バーナー選びで失敗しないために
キャンプ用の燃焼器具で、最もオーソドックスなのがガスバーナーです。
ガスバーナーは大きく分けると「CB缶用」と「OD缶用」の2種類があります。
この2つのバーナーの特徴や違いを押さえておかないと、自分に合わないものを買ってしまうことになりかねません。
そこで今回は、
- CB缶とOD缶の違い
- 初心者が自分に合ったバーナーを選ぶポイント
についてわかりやすく解説していきます。
そもそもCB缶・OD缶とは?
CB缶のCBは「Cassette Gas Bombe(カセットガスボンベ)」の略。
家庭用のカセットコンロにも使われるガス缶で、キャンプ未経験者にもなじみのある形だと思います。
一方、OD缶のODは「OutDoor(アウトドア)」の略。
名前のとおりアウトドア用に作られたガス缶で、屋外での使用に向いた性能を備えています。
2つのガス缶の具体的な違いについては、バーナーの比較と絡めて解説していきます。
CB缶とOD缶の違い
2つのバーナーの違いについて、下の表にまとめました。メーカーの公式発表や、筆者が実際に利用する中で感じたことなどを元に評価をつけています。
CB缶 | OD缶 | |
耐寒性 | △ | ◯ |
ランニングコスト | ◯ | △ |
コンパクト性 | △ | ◯ |
燃料の入手し易さ | ◯ | △ |
1つずつ見ていきましょう。
耐寒性
耐寒性は言い換えると「どのくらい寒い場所で使えるか?」ということです。
こちらに関しては、アウトドアユースを前提としているOD缶の方が優秀。具体的にどのくらい違うかはどのメーカーのガスを使うかにもよります。CB缶とOD缶の実際の製品を比較したのが下の表です。
製品名 | 缶のタイプ | 使用可能温度 |
イワタニ カセットガス |
CB缶 | 10度C〜 |
イワタニ カセットガスパワーゴールド |
CB缶 | 5度C〜 |
IWATANI PRIMUS ノーマルガス |
OD缶 | 5度C〜 |
IWATANI PRIMUS ハイパワーガス |
OD缶 | 0度C〜 |
使用温度を下回ると、ガス缶の中の燃料が液体から気化できず、火が弱くなったり着火できなくなります。つまり「ガス缶の耐寒性が高い」というのは「より低い温度でも気化できる燃料が充填されている」ということです。
春夏秋はさほど問題になりませんが、晩秋〜冬にキャンプをするならおさえておくべきポイントです。
また、通常より耐寒性を高めたCB缶を「パワーガス」などの名称で販売しているメーカーもあります(上表の「イワタニカセットガスパワーゴールド」もその1つです)。ただ、パワーガスのCB缶であっても、オールシーズン対応のOD缶(上表でいうとIWATANI PRIMUS ハイパワーガス)の耐寒性には劣ることが多いです。
ランニングコスト
OD缶の方がCB缶より価格は高いです。理由の1つとして、耐寒性の高いガスの方が高価であることが挙げられます。
メーカーによっては、中身を耐寒性の低いガスにして価格をおさえた春夏秋用のOD缶も販売しています(ノーマルガス、レギュラーガスなどの名称で販売)。
しかし、基本的にはノーマルガスのOD缶でもCB缶より価格は高いです。
下表はOD缶とCB缶の価格を比較したものです。
商品名 | 種類 | 内容量 | 価格/1本 |
イワタニカセットガス | CB缶 | 250g | 440円 |
イワタニカセットガスパワーゴールド | CB缶 | 250g | 568円 |
IWATANI PRIMUS ノーマルガス | OD缶 | 230g | 550円 |
IWATANI PRIMUS ハイパワーガス | OD缶 | 225g | 715円 |
※メーカー小売希望価格を表記していますが、店頭価格ではCB缶とOD缶の価格差はさらに大きい傾向があります。
このように、基本的にCB缶とOD缶を比較するとCB缶の方が安価です。よって、燃料のランニングコストはCB缶の方が優れています。
コンパクト性
