2020年3月から始まった100%オーガニックの鎌倉野菜を育てる『雨のちハレ、ときどき農業生活』では、たくさんの失敗を繰り返しながら、さまざまな野菜を育てていますが、果たして栽培方法が合っているのか疑ってしまうことがよくあります。今日は、個人的に衝撃を受けた玉ねぎ編です。
野菜の高騰が日々ニュースで流れ、春には玉ねぎが1年前の3倍以上に跳ね上がり、食卓を直撃しました。全国の生産量の65%を占める生産量日本一の北海道の雨不足による不作が全国に波及して、異常な高騰に繋がったそうです。
玉ねぎを植えてみる!
写真はご近所の子供の手の上に乗せた玉ねぎの苗です。これを1本1本植えていきます。
子供が率先してできちゃうほど、苗の植え付けは簡単です。
玉ねぎは、3回踏めば腐らない!?
「だ、大丈夫? 本当に育つの?」
「これで正解なの?」
へなへなしてて、自力で立てない苗たちを見て、僕は農場主に尋ねると、衝撃の言葉が返ってきました。
「そのうち踏むから!」
調べてみると「玉ねぎは、3回踏めば腐らない説」があるらしく、ガチでした。越冬野菜の代表的な存在の玉ねぎのストレスに耐えて強くなろうとする性質を利用し、植え付け直後と1月上旬〜2月上旬あたりに、そして腐食防止のために葉の肥大期の合計3回踏む「たまねぎ踏み」という通過儀礼があるそうなんです。
確か、麦も「麦踏み」と呼ばれる踏む儀式があったと記憶してますけど、こんなか細い状態で本当に踏むのか? 大丈夫なのか? また立ち上がってくるのか? 疑問しかないまま、いよいよ最初の「たまねぎ踏み」の日がやってきました。
「中途半端な手加減せずに、しっかり踏めよ!」
そんな目線を浴びながら、心の中で「ごめんよ!」とか言いながら、踏みました。そしたら、ほぼ折れちゃいました。せっかく根付いて立ち上がってきたというのに…。僕たちのような小規模農家は自足で踏むことになりますが、広大な玉ねぎ農家の方はローラーで容赦なく踏むそうです。
踏圧で根をしっかり張らせる効果や、冬の霜で根が浮きにくくなる効果、育ってきてからは頭頂部が引き締まり、腐りにくくなる効果。甘く育つために必要なこの儀式を通過したものたちが店頭に並んでいるんですね。
そして、踏みつけられた玉ねぎは見事に立ち上がり、立派に育っています。玉ねぎがこんなにドMだったとは知らなかった(笑)。でも、あと一回、成長した玉ねぎを踏まなければいけないようです。
3年目に入った農業生活も、まだまだ知らないことばかりです。生き物っていろいろなんですね。「俺、褒められると伸びるタイプだから!」そう周囲に言ってみたものの、誰も耳を傾けてくれていませんでした。できれば踏みにじられるより、褒められて育ちたかった。