シンガーソングライター東田トモヒロさんの今回のお話しは、サーフィンです。長年波乗りを愛する東田さん。これからサーフィンを始めてみたい! という方に贈るメッセージでもあります。季節はもう夏間近、青い海が呼んでいます。
コロナ禍で第三次サーフィンブームの到来!?
皆さん、少しどころかかなりその湿り気が鬱陶しい梅雨の季節となりましたが、お変わりなく元気にお過ごしでしょうか。
東田トモヒロです。
さてさて、今回はいよいよ本業であるサーフィンについて少しばかりお話ししようかと思います。ってか本業は音楽だろって話もありますが、僕にとってはどちらも大切なもので、つい。
なんでも日本においては、今がまさに第三次のサーフィンブームだそうでございますが、そう言われて海の方に目をやりますとね、なるほど時と場合によってはサーフポイントがかなり混雑していますから、確かにそんな気がしないでもありません。稚拙な分析ですが、これもコロナ社会ってものが人々の目線をアウトドアに向かわせた副産物かもしれませんね。いずれにしても戸外に足が向くというのは決して悪いことではないのでね、コロナ現象もマイナスばかりではなかったってね、思います。
本稿ではそんな中、新しくサーフィンを始めた方に、あるいはこれからやってみようかなんて考えていらっしゃる方に向けて、僭越ながらいくつかアドバイス的なものをお届けしてまいりますね。
初心者さんには高浮力のボードがオススメ
まずはサーフボード。
これに関しては僕がサーフィンを始めた’90年代より現在の方がその選択肢において圧倒的にアドバンテージがありますよ、ホント。本質的なところは変わりませんが、素材や形状に関してはエントリーに適したものが随分と増えたように思います。
スポンジ、あるいはエポキシと呼ばれるソフトボードの類がそれに当たりますね。
サーフィンではサーフボードと自分自身、あるいは自分のサーフボードと他者との接触による事故が起こり得ますが、その時における惨事のリスクを避ける上でもソフトボードは有効と言えます。
僕も一本ソフトボードを所有していますが、こちらは初心者から上級者まで楽しむことができるモデルです。このようにエントリーに最適なものから、わりとサイズのある波にトライできる本格的な物までグラデーションしているようですのでね、迷っちゃうかもしれませんが。
そしてこのソフトボードや初心者向けのボードを経て、いわゆるシェイパーと呼ばれる職人さんたちが制作するボードに、いつかたどり着いていただきたいと心底思います。
僕はありがたいことに、これまで何人ものシェイパーの方々に出会い、それぞれが作られたサーフボードを幾度となく試させていただいてきましたが、まあもうこれ大量生産の工業製品とはものが違いますのでね、ギターの一本一本と同じようにそれぞれ個性的で趣があるのです。
なんかこう作り手の魂が刻まれていますのでね、テイクオフ(波に乗る)してからの、いやもうパドルしている時から伝わってくる熱いものが感じられます。この世界を知ってしまったらもう後戻りはできません。既製品のボードでスタートされたとしても、ぜひいつかご自分のオリジナルボードをオーダーされてみてくださいね、イケてるシェイパーさんか、サーフショップのオーナーさんに。あー、語ってるだけでワクワクして来ます。
それからソフトボードでもそれ以外のボードにしても、初心者さんは基本的にある程度「長さ」も「幅」も「厚み」もある、いわゆる浮力の高いボードをチョイスされた方が賢明かと思います。まずはテイクオフしてボードの上に立つ感覚を知ることが、明るい未来への第一歩なのでね。最初のうちは、ロングボードかそれに近い形状のものが良いでしょう。
海水は意外と低い。体を冷やさないためのウェットスーツ
次にウエットスーツね。これからの季節、僕が自信を持ってお勧めするのが、ロングジョンとタッパーです。タッパーはフロントジップのジャケットを選びましょう。ショットのシングルライダースの革ジャンを着こなす雰囲気でね、少しカッコつけてください。その昔、「海に入るまでが勝負」というオシャレ重視の僕のサーファーの先輩が、浜辺の駐車場で残した名言を思い出します。
