横浜市泉区・戸塚区を拠点に生態調査や里山保全活動を行なっている“ご近所生きもの観察案内人”の相川健志さん。今回は、あの有名な童謡にも登場する昆虫の知られざる生態について案内します。
モグラのような特徴の昆虫
やなせたかし作詞の童謡「手のひらを太陽に」の1番の歌詞に登場する生きものといえば、ミミズ、オケラ、アメンボ。ミミズやアメンボはすぐにイメージが浮かぶと思いますが、「オケラ」がどんな生きものか、ご存じですか。
オケラの正式な名前は「ケラ」。「オ」は接頭語です。では、ケラは何者かというと、バッタやコオロギの仲間。日本では北海道から沖縄まで広く生息しています。
ケラは多くの時間を土の中で過ごします。モグラのような立派な前脚をしていて、これで地面に穴を掘って潜ります。ケラは英語で「Mole cricket(モグラコオロギ)」と呼ばれているのですが、それも納得の特徴です。
ケラは普段、田んぼの畦や畑、河川の土手などの地中で生活しているので、あまり目にすることはありません。ただ、春から初夏にかけての繁殖シーズンになると、地中以外でも活発に活動します。水中を泳いだり、空中を飛んだりと、興味深い生態を披露します。
しかも、この時期のケラのオスは「ジィ~」という独特の鳴き声を発します。耳を澄ませれば、地中から「ジィ~」という鳴き声が聞こえてくるかもしれません。
地中を潜り、空中を飛び、水中を泳ぐ、ケラ。いつもは地中にいて、なかなか出会う機会がありませんが、今の時期なら面白い生態のケラを目にすることができるかもしれません。近所の土手などで、目を凝らしたり耳を澄ませたりして、その様子を観察してみてください。