「子どもを昆虫採集に連れて行ってあげたい」と思うものの、具体的なやり方がわからず悩んでいる人は多いのではないでしょうか。昆虫採集に必要な準備や方法、注意点を解説します。マナーやルールを守って、楽しく昆虫採集をしましょう。
昆虫採集をするときの服装
昆虫採集に出かけるときの適切な服装を解説します。熱中症対策も重要ですが、安全面にも気を配る必要があります。
出かける前にしっかりと注意点を押さえておきましょう。
夏でも長袖・長ズボンが基本
昆虫採集に出かけるなら、夏でも長袖・長ズボンが基本です。虫に刺されたり、肌に触れるとかぶれたりする植物もあるので、肌の露出は極力控えるようにしましょう。
熱中症対策としても必需品である帽子は、ハチからの攻撃を予防する役割も担っています。頭髪や服などの黒い部分はハチを引き寄せやすいため、服装・帽子ともに色味のあるものを選ぶとよいでしょう。
また、靴は履き慣れた運動靴がおすすめです。山道を歩くなら、トレッキングシューズがあるとより歩きやすくなります。
さらに、水分補給のための飲み物や、万が一のときの非常食も持っていきましょう。けがをしたときのために、救急セットもあると安心です。
昆虫採集に必要な道具
昆虫採集に持っていくべき道具を紹介します。必需品とあると便利なグッズに分けて紹介するので、準備の参考にしましょう。
虫取り網・飼育ケース・軍手は必需品
『虫取り網』は、自分の体格に合ったものを選ぶようにしましょう。つい長いものに目が行きがちですが、子どもが使う場合は持て余してしまいます。長さ調整が可能な伸縮タイプであれば、きょうだいや親子で調整しながら使用することができます。
網は、捕まえる昆虫によって網目の細かさを変えるのがおすすめです。例えば、チョウを捕まえるときは、羽を傷つけないよう、網目が細かいものを使用します。
また、昆虫を生かしたままで持ち帰る場合は『飼育ケース』も必要です。昆虫にストレスがかからないように、中には枝や葉っぱなどの柔らかいものを入れておきます。
石をひっくり返すときや、カメムシなどの臭いのある昆虫を捕まえる際は『軍手』も必要です。
標本にするなら毒ビン
捕まえた昆虫を標本にしたい場合は、殺すための『毒ビン』も必要です。
ビンの中には、酢酸エチルを染み込ませた脱脂綿を入れておきます。酢酸エチルは昆虫を殺すだけでなく、ビン内に充満させることで虫体が腐るのを防ぐ効果があります。
酢酸エチルは薬局で入手が可能ですが、劇物に指定されているので扱いには注意が必要です。
毒ビンの素材によっては、酢酸エチルによって溶けてしまうため、素材にも気を配る必要があります。溶ける心配のないおすすめな素材は、ポリプロピレン(PP)です。
懐中電灯や三角紙・三角缶があると便利
懐中電灯は夜間に採集をする場合や、日中でも暗い木の洞を探索するときに役立ちます。三角紙や三角缶はチョウやトンボなど羽がある昆虫を採集するときに活躍します。
普通の飼育ケースの中に入れると、暴れて羽が破れる可能性があるので、三角紙に包み三角缶に入れて保管するのがおすすめです。
また、アリを始め小さな昆虫を捕まえるときは、手でつまむとつぶれてしまうため吸虫管を使うと便利です。
昆虫採集のやり方
昆虫採集をするときは、トラップを仕掛けて待つのが基本です。代表的なトラップを3つ紹介します。
バナナトラップ
蜜を作って昆虫を引き寄せるトラップです。材料はバナナ2~3本と焼酎2カップ、砂糖1カップです。作り方はバナナを皮ごと潰して、焼酎と砂糖を袋に入れてよく混ぜましょう。
混ぜ終わったら密閉したまま1〜2日置いて発酵させます。袋が膨らみ過ぎたら中の空気を抜きましょう。また、できた蜜はビンなどに移しておきます。
バナナトラップは木に塗るのもおすすめですが、ストッキングに入れてつるすとカブトムシなどが寄ってきやすく、より効果があります。ストッキングを使う場合は、後始末を忘れないようにしましょう。