それからノースリーブに長ズボンというスタイルのロングジョン。こちらはかつて僕らは「魚屋」と呼んでいました。実際の魚屋さんでこんな格好している人を見たことありませんけどね。ゴム長に黒いビニールエプロンみたいな、粋な魚屋さんのイメージが似てなくもないからかも。
もちろんインドネシアやスリランカに行った時や、あるいはもっと若い頃なんかはトランクス一枚で海に入るのが何よりも気持ちよかったものですが、サーフィンの1ラウンドって場合によっては二時間以上の長時間に及ぶこともあります。あまり体を冷やさないようにしたいという意味で、僕はこと日本においては真夏の暑い日でも、このロングジョンで入るようにしています。
海水温は日本の場合27度Cより上がることはほとんどないと思います。つまり浸かっている海水は体温よりも10度Cくらいか、あるいはそれ以上は常に低いわけでね。海に入っている間、体の熱は奪われていることになりますから、ロングジョンは低体温を防ぐ上でかなり有効かと思いますので、お勧めしたいアイテムのひとつです。
そしてこのロングジョンの上にタッパーを着れば、春秋の肌寒いシーズンをも網羅できますよ。これに加えて、真冬でもいけちゃうセミドライスーツ、そしてトランクスをそれぞれゲットしていただければ完了です。一年を通してサーフィンを楽しんでいただけます、はい。
特に最近のセミドライスーツの進化はめざましいものがあります。かつてに比べて素材も随分と柔らかくなっていて、脱ぎ着がしやすい。昔は脱ぐだけで半日ぶんのエネルギー消費してるんじゃないかと思うほどでしたが。今や薄くても割とあったかいので、厚み3ミリの起毛というパターンが僕は気に入っています。
海に入ると自然と環境を意識するようになる
例えばパタゴニアがリリースしているやつに至っては契約農家の天然ゴム製で、環境や生産者及び製造者への配慮もなされている。自然を愛するスポーツですから、そこら辺をメッセージするメーカーをフォローするのもより良い選択だと言えるでしょう。
サーフボードにゴリゴリと塗るワックスなんかも、植物性のものがあったりして多種多様です。海に入るようになると環境問題に対しても敏感になりますし、普段の生活にもそれがいい具合に反映されて、小さなことから実践する機会が増えるかもしれません。
僕は波乗りを始めて以来、自宅や旅先で使う洗剤の類の全てを、環境負荷の小さい植物性のものや、オーガニックのものに切り替えました。一時期は洗剤を全く使わないという時もありましたけど。
そのほかサーフハットなんかも色々とありますが、僕が愛用しているのはサーフライダーファウンデーションから発売されているモデルです。軽やかで丈夫でデザインもイケてます。大きな波に飲み込まれても顎で二重にグリップされていますから、紛失することもなく安心です。熱中症対策に是非チェックしてみて下さい。
横乗りは横のつながりが大事
そして何よりもお勧めしたいのはサーフショップあるいはサーファーとのつながりですね。気の合うお知り合いの中にサーファーの方がいらっしゃったら、まずはその人と一緒に海に行けば、最良な道が開けるかと思います。なんせ横乗りは横のつながりで出来ていますので。
僕も初めて友人に海に連れて行ってもらった時のことを、今でもなんとなく覚えています。
彼からボロッボロの擦り切れたウエットスーツに、バッキバキにとんがったペラペラに薄いショートボード(今思うと初心者では逆立ちしても乗れないような、いや、逆立ちならなおさら乗れるわけない)を借りてね、一緒に海に入りました。
あとあれは何なのでしょうね。サーファーって、そこにいい波があれば他のことには気が払えなくなるのでしょうか、その友人は初心者の僕を置いてけぼりにしてどんどん沖へと出ていく、ゲッティングアウトしてくんですよね。僕が女の子だったら態度違ったんだろうなぁ、たぶん。
そっから先はもう見よう見まねで、波と海と格闘するしかありません。ただただ一か月近く海に通っては、ほとんど波にもみくちゃにされる、わざわざ海に溺れに行く日々が続きましたが…。
