日本一周を単独で漕破し、20か国の海を旅してきた平田毅さんが語る「五感で感じる自然の鼓動」
探検家・関野吉晴さんが、時代に風穴を開けるような「現代の冒険者たち」に会いに行き、徹底的に話を訊き、現代における冒険の存在意義を問い直す──BE-PAL7月号掲載の連載第12回目は、シーカヤックで日本一周を漕破し、20か国の海を旅してきた平田毅さんです。
「現代の冒険とは、自然との調和を探求することだ」という平田さんはシーカヤックの魅力についてどんなことばを紡ぎ出すのか、関野さんが迫ります。その対談の一部をご紹介します。
関野吉晴/せきの・よしはる
1949年東京都生まれ。探検家、医師、武蔵野美術大学名誉教授(文化人類学)。一橋大学在学中に探検部を創設し、アマゾン川源流などでの長期滞在、「グレートジャーニー」、日本列島にやってきた人びとのルートを辿る「新グレートジャーニー」などの探検を行なう。
平田毅/ひらた・つよし
1970年兵庫県生まれ。日本一周のほか、世界20か国の海をシーカヤックで旅してきた海洋冒険家。和歌山県湯浅町のアウトドアサービス『アイランドストリーム』代表。著書に、『インスピレーションは波間から』(めるくまーる)、『海がたり 黒潮ストリート』(ぷねうま舎)。
シーカヤックは乗るものではなく、履くものです
関野 シーカヤックはひとりで始めたのですか?
平田 スクールやツアーがまだ身近にほとんどない時代でしたので、中古のシーカヤックを琵琶湖畔にあるショップで買って、誰にも教わらずにいきなりひとりで海に出ました。
関野 ひとりで怖くなかったですか?
平田 怖かったです。いま穏やかでも5分後10分後に急に風が吹くかもしれないし、海が荒れるかもしれない。そうなったらひっくり返されることは目に見えていました。でも、怖いからこそ風や波…自然の鼓動を五感でより深くリアルに感じられました。
関野 著書『インスピレーションは波間から』では、「カヤックを履く」と表現されています。カヤックが自分の身体の一部になるという感覚は最初からあったのですか?
平田 乗りものではなく履くものだという感覚は最初からありました。靴やズボンなど身体に一体化するものは「履く」と表現しますけれど、まさに下半身に海用の靴あるいはズボンを履いているように感じました。怖さとともに魅力も覚えた僕は、きちんと勉強しないといけないと思い、アメリカからビデオを取り寄せてテクニックを学び、海の気象を読むために気象予報士資格取得の勉強までしました。
関野 夢中になったんですね。
平田 さらに何度も海に漕ぎ出すうちに、シーカヤックに音楽的な感覚を感じられるようになっていきました。僕は学生時代に音楽活動をしていて、ブルースギターを弾いていました。その演奏している感覚をシーカヤックで久しぶりに思い出したんです。波はリズム、ビートで、波と波があわさってできるうねりがグルーヴ。そんな波のリズムとうねりのグルーヴの中でカヤックを漕ぐのは、まるで楽器を演奏しているかのようなんです。カヤックを履いて海に漕ぎ出すと、自然の鼓動をリアルに体感でき、自然の奏でる音楽とシンクロできる――そんなシーカヤックをとことん突き詰めたいと思うようになりました。
この続きは、発売中のBE-PAL7月号に掲載!
公式YouTubeで対談の一部を配信中!
以下の動画で、誌面に掲載しきれなかったこぼれ話をお楽しみください。