テントを芸術品の域にまで高めた 天才ファブリックアーティスト 『Bill Moss』とは!?
“A tent to me is a piece of sculpture you can get into.”(私にとってテントは、人が中に入ることのできる彫刻である。)
とは、1980年代を中心に従来にはなかった美しいフォルムのテントやタープを創造し続けた芸術家、ビル・モスの言葉だ。文字どおり、彼がデザインしたテントは芸術性にあふれ、しかも機能的であることから、〝機能美〟の象徴として本誌でも何度も取り上げてきた。
1923年、デトロイトに生まれたビルは大学で彫塑を学び、あるとき、自作したドームの壁(立体的なキャンバス)に絵を描くという新しい試みをしていた。それを見に来た人が、
「これは、美術であると同時にテントでもある」──と叫んだというのだ。’55年のこの出来事をきっかけとして、ビルは〝テント芸術〟へとのめり込み、同年にはドームテントの先駆けとして知られる「ポップテント」を発明。これは世界ではじめてグラスファイバー・ポールを使ったもので、それまであったどのテントよりも機能的だった。
そして’75年、ビルは当時の妻マリリンとともに「モステントワークス」を立ち上げ、2000年代初頭にブランドが消滅するまで、多くの芸術的な機能美テントをリリースし続けた。
そして昨年、新たに「モスジャパン」が発足し、往年の名作モデルが続々と復刻されている。日本国内生産にはなったものの、
「窓の外を見てごらん。人間が手を加えた場所以外に、直線が存在する環境なんてないだろう? だいたい直線は自然の法則に合わないんだよ」──という、曲面と曲線を愛したビルの思い入れは、復刻モデルにもしっかり込められている。
モス/トリリウム
¥369,600
※構成/坂本りえ 撮影/永易量行 ●問い合わせ先/モスジャパン shop@mosstents.net
(BE-PAL 2022年6月号より)