荷物は軽くコンパクトに、と考えていても、ビギナーはあれこれと余計にもっていきがち。そこでアメリカの広大なトレイルを走破した経験をもつ土屋智哉さんに、ULスタイルを見せてもらった。
沢泊まりキャンプの魅力とは?
軽量な道具を選ぶことで装備全体を軽量化し、行動中の自由度を高めるウルトラライトハイキング。その技術を紹介してきた土屋智哉さんにとって、渓流でのキャンプはアウトドアの原初を感じる遊びだという。
「北米のジョン・ミューア・トレイルには、シエラネバダをくまなく歩いたジョン・ミューアの名前が冠されていますが、彼が実際に歩いたのはトレイルがつく前の山です。どんな有名トレイルも、道ができる前には道を開拓する段階がある。道がない渓流を辿りながら、越えやすい場所を探して進んでいくのは、トレイル開通以前のハイキングに通じる創造性がありますね」
道がないからこそおもしろいが、難易度はそれほど重要ではない、と土屋さんはいう。
「私も若いころは道具と技術を駆使しましたが、あるとき技術的に難しくなくても自然は楽しめると気がついた。野営しても環境負荷が小さい場所を探したり、毛鉤を振ったり、あるいはコーヒーを淹れるだけでも、歩く旅は豊かになる。総合的な自然体験をできることが、沢泊まりキャンプの魅力でしょうか」
これで十分! 1泊2日沢泊まりキャンプは全部で3.5kg!
使う道具もほどよく力が抜けている。釣りの道具はすべて合わせても100g足らずで、特別な装備は使わない。山に泊まるための道具もコンパクトだ。
「滑りやすい水辺を歩くので足元こそ沢タビを履きますが、それ以外はふだんのハイキングと変わらない。むしろ、焚き火をできる沢だから火器類は最低限で済む。食料も家で食べているものをそのまま持ち出しています。前の晩に山行を思いついても、用意ができますね」
身軽にアプローチ
「道なき道」がおもしろい
難所は巻いて越える
道を決めるのは自分自身
コツを知って快適に!「ハンモック」
特徴的な装備がハンモックだ。土屋さんは、沢こそハンモックが活躍するという。
「沢沿いは不整地が多くて地面も湿っている。しかし立ち木は多い。こんな場所で眠るならハンモックが最適。テントと比べて軽くコンパクトなのもいい」
釣り、焚き火、ハイキング、野営……。いくつもの遊びを組み合わせれば、どれかが成立しないときもほかの要素を楽しめる、と土屋さん。
「ひとつの遊びに凝るのもいいけど、複数の遊びを併行すると余裕が出る。沢キャンプは自由な野営の理想形のひとつです」
雨が降ったらタープをかける
チューブ型キルトで暖かく眠る
軽量優雅! 和式毛鉤釣り「テンカラ」
小さな焚き火で沢ごはん
BE-PAL的 ACTIVE POINT
1 軽い荷物で自由度を高める
2 多彩な遊びをクロスオーバー
3 ラクはしても本質ははずさない
※構成/藤原祥弘 撮影/矢島慎一
(BE-PAL 2022年6月号より)