お米を炊く道具というイメージが強い飯盒(はんごう)ですが、実は飯盒は、煮る、焼く、揚げるなどの様々な調理をこなすことができる万能調理器具。パンを焼くのにも適しており、炭火を使ってじっくりと焼くことで、おいしいパンを作ることができます。
今回はパン焼き初心者でもできる、飯盒を使用したパンの作り方をご紹介いたします。
飯盒の仕組みと使いかた
パンを焼く前に飯盒の仕組みと使い方をご説明いたします。著者が所持しているのは兵式飯盒と呼ばれる、日本の一般的な飯盒です。
飯盒の特徴
飯盒は蓋、中蓋、本体の3つのパーツで成り立っています。
飯盒の蓋を開けると、蓋よりも少しサイズが小さい中蓋が本体にピッタリとはまっています。
一般的な飯盒の素材はアルミです。アルミは熱伝導率がよいため、食材に火を通しやすく、焚き火を使った野外での調理に最適な素材です。
飯盒の本体にはツルが付属しています。トライポッドなどにツルを引っかければ、焚き火の上に吊るすことができます。
飯盒の基本的な使いかた
飯盒の基本的な使いかたをお伝えいたします。
炊飯をする場合、本体部分にお米と水を入れ、中蓋と蓋をしっかりと閉めてから、火にかけて調理します。
飯盒以外の一般的なクッカーはパーツが本体と蓋のみですが、飯盒には中蓋があります。中蓋がある分、本体内部の圧力が一般的なクッカーよりも高くなるので、お米にしっかりと火を通すことができ、ふっくらとした美味しいお米を炊飯できるのです。
パンを焼く場合もこの構造により、パンの内側までしっかりと火を通すことができます。
ちなみに、中蓋はすりきり一杯でお米2合の容量、外蓋はすりきり一杯でお米3合の容量になっており、計量カップの代わりになります。
蓋はフライパンにもなるので、焼き物や炒め物の調理に使用ができます。ハンドルが付属している飯盒もありますが、筆者の兵式飯盒にはハンドルがありません。そのため、蓋をフライパンとして使用する場合は、100円ショップで購入した着脱式のハンドルを使っています。
飯盒は深さがあるので、カレーやおでんなどの煮込み料理にも向いています。本体に水を入れて、中蓋に肉まんやシューマイを入れて蒸すこともできます。このように、飯盒一つあれば炊飯だけでなく、様々な調理をこなせるのです。
飯盒を使ってパンを焼いてみましょう
【道具と材料】
<道具>
- 飯盒
- 焚き火台
- 炭
- 箸
- ボウル
- 電子はかり
- まな板
- ハンドタオル
- サランラップ
- クッキングペーパー
- アルミホイル
- 計量用に使用できる皿(今回はシェラカップを使用)
<材料>
- 強力粉 300g
- 砂糖 20g
- 塩 3g
- ドライイースト 6g
- バター 20g
- 卵 1個
- 牛乳 200ml
焦げ付きを防止するために、調理の熱源には炭を使用します。炭は少量(20〜30分ほど燃焼できる量)あれば大丈夫です。
牛乳とバターを温める
牛乳とバターを日なたに置いて温めます。牛乳は人肌程度の温かさに、バターは柔らかくなるまで放置しましょう。
パン生地をこねる
ボウルに温めた牛乳とバター、卵を加え、箸でよくかき混ぜます。
よく混ざったら、ボウルに計量した塩、砂糖、ドライイースト、小麦粉を加えてさらにかき混ぜます。後で打ち粉として使用するので、小麦粉をほんの一握りだけボウルに入れずに残しておきましょう。打ち粉とは生地をこねたり成形したりする際に、生地が周りにくっつかないように振るう粉のことです。
ボウルに入れたものをかき混ぜていると、次第に中身がまとまり、弾力のある生地に変わってきます。
弾力が出てきたら、手を使って生地をボウルの中で転がしながら、内側に押し付けるようにしてこねましょう。全体的に表面が滑らかになるまでこね続けます。
生地を発酵させる
ボウルにラップをかけ、上をハンドタオルで覆い、日なたに放置します。気温が低い時期には車のダッシュボードの上や、ストーブの近くなど30度C~40度Cほどの気温の場所に放置しましょう。
季節やその日の気温によって、放置する時間は変わってきますが、大体40〜60分ぐらいです。生地が2倍程の大きさになるまで発酵を促します。
ガス抜きをする
生地が発酵する際にイースト菌の働きにより炭酸ガスが発生します。パンをうまく焼くために、生地の間に入ったガスを抜いていきます。
ボウルから取り出した生地を2等分し、残しておいた小麦粉を打ち粉としてまぶします。
両手のひらで生地の中央を優しく押さえます。内側から、ゆっくりと外側に向けて、生地の間に入ったガスを抜いていきましょう。
ガス抜きが終わったら、再び生地を丸く成形します。
2次発酵をうながす
2つに分けた生地を並べ、上から水を含ませて良く絞ったハンドタオルをかけます。生地は乾燥に弱く、湿気を保つためです。
生地を再び日なたに置いて15分ほど放置し、2次発酵を促します。
炭の準備をする
生地の2次発酵をしている間に、熱源に使用する炭の準備をしましょう。焚き火台の上に、着火剤や枝などで火をおこし、炭に火をつけておきます。
飯盒に生地を入れる
2次発酵が終わったら、飯盒に生地を入れます。
生地を入れる前に、焦げ付き防止のための下準備を行います。15cmほどのアルミホイルを1枚、飯盒の底に敷きます。飯盒の底とアルミホイルの間に軽く空間ができるように、アルミホイルを軽くつぶしてシワを付け、厚みを出しましょう。
30cmほどのアルミホイルをもう1枚使って、1枚目のアルミホイルの上に敷きます。2枚目のアルミホイルは飯盒の側面の半分ほどを覆うようにしきましょう。
さらに、2枚目のアルミホイルの上に30cmほどのクッキングペーパーを敷き、その上に2個に分けていたパン生地を並べて入れます。
炭火でじっくりと焼き上げる
焚き火台の上に飯盒を置きます。炭と飯盒の間に空間(今回は10cmほど)を作り、火力が弱火になるように調節しましょう。生地を弱火でじっくりと焼き上げます。飯盒の上にも火のついた炭を乗せましょう。
30分ほど飯盒を火にかけた後、一度中を開けて、焼き具合を確認しましょう。蓋を開けて箸をパンの中心にさして確認をします。
内側まで火が通っていない場合、箸の先に生地がくっつきます。火が通っていなければ蓋をして、飯盒を更に10分ほど火にかけ、内側までしっかりと火を通しましょう。
でき上がり
パンを焼いた日は、春先で気温が低い日だったので、発酵が足りなかったようです。ふかふかなパンではなく、がっしりと中身が詰まったパンに仕上がりました。
ただ、中まで火がしっかり通っており、表面が丸焦げになることもなかったので、個人的には大成功です。焼きたてのパンのいい匂いが食欲をそそります。ジャムなどをつけなくても、そのままで美味しく食べることができました。
まとめ
飯盒は炊飯だけでなくパンを焼くのにも向いている調理器具です。「暖かい場所でしっかりと生地を発酵させる」ことと、「炭火でじっくりと焼き上げる」ことの2点を特に注意すれば、初心者でも美味しいパンが焼けます。飯盒でパンが焼ければ、キャンプで盛り上がること間違いなしですよ!是非おためしくださいね!