ライトトラップ
虫が光に寄る習性を利用して採集する方法です。やり方は水銀とうや発電機、白幕を用意して夜間に昆虫が寄ってくるのをひたすら待つというシンプルなものです。
ライトを自前で作成できない場合は、街とうに寄ってくる昆虫を狙うこともできます。
住宅街にある街灯ではなく、雑木林に近く、ポツンと立っている街とうの方が昆虫が寄ってきやすいのでおすすめです。
ベイトトラップ
カップを地中に埋めて、落とし穴を作る方法です。昆虫をおびき寄せるために、カップには蜜を入れておきましょう。
ベイトトラップは、地上を歩く虫に効果的です。具体的には、オサムシ・ゴミムシ・シデムシ・ハネカクシ・アリを捕まえるのに適しています。
上手に採集するには、トラップを1カ所だけでなく、1m程度の間隔を空けて複数カ所に仕掛けることがポイントです。
また、地面と同じ高さにするのも重要です。採集後は、後始末をきちんとしましょう。
標本の作り方
標本を作るときは、まずは酢酸エチルを充満させた毒ビンに入れて昆虫を殺します。昆虫が暴れて虫体が損傷しないように、採集後はなるべく早く殺しましょう。
薬品は酢酸エチルを用いるのが一般的ですが、変色を避けるために亜硫酸ガスを用いても問題はありません。
どちらの薬品も取り扱いには注意が必要です。特に子どもに標本を作らせる場合は、目を離さないようにしましょう。
また、標本にするときは、体に針を刺して乾燥標本にするのが一般的です。
研究のために多くの標本を作るなら、最低でも採集日と場所を記載したラベルを貼りましょう。整理するときにデータが混ざらずに済みます。
採集禁止のエリアや昆虫に注意
昆虫採集に出かけるときは、採集禁止のエリアや昆虫に注意する必要があります。うっかりルール違反をしないように、事前知識として把握しておきましょう。
都内で昆虫採集が禁止されているエリア
基本的に、官営の公園では昆虫採集が禁止されている場合がほとんどです。官営の公園に出かける場合は、HPで規約をチェックしておきましょう。
特に、秩父多摩甲斐国立公園は『特別保護地区』が多くあり、昆虫採集が法律で完全に禁止されているため注意が必要です。
特別保護地区の外でも、第一種特別地域、第二種特別地域、第三種特別地域では木竹の損傷や土石の採取が禁止されています。昆虫採集にあたり、これらの行為を伴うのもNGです。
環境省_国立公園_秩父多摩甲斐国立公園
参考:自然公園法 | e-Gov法令検索
採集が禁止されている昆虫
種類によっては、採集が禁止されている昆虫があります。地域を問わず採集が禁止されているものと、特定の地域での採集が禁止されているものに分けられます。
採集禁止の昆虫は環境省や各自治体から発表があるので、出かける前にチェックしておきましょう。
なお、採集が禁止されている昆虫を調べたい場合は、環境省の『レッドリスト』を参照します。絶滅が危惧されている動植物リストで、国際的に保護の対象になっています。
まとめ
昆虫採集を行なう際は、事前の準備が大切です。安全や法律に関する注意点もあるので、よく調べてから現地に向かうようにしましょう。
服装は、夏でも薄手の長袖・長ズボンを着用するのがおすすめです。できるだけ肌の露出を抑えて、けがや虫刺されを予防しましょう。
必要な道具については、虫取り網と飼育ケース、軍手は必需品といえます。標本にする場合は毒ビン、あとは捕まえる昆虫によって三角紙や吸虫管を持っていきましょう。
代表的なトラップは3種類ありますが、木や地面に仕掛けるものは後片付けを怠らないことが大切です。地域によっては昆虫採集が禁止されている場所や、採集NGの昆虫もあるので、うっかりルール違反をしないよう注意しながら昆虫採集を楽しみましょう。
監修/奥山英二