バキッ! ゴリゴリ、ガツッ! 知床半島の山中深く、車幅よりも狭い林道を進むのは、ヒグマ猟師・久保俊治さんのランドクルーザー。
「だってランクルだもの。これくらいなんでもないべさ」と笑う久保さんの愛車はひっかき傷だらけ。ラジオのアンテナは「買ってすぐに折れて無くなった」という。
「おっ、まだ新しいな」
道端に何かを見つけた久保さんが、車を降りて手に取ったのはホヤホヤのヒグマの糞。
「堆肥の草が混じってる。牧草地で、堆肥と一緒に捨てられた飼料を食ったんだべな」
ヤマブドウやサルナシなど、餌場を確認しながら進んでいくと、林道は湿地で行きどまりに。すると久保さん、ぬかるみでヒラリと車を切り返すともと来た道を戻りだした。
「昔は2駆で来たんだもの。普通の車が入る道なら、ランクルで行けないことはない」
ときにマイナス30度Cを下回り、2m以上も雪が積もることもある知床の山。ここでは「車には絶対の信頼感が必要だ」と久保さんはいう。