5~6月の日照時間は16時間を超えるアラスカ。雪解けが終わると同時に、トレイルにたくさんの植物が芽を出しグングン成長します。活動的になるのは人も同じで、長い冬で閉じこもりがちだった体をハイキングでほぐします。
今回ご紹介するのは、この季節にうってつけの山菜狩り。ハイキングを楽しみながらいろんな春の味覚を集められる一石二鳥のアクティビティです。アラスカで定番の山菜や日本でもお馴染みの山菜などを、アラスカ流の食べ方と共にご紹介します。
さっそく見つけたのはコゴミ。英語ではフィドルヘッド(Fiddle head)と呼ばれ、バイオリンの先端の渦巻きの形と似ていることから名付けられました。少し陰ったところに群生しているので簡単に見つけることができますが、一日ですぐに大きくなってしまうので採るタイミングが重要です。あまり伸びたものより、まだ土から芽が出たての渦巻き状のところが柔らかくて美味しいのでそこを採るようにします。株からたくさん芽が出ていますが、全部採ってしまうと株が弱ってしまうので、一株から数個採るようにしましょう。
次はデビルズクラブの新芽。“悪魔の杖”の異名を持つ植物ですが、古くからネイティブアラスカンが万能薬として使用してきたハーブです。部分によって様々な使用法がありますが、今回は新芽を食用として採集。天ぷらにするとまるでタラの芽のようで美味しいんです。デビルズクラブはトゲに覆われているので、必ず厚手の手袋をつけて採ります。こちらも全ての新芽を採ってしまうと、木が弱ってしまうので、必ずいくつかの新芽は残すようにします。
次は日本でも北海道や高地に生息するヤナギラン。英語でファイアウィード(Fireweed)と呼ばれるのは、山火事の後にすぐに生える植物だからだそう。アラスカではどこでも見るお馴染みの植物で、お茶やハチミツなどに加工されて販売されています。英語でのもう一つの名前が“貧しい者のアスパラガス”(Poor Man’s Asparagus)、というもの。この時期に生える新芽の味に由来しています。
最後にご紹介するのは西洋イラクサ。日本にもイラクサがありますが種類は異なるそう。鉄分やビタミンなど栄養価が豊富なのでハーブティーにしたり、新芽をバターソテーにするのが主流です。こちらは春だけでなく夏過ぎまで収穫できますが、大きくなると虫がたくさんついたり、葉が硬くなってくるので早めに採るのがオススメです。小さなトゲがたくさんあるので、厚手の手袋をつけて採集します。
アラスカ流、山菜の食べ方
採った山菜は新鮮なうちに食べるのが一番!キャンプの時であれば、採れたてを揚げ物やソテーなどにしてすぐに楽しめるのが魅力ですよね。ここでは、定番の揚げ物を含めアラスカでよく食べられている調理法を簡単にご紹介します。
まずはコゴミ。アラスカでは長い冬に備えた保存食作りが盛んで、特にピクルスが人気です。なかでもコゴミのピクルスは付け合せやサラダのトッピングに重宝するのでよく作られています。
まずは水で洗いながら全体を覆っている鱗片と呼ばれる茶色の部分を落とします。沸騰した湯で30秒ほど茹でたら、煮沸した保存容器へ。そこにお好みのハーブやスパイス等を入れ煮立たせたピクルス液を入れるだけ。シャキっとした食感を長く楽しめます。
デビルズクラブの新芽もピクルスにして食べられますが、やはり一番は天ぷら!衣を厚手にフリッターにしても美味しく頂けます。新芽にも柔らかいトゲがついていますが、火を通せば気にならないのでご安心を。フキに似た爽やかな香りがあり、ホクホクとした食感が楽しめます。
ヤナギランの新芽は堅い根本を切り落としたら、あとはアスパラガスと同じような調理法ができます。一番シンプルなのがバターソテー。先に軽く湯がいてから炒めた方が美味しく頂けます。食感は少し粘りがありますが、味はアスパラガスに似ているのでキャンプ飯の副菜にピッタリですよ。ビタミンCとAが豊富なので、ハイカーは生のままかじって栄養補給にするそう。
ご紹介した山菜以外にも、アラスカには食べられる植物やハーブがたくさん!特に春はたくさんの植物が成長する時期なので、この時期にアラスカにいらした際にはぜひ山菜採りにチャレンジしてみてください。春のトレイルは冬眠していたクマも起き出すころなので、クマ除け鈴もお忘れなく!
アメリカ・アラスカ在住ライター(海外書き人クラブ)
2019年よりアメリカ・アラスカ州在住。猫と犬と一緒に、のんきでワイルドな日々を過ごしています。海外書き人クラブ会員https://www.kaigaikakibito.com/