1931年創業の「つるや釣具店」オーナーで、釣り歴55年の山城良介さんが、フライフィッシングの基礎知識と、その魅力あふれる世界を案内します。今回は、フライフィッシングの歴史と道具にまつわるお話です。
イギリスで始まったフライフィッシングの歴史
ご存知のラグビー、サッカー、テニス、ゴルフなどはイギリス発祥。イギリス人というのは、人生を謳歌するスポーツやゲームなどを考える天才である。
現在のフライフィッシングの原型もまた、15世紀頃のイギリス発祥。ただ魚を釣るだけの行為から、スポーツあるいはゲームとして楽しむための釣りとして、フライフィッシングが生まれた。
イギリスでは貴族などの特権階級の釣りにとどまっていたが、その面白さは19世紀ごろアメリカに伝わり、ポピュラーなスポーツフィッシングに生まれ変わっていく。
日本では、1870年〜80年代スコットランド人のトーマス・グラバーが、日光の中禅寺湖や湯川に鱒を放流して、華族階級の人々や外交官たちと楽しんでいたという記録が残っている。
高度成長期の1960年後半から70年にかけ、イギリスやアメリカからのフライキャスティングのデモンストレーターが来日したことや、1992年の映画『リバー・ランズ・スルー・イット』が公開されると、刺激を受けた若者が急増し、現在に至る。
この釣りの素晴らしいところは、美しい大自然の中で清らかな渓流や湖に棲む鱒(ヤマメ、イワナ、ニジマスなど)を、季節ごとに移り変わる昆虫や小魚などに模した「フライ」(毛鉤)を使って釣ることである。魚に触れることなくキャッチ&リリースをするので、女性にも人気だ。
そして、主に羽類を使ってフライを自作すると、楽しみも倍加すること請け合いである。
フライフィッシングに必要な道具と価格の目安
フライフィッシングの道具はロッド(竿)、リール、フライライン、テーパーリーダー、さらにその先に付ける、ティペット、そして餌であるフライ(毛鉤)と道具立てはいたってシンプルである。
フライロッド
渓流の場合は、7フィート~8フィート(約2.1m〜2.4m)のロッドを使用する。ラインは#3〜#4番用から選ぶ。
素材はバンブー(竹)、グラスファイバー、カーボンとあるが、現代は軽くて反発があり、投げやすいカーボン素材が主流である。
- 価格の目安:20,000円〜
湖や大川の場合は、8フィート半~9フィート(約2.6m~2.7m)のロッドを使用する。ラインは#6番が良い。
- 価格の目安:22,000円~
フライリール
フライフィッシング用リールの構造はいたってシンプル。ロッドとの適合するラインが巻けるキャパシティのあるサイズから選ぶことが大事だ。左右どちらでも巻くことが出来るタイプが一般的で、慣れればどちらでも良い。
- 価格の目安:12,000円〜
フライライン
釣り糸のうち主たる部分を「フライライン」と呼ぶ。フライロッドを振ったときの力を伝えて、狙ったポイントにフライを運ぶための重要な道具。太くてカラフルな外観を持つことも多い。サイズは、affta(American Fly Fishing Trade Association)の規格で定められ、ラインの先端から30フィート(約9m)までの重量で規定される(太さではなく重さで表示される)。#3番,#4番、#5番と、番手が増えるほど重くなる。全長は25m~30mとかなり長い。
- 価格の目安:6,000円~
フライラインには、「フローティング」(浮くタイプ)と「シンキング」(沈むタイプ)の2タイプがある。ビギナーはまずフローティングラインから始めるのがおすすめだ。
テーパーリーダー
フライラインの先に付ける主にナイロン製のテーパーのついた糸(太さが徐々に細くなる糸)。ビギナーの場合は、7.6フィート〜9フィート(約2.3m~2.7m)のテーパーリーダーをつなぐ。太さはフライのサイズや対象魚によって変える。
- 価格の目安:280円~
ティペット
リーダーの先にさらに結ぶ釣り糸。長さは60〜70㎝ほどで、慣れるにしたがって長くする場合がある。
- 価格の目安:1,500円~
テーパーリーダーとティペットの太さについて
リーダーやティペットはX表示で、フライラインとは逆に、数字が増えるほど細くなる。つまり1Xよりは2Xが細い。#3または#4ラインでは5X(釣り糸の0.8号くらい)、#6ラインでは3X(1.5号くらい)が標準。
ティペットは2段階までは細いものをつないでも良い。5Xに6X、7Xは大丈夫だが、8Xをつなぐと結び目で切れたり抜けたりしやすい。
フライ
毛鉤(けばり)。主に鳥の羽や動物の毛、化学繊維などで昆虫や小魚を模して作られている。
「フライタイイング」といって自作することがこの釣りの面白さ楽しさでもある。
初めは市販のフライで、「ドライフライ」(浮く毛鉤)を10本くらい、「ニンフ」(水生昆虫の幼虫)、「マラブー」(フワフワとした羽根)などの沈む毛鉤を10本くらい用意するのがおすすめだ。
- 価格の目安:1本220円~
フライボックス
毛鉤を収納する箱。いろいろな種類の専用ボックスが市販されている。ビギナーでもフライが4~50本収納できるものを購入するといいだろう。
- 価格の目安:2,000円~
その他の道具
クリッパー(カッター)、ピンオンリール(クリッパー用の伸縮するコード付き)、フロータント(浮力剤)。
帽子、偏光グラス
ビギナーはキャスティングが思うように出来ないため、時によっては自分を釣ってしまうこともある。日除けとしても頭を釣らないためにも帽子は必需品。偏光グラスは水面のギラギラを消して水中を見やすくためと、目の保護のために必携。
ウェーダー
胸か腰まで覆うタイプがベター。フェルト底のシューズを履くタイプと、ブーツタイプがある。練習の釣行はウェーダーを使わなくても良い管理釣り場から始めると良い。
いずれは必要なもの
フィッシングベストあるいはフィッシングバック、ランディングネット(玉網)。
さあ~、始めてみよう、日常を忘れて、いざ、大自然のなかへ!!
春爛漫のこの季節、キラキラ輝く水に新緑が君を待っている。
初心者から上級者まで、それぞれの技術に応じたアイテムから季節に応じた釣り場情報まで丁寧に伝授。