地域おこし協力隊に聞いた! 移住して地域の最前線で働く人たちの リアル
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    2022.10.03

    地域おこし協力隊に聞いた! 移住して地域の最前線で働く人たちの リアル

    都市部の人材で地域力を活性化させるために創設された「地域おこし協力隊」。どんな活動をしているのか、意外に知らなかったりしませんか? 地域おこし協力隊員という生き方を、徹底調査しました。

    地域おこし協力隊とは

    長野県上田市 地域おこし協力隊 玉崎修平さん

    都内から200㎞、ロードバイクで半日もあれば行けるうえ、歴史好きだったので真田家ゆかりの地、上田に移住を決意。趣味は美術館巡り。小津安二郎好き。

    「地域おこし協力隊」とは、地方のニーズと若者を中心とした人材を繋ぎ、地域力の維持と強化を図る、総務省の取り組みだ。平成21年度に開始された当初は、団体数31、隊員数89人だったが、徐々に知名度も上がり、令和3年度には1085団体、6015人に増加。令和6年度には8000人に増やすという目標を掲げている。

    では実際、どんな活動を行なっているのか。具体的な活動内容は自治体により異なるが、おもに農業、漁業、林業への従事、地域ブランドや地場産品の開発、販売、PRなどの地域協力活動だ。今回は実際に地域おこし協力隊として働く4人の方に、話しを聞いてみた。

    地域おこしの定義は広い。自分のスキルを活用

    玉崎修平さんは、東京・狛江の出身。もともと稲倉の棚田のオーナー制度を利用して棚田米オーナーに参加していたが、それをきっかけに棚田の保全活動にも加わるようになった。

    「棚田とアウトドアを結びつけたくて、棚田キャンプというイベントを提案し、2017年から実現することもできました。ただ、それはあくまで外からの立場。移住して中から関わりたくなり、協力隊に応募しました」

    募集要項はまさに棚田の保全事業・販売誘客促進・情報発信。インテリアデザイナーだったので、コンピュータースキルを生かし、チラシやポスターを作ったり、棚田のキャンプサイトをデザインしたりと得意分野で活躍。今後はキャンプエリアを拡充していくのが目標だ。

    キャンプを通した新たな棚田の保全活動

    全国ではじめての「棚田CAMP」を企画。通年キャンプできるエリアを常設しつつ、農閑期の4月と11月にはイベントを開催。

    一方、瓜生資さんは、まったくの農業体験ゼロから、地域おこし協力隊の道を選択。

    「地域×仕事という分野に挑戦したいという思いがありました。耕作放棄地増加や後継者不足といった課題は、これからの時代に重要だと考え、飛び込んでみました」

    ミッションは農業振興。ベテラン農家を回って収穫の手伝いをしながら、農業のノウハウを学んでいる。

    「協力隊任期の3年は長いようで短く、起業準備は早めが理想です。新宮町は副業OK(自治体により異なる)なので、町の農作物や農体験の魅力を広める仕事を考えています」

    農業のノウハウを学びつつ、目指すは兼業農家

    福岡県新宮町 地域おこし協力隊 瓜生 資さん

    東京でネット通販の仕事をしているとき福岡出身の人に出会い、その地元愛に関心を抱き家族3人で福岡移住へ踏み切る。今はサツマイモの栽培に夢中。

    休耕みかん園を整備してサツマイモ畑に。サツマイモ活用のため焼き芋を研究中。今年は自分のイモで作るのが目標。

    地域おこし協力隊 隊員数&取組団体数の推移

    定住するには将来のビジョンが大切

    「将来的に、森を壊さず、持続的な森林を育てる自伐型林業に取り組みたいと思っていました。そんなとき、たまたま池田町で林業推進員として自伐型林業の担い手として協力隊を募集していたんです」

    と、川瀬千尋さん。とはいえ、活動できる環境、情報、場所は与えられるが、決まった仕事があるわけではなく、一から自分たちで作り上げる必要があった。山を使っていいよ、と言ってくれる人がいたので、1年目で自伐型林業メインの団体を立ち上げ、民有林の森づくりを実施。今年は間伐材でシイタケのホダ木や焚き火用の薪を販売して収益を上げ、2年後の起業に備えて活動資金を貯めている。

    自伐型林業を目指し森づくりに取り組む

    北海道池田町 地域おこし協力隊 川瀬千尋さん

    もとは自衛隊員。大好きな山菜とキノコがずっと採れる環境作り、が原点。ゆくゆくは森を維持しながらブッシュクラフトフィールドを作ったりもしたい。

    間伐材を玉切りし、薪用に。販売会も行なっている。キャンパーを誘致することで、整備をしてもらいながらフィールドを提供したい。

    「3年はあっという間なので、入隊してから方向性を決めていたら時間がない。3年後のビジョンを持って入ること。僕は森づくりメインの事業なので、次の時代へ託せることがゴール。1本の木を100年後に残したい、と思ったら、継続してくれる仲間も育てていかないと」

    川瀬さんには何年も先が見えているようだ。

    大学時代を過ごした土地に、Uターン移住したのが千布拓生さん。前職では自然環境調査をする会社(環境コンサルタント)に就職し、調査技術者として仙台に暮らしていた。

    自然体験型ツアーで環境保全&経済活動の両立を目指す

    岡山県真庭市 地域おこし協力隊 千布拓生さん

    出身は佐賀県。鳥取大学在学中、サイクリング部で日本縦断し、自然の管理に興味が湧くようになる。自然環境保全活動を楽しいツアーにしていきたい。

    自然を持続的に利用し、保全活動にもつながるような、独自のサイクリングツアーやエコツアーを模索中。

    「結局、調査だけだと自然環境を守ったり、持続的に利用したり、前に進んでいけないと感じて。しかも学生時代調査して歩いてた蒜山が舞台なので、土地勘もありました」

    これまで培った技術を生かし、エコツアーや物販の企画などを計画している。

    「ただ景色を見て終わりではなく、絶滅危惧種を守るための草刈りなどの作業に、能動的、かつ楽しく参加できる仕組みを考えています」

    どういうことをやりたいか、自身の専門性、キャリア、趣味が生きるかを、移住する前に知ることが大切だと話す。

    「移住する前に何回か現地に足を運んでみるべき。各自治体に窓口としてサポートしてくれるところがあるので利用しましょう。就任後はOBや協力隊の同僚からアドバイスをもらい、孤独にならないことも大切です」

    地域おこし協力隊任期終了後、約6割の人がそのまま定住しているという(令和2年度総務省調べ)。自分のやりたいことと地域のニーズがマッチングすることが、何よりも大切だ。

    ※棚田キャンプの詳細はhttps://inaguranotanada.jimdofree.com/campin-稲倉の棚田/

    ※構成/大石裕美

    (BE-PAL 2022年7月号より)

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