森のきれいな空気をめいっぱいすいこめば、気分すっきり、心も体もよみがえります。山登りの初心者や、親子連れでも低山なら安心。いざ、静かな山をのんびりと歩きにでかけましょう。低山を歩くときには、どんな道具が必要なのでしょうか? 初心者におすすめの低くて楽しい山は? 山歩きの達人に、道具の選び方と低山の楽しみ方を教わりました。おすすめの低山も5つご案内します。
大内 征さん:低山トラベラー。宮城県仙台市出身。NHKラジオ深夜便『旅の達人 低い山を目指せ!』を担当して6年目。ウィンドブレーカーの中にメッシュの肌着、速乾Tシャツ、フード付き長袖を着用。汗かきなので、この化繊素材の服3枚を脱ぎ着して、体温を調節している。パンツは伸縮性が高いトレッキング用。
スマホの地図アプリを活用することで道迷いを防げます
司馬遼太郎、宮城谷昌光、津本陽……。大内 征さんは歴史小説が好きで、小説に出てくる峠や山城に惹かれるうちに低山に通い始めた。
現在、「低山トラベラー」と称して、著作やテレビ、ラジオで低山の楽しさを発信している。
新しい道具や技術をとり入れることにも積極的で、おすすめは『YAMAP』という地図アプリ。
「じつは低山は道に迷いやすい。山仕事の作業道が錯綜していることが多いからです。道迷いの防止に、このアプリをぜひ使ってみてください」(大内さん)
まずはスマホでアプリをインストール。山は電波が届かないおそれがあるので、事前に登る山の地図をダウンロードしておく。地図には赤線で登山道が記されている。
登山口でアプリを起動して山を歩けば、登山道のどの部分を歩いているかが一目瞭然になる。
大内さんおすすめのスマホアプリ『YAMAP』
スマートフォンのアプリ『YAMAP』の画面。国土地理院地形図に赤線(登山道)が入っている。スマホのGPSをオンにすると、歩いたルートが青線で記される。歩行距離や標高差も記録される。
YAMAPアプリをインストールする
携帯電波がつながらない場所でもGPSは使える
「携帯の電波が悪いとGPSも通じないと勘違いしている人が多いのですが、たとえ圏外でもGPSはつながります。
山では機内モードにしてバッテリーを温存し、GPSのみオンに設定します」(大内さん)
低山には石碑や神社がいたるところにある。
安全を確保したうえで、歴史の世界をめぐりたい。
大内さんの山歩き道具
側面が開くバックパック(エバーグッズ製)を愛用。ショルダーハーネスを片方はずして前に持ってくることで、肩にかけたまま中の道具を取り出せる。
モンベルの保温ボトル。熱湯を持っていってコーヒーをいれたり、スープを持っていったり。カッティングボード(木の板)をテーブルがわりに敷く。
風が弱く、歩きやすい道であれば、レインウェアの代わりに傘も有効。トレッキング用の折りたたみ傘(モンベル製)は軽くて風に強く、コンパクトに収納可。下山後に雨が降ってきたときも便利。
岩をつかんで歩くときや寒いときのために登山用手袋を用意。スマホを操作できるように、指先が切れているタイプを愛用。
コロナ禍時代の山では衛生セットも大事。立体設計のワコール「CW-X」のスポーツマスクは、汗がくっつかず苦しくない。そのほか、体温計、アルコール除菌シートなど。
昼食ではなく、行動食として菓子を多めに持参。歩きながら食べれば、時間を有効に使える。赤い防水袋をゴミ袋として活用し、においや水分を閉じ込める。これらをケースにまとめて収納。
大内さんおすすめの低山
古賀志山(こがしやま)
▲583m 栃木県宇都宮市
周辺に連なる山々を従えた山容は、低山らしからぬ抜群の存在感。地元にファンが多く、関東平野を一望する絶景は一見の価値あり。
戸神山(とかみやま)
▲771m 群馬県沼田市
「三角山」の別称の通り、ピラミッド的な姿が魅力的な低山。河岸段丘と火山に囲まれたパノラミックな大展望は、登山者だけのご褒美。
羅漢寺山(らかんじやま)~御岳昇仙峡(みたけしょうせんきょう)
▲1058m 山梨県甲府市/甲斐市かつて甲州御岳山(金峰山)を目指した修験者の道。山上には展望ポイント多し。昇仙峡の渓谷道とセットが◎。
馬越峠(まごせとうげ)~天狗倉山(てんぐらさん)
▲325m ▲522m 三重県紀北町
熊野古道・伊勢路の石畳で知られる「馬越峠」から尾根を越えれば、尾鷲の町と海を見下ろす絶景が待っている。
ひき岩群(ひきいわぐん)~岩屋山(いわやさん)
▲124m ▲128m 和歌山県田辺市
奇怪な岩峰が周囲一帯を埋め尽くす景観が印象的。岩上の登山道からの眺めは低山とは思えないスケール感。
取材・文/大塚 真 撮影/田渕睦深 (『サライ』2021年6月号より)