スノーシューでしか行けない冬限定の絶景
「二ノ滝の完全凍結は、例年2月上旬ころですね」という遊佐町のトレッキング・ガイドさん。
(とすれば、滝はまだ凍ってないかも…?)
取材時期が1月上旬なのは残念だよな~、との思いに取材班一同、口数は少なく足も重い。
スノーシューがズボズボ埋まる深雪をラッセルし、夏なら1時間の山道を歩くこと2時間半。
ブナの森の斜面をトラバースしていくと、谷間に突然、水の落ちる音が響いた。
やはりまだ早すぎたか……。
と、前を歩く写真家・後藤さんが
「おぉー!」
と叫んだ。
飛び込んできたのは、岩壁にしがみつくようにむんずと立ちあがる巨大な氷瀑アーチ。
氷の隙間からほとばしる流水に息をのむ。
かつて見たことのない“半熟の氷瀑”であった。
その辺にぶら下がっているツララを溶かして、馬肉入りラーメンを食べた。
しみる〜!
落水の轟音。仰ぎ見れば凍る滝。時間が止まったみたいだ。
雪山の静寂にしばらく身を委ねたい……ところだが、背中の汗が冷えてきて「早くラーメン食って下山しないと!」と急かす。
(ここは氷点下の雪山、激寒いので長居は危険なのである)
人間を寄せつけない荘厳さが、この滝を昔のままの姿に保ち、日本屈指の絶景たらしめているのだ。
鳥海山・二ノ滝(山形県)
アクセス:山形県飽海郡遊佐町。二ノ滝へのスノートレッキングのベスト時期は2月上旬〜3月上旬。 JR遊佐駅から車で15分の「胴腹滝」へ行き、そこから雪の中を歩いて往復約4時間。ガイドツアーがおすすめ。
ツアーやガイドのお問い合わせ先(※新型コロナウイルスの影響で中止の可能性があります)
遊佐鳥海観光協会
営業時間 8:30~17:30 (日曜日・年末年始は休み・祝日は営業)
0234-72-5666
https://www.yuzachokai.jp/
●「来ちゃいなよ遊佐町」
http://yuzamachi.com/
鳥海山ハイキング後の立ち寄りスポット
湧き水がブルーに輝く美しい湖、遊佐町の名勝「丸池様」。一つ目の魚が棲むという伝説が残る。
地元、庄内食材を用いた奥田政行シェフのイタリア料理店「アル・ケッチァーノ」は日本における地産地消レストランのパイオニアたる名店。時間が許すなら、ぜひ訪れたい。
アル・ケッチァーノ
0235-78-7230
http://www.alchecciano.com/
文=森山伸也 撮影=後藤匡人(「BE-PAL」2015年3月号より)