1931年創業の「つるや釣具店」オーナーで、釣り歴55年の山城良介さんがフライフィッシングの深くて楽しい世界を案内します。今回は、フライフィッシングの醍醐味であるキャスティングについて語ります。
フライを目的のポイントに飛ばすキャスティング
フライフィッシングはフライライン(糸)の重さで、ロッドに負荷をかけてフライ(毛鉤)を目的のポイントに飛ばして行なうが、これをフライキャスティングという。
フライフィッシングの醍醐味はキャスティングにあり、といっても過言ではない。フライラインは釣り糸だが、飛ばすための錘(重り)の役目もするのだ。
日本には古くからテンカラ釣りという毛鉤を使った釣りがあるが、これはラインの長さのコントロールをすることなく、ある一定の長さのラインで毛鉤を飛ばす。
一方、フライフィッシングは目の前のポイントから30メートル以上も先まで、そのラインを必要に応じて操りフライを飛ばすのが特徴だ。
フライラインを目的のポイントに投げてターゲットの魚をしとめるフライフィッシングを楽しむためには、ラインをコントロールできるようにキャスティングの練習は最も大切だといえる。まず、グリップの握り方から説明しよう。
3種類のグリップの握り方を学ぼう
ロッドの握る部分であるグリップは、コルクのブロックをつなぎ合わせて削り出して作られている。主なグリップの握り方は次の3通り。
サム・オン・トップ
最も多く使われていて、親指をグリップの上に乗せる握り方。
Vグリップ
親指と人差し指をグリップのサイドに沿わせる握り方で、遠投用に多用される。
インデックス・フィンガー
人差し指をグリップ上に乗せる握り方で、ショートレンジの釣り向き。
キャスティングの練習は広い場所でやろう
キャスティングはラインを前後に飛ばすので、通行人に迷惑にならない広い場所が好ましい。河川敷や池など水がある場所は、ラインにテンションがかかってより投げやすくなるうえに、ラインの痛みも少ない。
ラインの先には必ずリーダーを結び、ラインの長さは使うロッドの3倍くらいが目安。つまり、ロッドが8フィート(約2.4m)であれば、7mほどをロッドティップ(竿の先近く)から出す。初めての場合はサム・オン・トップのグリップが良いだろう。
キャスティングの基本動作
キャスティングの基本動作は、まずロッドティップをやや下に向け、手首と肘と肩を使い、ラインを上に突き上げるように跳ね上げる。ロッドのグリップが頭の高さに来た時に動きを止めるように意識する。これがバックキャスト(後方)で、フォワードキャスト(前方)に移る。フォーワードキャストはロッドティップが時計の針の10時くらいで止めるようにする。
遠くに飛ばすには「止める」動作が大事
バックとフォワードの動作では「止める」ことが大事だが、勢い良く止めるとロッドにバイブレーションが起き、ラインがスムースに移動しないので、ここはスムースな動作が必要だ。この一連の動作を繰り返すのだが、ほぼ100人中100人が手首と腕だけで投げてしまい、ラインは弧を描いて、前にも後ろにも飛ばない結果になる。
手首、肘、肩の使い方をYouTubeでチェック
キャスティングの動作は言葉で説明しても分かりにくいので、百聞は一見に如かず、YouTubeでフライキャスティングの入門編を検索して見るといいだろう。その時、飛んでいるラインを見るのではなく、手首や肘、肩の使い方、ロッドの止め方を見ることが大切だ。
練習の結果、前後にラインにループが出来て5~6mほど飛ばせるようになれば、渓流の管理釣り場であれば魚を釣り上げることが出来るはずだ。
【参考動画】
フライフィッシング入門#004フライキャスティング(投げ方)の仕組み/Tiemco Fly Fishing JP/ティムコ フライフィッシング
いざ実戦!管理釣り場での釣り方
練習後、まず最初は管理釣り場に行くのがおすすめだ。管理釣り場は、ある一定の区間の川や池を区切って魚を放流しているので、たくさんの魚が見ることができる。
季節によって違いがあるが、ある魚は活発に水面の虫を食べるために跳ね、別の魚は水中に流れてくるものを追っている。そのような活性の高い魚に狙いを絞ってフライをキャストしてみよう。
ビギナーはまずドライフライを使ってみよう。フライを視覚で捉えることができ、より自然に流す練習になる。フライを狙い水面を割って飛び出す魚の迫力は他の釣りでは味わえないものだ。
【参考記事】老舗釣具店主が伝授!フライフィッシング初心者にオススメの釣り場情報
自然河川での釣りは準備が大切
自然河川へのアプローチは分かりにくいことが多いので、友人や知人と一緒に行くのがいいだろう。あるいは、フライフィッシングショップやディーラー主催のスクールに参加するのも良いだろう。
また、キャンプや旅行の際にフライフィッシングをやってみたい場合は、あらかじめガイドブックを入手したり、各県の渓流釣り場案内を検索しておくことが大切だ。
自然河川と管理釣り場との大きな違いは、魚の見え方にある。自然河川では魚は岩陰に隠れ、水に同化していて見えないことがほとんどだ。見えないからといって、むやみにポイントと思う場所に近付かないこと。
自然河川のヤマメやイワナは、管理釣り場のように簡単には釣れないからこそ、釣れた場合の感激はひとしおだ。
初心者から上級者まで、それぞれの技術に応じたアイテムから季節に応じた釣り場情報まで丁寧に伝授。