日本領事館などに相談して獣医さんを紹介してもらうとかすると、かなり楽になると思います。
——なるほど。そうした手配も昔よりは簡単になっているんですね。
平松:こうした行き帰りに必要な主な準備は、それぞれいつまでにやらなければならない、というタイムリミットが決まっているので、それらに間に合うように滞りなく準備を進めておく必要はあります。日本国内にずっといた猫が初めて海外旅行に行く場合、2、3ヵ月前から準備をしておけば間に合います。
——平松さんがこれまでノロと旅しているのは主にヨーロッパですが、ヨーロッパ以外の地域の国々はどうなんでしょう?
平松:アジアは僕も行きたくていろいろ調べたんですが、ペット連れはちょっと難しいです。香港や台湾でさえ難しい。制度的には行くことはできるんですが、泊まれるホテルがほとんどない……。あと、島国はどこもルールが厳しいですね。
——飛行機に乗るとき、ノロは機内持ち込み扱いなんですね。
平松:航空会社にもよりますが、ヨーロッパの航空会社では、ケージ込みの重量が8キロ以下だったら、ペットも機内持ち込みが標準的な扱いです。貨物室に預ける必要はありません。楽器を持ち込むのと同じような感覚ですね。だから、機内持ち込みにあたって過度に恐縮したり遠慮したりする必要はないですよ。
——機内でも、猫は平気で過ごせるものなんですか?
平松:それは猫によると思います。ノロはほんとに楽ですね。僕らがいればそこは安心していい場所だと認識してくれているので。よく寝てくれるので助かりますし、起きている時に退屈しはじめたら、窓の外を見せたり、キャビンアテンダントによっては、後ろのギャレーに行って散歩をさせてくれることも。ヨーロッパの航空会社は、その辺もとても寛容です。ノロ自身も「自分は今、飛行機に乗っている」ということをわかっているんですよね。これからしばらくは自由が利かなくなるから、寝に入る。いい意味であきらめが早くて、状況を把握して自分がいちばんストレスを感じない過ごし方を見つけるのが、ノロはうまいんだと思います。
来週掲載予定の後編では、異国の地でノロと平松さんがどんなふうにして旅を楽しんでいるのか、引き続きお話をうかがっていきます。
◎平松謙三 Kenzo Hiramatsu
1969年岡山県生まれ。2002年から現在まで、黒猫のノロと37カ国を旅し、世界の美しい風景とノロを写真に収め、書籍やカレンダーなどを通じて発表している。ふだんは八ヶ岳南麓の山小屋に暮らし、フリーでグラフィックデザイン、Webディレクションなどの活動をしている。趣味は自転車と薪作り。デイリー宝島社オンラインtreasures(トレジャーズ)にて「世界を旅するネコ 番外編なノダ!」隔週日曜連載中。
『世界を旅するネコ クロネコノロの飛行機便、37ヵ国へ』
宝島社 1300円+税
著者サイト/Amazon
◎聞き手=山本高樹 Takaki Yamamoto
著述家・編集者・写真家。インド北部のラダック地方の取材がライフワーク。著書『ラダックの風息 空の果てで暮らした日々[新装版]』(雷鳥社)ほか多数。
http://ymtk.jp/ladakh/