形状的に、縦長のCB缶よりOD缶の方がバックパックへの収納性は高いです。また、OD缶は丸型の鍋などのクッカーにも収納(スタッキング)できるので、その意味でも携帯性に優れています。CB缶にはコンパクト性に長けたショートタイプもありますが、容量はその分少なくなりますね。
バーナー自体のコンパクトさも、OD缶用は登山などで持ち運びしやすいようコンパクトなものが多いです。ただ、五徳が小さくなり、大きめのクッカーを置いたときの安定性に欠けるので注意が必要です。
燃料の入手し易さ
CB缶はホームセンターやアウトドアショップはもちろん、コンビニで買える事もあります。
対してOD缶はコンビニにはまずありません。ホームセンターに置いている事もありますが、品揃えはそこまで期待できません。主な入手ルートはアウトドアショップ、あるいはネットになります。
ネットで何でも手に入る時代なので、通常のキャンプを楽しむ分には“入手のし易さ”はそこまで問題になりません。
しかし、以下のようなケースでは、キャンプ場に着いた後にガス缶を入手する必要がでてきます。
- ガス缶を忘れた・紛失した
- ガス缶の不具合で火が着かない
- 連泊でガスを大量に使う
- 飛行機を使う(ガス缶は預け入れも持ち込みもNGです)
キャンプ場の周辺にコンビニやホームセンターがある事は多いので、CB缶は比較的手に入ります。
しかし、アウトドアショップがあるケースは決して多いとはいえないので、OD缶は入手困難だといえます。
自分に合ったバーナーの選び方
結論から言うと、ほとんどの初心者キャンパーにはCB缶がオススメです。
以下のような“OD缶用バーナーの方が向いてる一部の人”以外は、CB缶が向いていると思います。
- 既に氷点下でキャンプすると決めている人
- 高山や冬山の登山もする予定がある人
- ランニングコストよりとにかくコンパクト性を重要視する人
その上で、どのようなバーナーを選べばいいかを解説します。
最初に考えるべきは耐寒性
せっかく買ったバーナーも使えなければ意味がありません。そのため、まず考えるべきは「使用可能温度=耐寒性」です。
氷点下の環境で使用する場合は、OD缶が必須になります。
ただ、キャンプ初心者の段階では、「厳しい寒さの中でもキャンプをしたいと思うか」はまだわからないと思います。
経験を積む中で冬キャンプをやりたいと思ったら、その時に改めて買い替える、もしくは買い足すという選択肢もあります。
また寒冷地でキャンプをする場合であっても、前項で触れたパワーガスを使えばCB缶でも耐寒性を上げる事が可能です。メーカーによってはCB缶に特殊な細工を施すことで耐寒性を上げている製品もあります(例えば、マイクロレギュレーターを搭載したSOTOのST-310やST-340など)。
著者の経験でいうと、上記のST-310にSOTOのパワーガス ST-760を用いることで、メーカの公式発表通り外気温5度C前後の環境下で問題なく使用できました。CB缶バーナーであってもこのレベルまでは耐寒性を高める事ができます。
前述のとおり氷点下で使うならOD缶しか選択肢はありませんが、5度C前後までの使用ならCB缶バーナーも選択肢に残ります。よってその場合は他の3つの特徴も踏まえて決めることになります。
その後に残りの3つの違いを吟味する
コンパクト性は優れているに越した事はありません。ですが、バックパック1つの徒歩キャンプや登山用途で限界まで荷物をコンパクトにしたい人以外は問題にならない差だと思います。
ランニングコストの安さは、キャンプに行く頻度が高い程メリットが大きくなります。著者のように、家でもバーナーを使う場合はさらに影響が強くなりますね。
耐寒性で選択肢を絞れない人は、このコンパクト性とランニングコストを秤にかけて決めればいいと思います。
上記2つに比べれば「燃料の入手しやすさ」はそこまで重視しなくていいでしょう。ただ、ここまでの3つのポイントを熟慮しても選択肢が絞れないときは、これを最後の判断材料にするといいのではないでしょうか。
この記事で解説した2つのバーナーの特徴をしっかり理解し、自分の用途に合うバーナーを選んで頂ければと思います!