しかし今振り返ると、あの無情な経験を得られて本当に良かったと思います。海、波という大いなる自然の力の前に、己の小ささを知る。しかし小さき自分でも、その力量をわきまえ、自然の息吹を感じてそれを読み取ることができた時に、初めて一本の波と調和することができる。たとえそれが一瞬の出来事だとしても、至福の喜びを味わうことができるのですから、やはり波乗りは音楽と同じくらい偉大な人類の発明です。
少し大袈裟なこと言いましたけれど、そのくらい感動できるものがありますよ、サーフィンには。
先達に学ぶのも方法のひとつ
ソングライティングやギターを独学で実践したように、サーフィンも独学というか独自の道を進んでまいりましたが、最近ふとね、スクールやレッスンってのも悪くないなと思いました。というのも、やはり自分より少し先を走ってる人、自分よりも圧倒的に達者な人の近くにいてプレイするのが、最短距離で上手くなりますからね、これ本当に。
先日、宮崎の小倉が浜というビーチでね、そこにまさにサーフショップを構えている友人のプロサーファーのJ氏と一緒に海に入る機会に恵まれたのですが、プロの波乗りを間近で見たり、何気なく受け取った言葉の中に達人からのアドバイス的なメッセージがあったりと、実に刺激的でした。ですからある程度波に乗れるようになった時に、中上級者向けのレッスンに加わるのも悪くないかも知れないなと思ったわけです。
何ごとも慣れた頃に失敗や事故に見舞われやすいものですし、他者から学ばずに思い込みだけで物事を進めていると、よからぬ方向に一直線なんてこともありますからね、お互いに気をつけたいものです、はい。
そしてあえて申し上げるまでもありませんが、陸の上ほどではないにしても、海の上にはサーファー同士の間で、これまでの経験と教訓によって培われたさまざまなルールやマナーが存在します。
ポイントによっては、ローカルルールなども尊重されるべきものとして存在します。乗り物に乗っている以上はね、そこら辺は最もおろそかに出来ないところですよね。楽しむってことはまさにそこからスタートしますので。ここではあえて細かく言及致しませんが、海に入る前に基本的なマナーは頭に入れておきたいものです。愛と平和の名のもとにね。
それから私事ですが、7月の10日に静岡のウェイブプールで開催されるパラサーフィンフェスタに参加して、ライブをします。今回僕は縁あってその大会のテーマソングを作りました。
パラサーファーの姿は、間近で見ると本当に心を動かされます。ご興味のある方は是非お越しください。
とにかく、海を愛する方が一人でも増えることは、この世界の平和にとって素晴らしいことだと思います。あなたも「横乗り」始めてみませんか。
今月のおすすめアウトドアミュージック
ジャクソン・ブラウン「Jamaica say you will 」
いい波に乗れたアフターサーフィン。帰りの車の中でかけたいおすすめの一曲。
東田トモヒロNEWS
サブスクリプションコミュニティTSC(Tomo Surf Club)
シンガーソングライター東田トモヒロとつくる、持続可能な音楽のコミュニティです。
月額制のサブスクリプションで、独自の配信ライブや、インターネットラジオ配信等いくつかのオリジナルコンテンツを用意して、みなさんとコミュニケーションを図っています。ぜひご参加ください。
https://community.camp-fire.jp/projects/view/338326
2022年7月10日に開催される一般社団法人ユニバ主催「第一回 静波パラサーフィンフェスタ」のテーマソング『Let you release』を提供。
ユニバが企画するGOLD PROJECT(パラスポーツの発展と魅力を発信)第2弾として、サーフィンをこよなく愛し「LOVE & FREEDOM」を発信し続ける東田トモヒロが同企画に賛同しこの曲が生まれた。 心地よい海風を感じさせる爽快なサーフ・ミュージックへと仕上がった本楽曲は、自分自身を開放し大海原へと挑戦する全てのサーファー達への応援ソングとなっている。