世界的に空前絶後な猛暑が到来し、地球沸騰の時代といわれる今年の夏休み。アウトドアが好きな人でもさすがにもうすこし涼しくならないと外にお出かけしにくいかもしれません。きりっとよく冷えた部屋の中でのんびりとアイスコーヒーでも飲みながら、本を読む夏もまたおつなもの。夏の暑さを忘れられる2冊をご紹介します。
怪虫に夢中知られざる虫マニアの生態
『怪虫ざんまい昆虫学者は今日も挙動不審』
小松 貴著 新潮社 ¥1,650
カブトムシやチョウは誰もが知っているメジャーな虫。ならばネジレバネやキベリマルクビゴミムシはどうだろう。一般人には名前どころか姿すら想像できない、いうなれば怪虫。本書の著者はその怪虫を追い求める虫マニアで「虫探し以外のことをろくすっぽせずに生きてきた」筋金入りだ。そんな著者がコロナ禍の外出制限で虫に触れられない地獄の日々を味わう。
鬱々と過ごすなかでとあるポンプ式の井戸に光明を見出す。地下空間には地上ではお目にかかれない風貌の微少な生き物が生息していて、井戸水を出した際に一緒に出てくることがあるという。足繁く井戸に通い、ひたすらポンプを漕ぐ日々。そしてついに謎の生命体を引きずり出すのだった…。
井戸の謎の生命体をはじめ、著者がこれまでに出会った数々の怪虫の生き様に触れるとともに、虫マニアの生態も窺い知れる。執念深く追い求める姿には感服のひと言。この地球上にいる生き物たちの中には人知れず誕生し、ひっそりと消えていくものがきっと数多いるのだろうと思いを馳せざるを得ない。
絶妙な導きであなたもソロキャンパーに
『大人のソロキャンプ入門』
ヒロシ著 SB新書 ¥990
キャンプブームとなって久しいこのごろ、なかでもソロキャンプの人気は高い。本書はその火付け役であるヒロシの手引き書。ずぶの素人である聞き手が教えを乞う形で進む。「どう始めればいいんですか」、「川で缶コーヒーでも飲んでみたら」と、まずは自然に触れるところから。ソロキャンプの魅力は圧倒的自由、こうすべきなどと定義づけをしたくないという思いが巧みな導きに表われている。
※構成/須藤ナオミ
(BE-PAL 2022年7月号より)