鳥のさえずりに耳を傾けつつ、きもちのいい山道をてくてく歩けば、心は晴れ晴れ、すがすがしい気分になります。山登りの初心者や親子連れでも、「低山」なら安心。さあ、静かな山をのんびりと歩きにでかけましょう! 低山を歩くときには、どんな道具が必要なのでしょうか? 初心者におすすめの低くて楽しい山はどこなんでしょうか? 山歩きの達人に、道具の選び方と低山の楽しみ方を教わりました。おすすめの低山も5つご案内します。
若菜晃子さん:編集者・文筆家。兵庫県神戸市生まれ。山と渓谷社で編集に携わった後、独立。随筆集『旅の断片』で斎藤茂太賞を受賞。最新刊は『岩波少年文庫のあゆみ1950‐2020』。山ではパタゴニアのウィンドブレーカー「フーディニ ジャケット」を愛用。軽くてかさばらないので旅にも使える。同社のバギーパンツは耐久性と速乾性にすぐれ、長年信頼の一品。
スケッチブックを持っていくと、山をより深く楽しめます
若菜晃子さんは、登山雑誌の元編集者で、独立後は「街と山のあいだ」をテーマにした小冊子『mürren』(ミューレン)を編集・発行しながら、山や旅、地方菓子など幅広いテーマで著作を発表している。
かつて仕事で山に登っていた若菜さんにとって、低山は山にいる時間を楽しめる場所だという。
「高山に登る場合は体力も必要ですし、日中にあそこまで行かなければという時間的な制約がありますが、低山では余裕をもって自然に親しむことができます。高山ほど荷物を精選しなくてよいので、好きな道具も持っていけます」(若菜さん)
ルーペで花や虫を見て、単眼鏡で鳥を見る。気になったものはスケッチブックに記録する。中を見せてもらうと、ミヤマセンキュウの新芽がていねいに描かれている。筆記具はごく普通の水性ボールペン。歩いたルートや気に入ったポイントなども書き込む。
若菜さんは、平日に人の少ない山へ出かけ、スケッチする時間や鳥のさえずりを楽しむという。
「まずは、誰か山に詳しい人と一緒に行ってみる。そして同じ山に何度も通ってみる。そうすると、どんな装備を持っていくとよいかが少しずつわかってきます」
若菜さんの本
筑波山や尾瀬など若菜さんおすすめの27の低山ハイキングコースを紹介した著書『東京近郊ミニハイク』。1320円(小学館刊)。
若菜さん愛用の山歩き道具
近年、水筒は軽いプラスチック製が主流だが、においが気になるので、アルミ製を使用。口が細いので飲みやすい。昼食は曲げわっぱに入れて持参。帰りはコンパクトに重ねて持ち帰る。ナイフは母から譲り受けた年代もの。
上から荷物を出し入れできる「ずだぶくろ」形のバックパックを愛用。いつも同じ道具を持っていくので、手を入れれば、どこに何が入っているかわかる。
片手で撮れるデジカメ、キヤノン「パワーショットG9X」を愛用し、予備電池も持つ。エッシェンバッハのルーペは植物などの観察用。時計は堅けん牢ろうなオメガ「シーマスター」を着用。
靴はダナー「ケブラーライト」。底が硬く安定感があり、内にゴアテックスを使用し雨が染み込まない。靴底は3回張り替え済み。
冒頭の写真で着用のジャケットは約100gと軽量で、ポケットに小さく収納できるポケッタブル仕様。下は同素材のパンツ(収納状態)。
若菜さんおすすめの低山
弘法山(こうぼうやま)
▲235m 神奈川県秦野市
丹沢の前衛峰。四季を通して手軽に雑木林の尾根歩きを楽しめる。吾妻山まで縦走しても。
角田山(かくだやま)
▲481m 新潟県新潟市
地元で愛される花の名山。春のカタクリやオオミスミソウの群落と海の眺望は忘れがたい。
田原アルプス(たはらあるぷす)
▲278m(最高峰・衣笠山) 愛知県田原市
渥美半島にある小さなアルプス。のんびりとした縦走路がいい。
虚空蔵山(こくぞうやま)
▲592m 兵庫県丹波篠山市
立杭焼で知られる丹波篠山にたたずむ里山。山頂からは窯の煙とのどかな家並みを望む。
鬼岳(おにだけ)
▲315m 長崎県五島市
五島列島福江島の山。草原に覆われたやさしい山容、展望のよい尾根道が素晴らしい。
取材・文/大塚 真 撮影/田渕睦深 (『サライ』2021年6月号より)
若菜晃子・文 羽金知美・写真
東京近郊ミニハイク〔BE-PAL版〕
東京から日帰りで行けて、
誰でもいつでも気軽に登れて、
必ず楽しい、おすすめの山
23+丘陵4のコースガイドを掲載。
新規コースも加えて、
山のよさ、山登りの楽しさを、
美しい写真とデザインで伝えます。