雨雲の多い季節になりました。6月のこの季節、おすすめしたいのが北の星空です。
梅雨の晴れ間に北斗七星が見えるかも
星座の観察をしていると、つい南の空ばかりに目がいき、北の空を見上げることが少ないような気がします。一年中、北極星(ポラリス)を中心に同じ星座が回っているためもあるでしょう。北斗七星を宿すおおぐま座とカシオペヤ座のほかに目立った星座がないこともあるかもしれませんね。
実は6月になると北の星空はけっこうにぎわいます。
この時期は、こぐま座をじっくり見るチャンスです。
北斗七星が北の空高く昇ってくると春の訪れを感じます。そして、こぐま座が高い位置に昇ってくるのを見ると、夏の訪れを感じます。それが6月です。北極星はこぐまのしっぽの先にあります。こぐまが逆さになりながら天頂に駆け上っているところです。天頂、つまり真上に近いので、町中でも見やすくなります。ただ、ずっと見上げていると首が痛くなりますね。
さらに注目は、こぐま座よりさらに天頂に来るりゅう座です。
「ヘルクレスの功業」11番目の被害者のりゅう
龍といえば、こわくて強そうなイメージがありますが、ギリシア神話の中では、ヘルクレスという勇者に退治されてしまう運命です。
3月にしし座、うみへび座、かに座という春の星座を「ヘルクレス被害者の会」としてご紹介しました(記事はコチラ)。ヘルクレスはギリシア神話きっての勇者で、化け物を退治したり、捕獲したり、黄金のリンゴを持ち帰ったりと大活躍し、これらが「12の功業」と呼ばれています。
その1つめの功業が化け獅子の退治(しし座)、2番目が、ヒドラ退治(うみへび座)です(ヒドラ退治の時に、ヒドラに加勢に来たカニが、一瞬にして踏みつぶされてしまいますが、これがかに座です)。11番目の功業とされるのが、黄金のリンゴを持ち帰ることです。このときリンゴの木を守っていた化けものがりゅう座になったのだと言われています。ギリシア神話では100の頭をもつラドンという名で登場します。
見どころは、同じ時間帯にヘルクレス座も北の空に昇り、りゅう座のすぐ上に並んでいることです。星座絵を見ると、ヘルクレスはたしかに、りゅうの頭を踏んづけています。
ギリシア神話きっての勇者ヘルクレスですが、明るい星がないので、星座としてはいまひとつパッとしません。それが6月上旬には上の図のように、ほぼ天頂で「どーだ」とばかりにポーズを取っています。
ヘルクレス座の見つけ方は、西側にあるうしかい座の1等星、オレンジ色に輝くアルクトゥールスと、東側に位置する、こと座の1等星、白く輝くベガが目印です。ふたつとも明るいので、町中でも見つけられます。このふたつの1等星の間で、ヘルクレスがりゅうをいじめている……図が想像できるでしょうか? 梅雨の晴れ間、ぜひ北の空を見上げてみてください!