今や、知識の幅の広さは自他共に認めるところだが、21歳までは植物に無関心だったという。
「海外放浪をしていたときに行ったボルネオ島で、やっと“物心”がつきました(笑)。毎日が楽しいか楽しくないか、彼女ができただのできてないだの…。そういう世界だったのが、食虫植物のオオウツボカヅラを見て、“オレ、これ好き! ずっとやりたい!”ってなって、そこから人生、変わりました」
帰国後、清順さんは『花宇』に入社し、修業生活に入った。「コケ採り、ウラジロ採りからはじめたんですけど、オレ、最初から採集能力がハンパなくて。一日、山に入って採り続けるんですが、終わると体はドロドロ、顔は鼻水でカピカピ(笑)。10年20年かかってできるような仕事量をほぼ3年でこなし、すぐ、エースになりました」
植物を通じて人の感覚を刺激するのもオレの仕事です
花の原種から観葉植物、巨木まで、国内外から集めた植物は、『花宇』の温室や農場で出荷を待っている。その数3000種以上。なかでも、オリーブの老木は、清順さんがプラントハンターとして認められるきっかけになった木だ。実のつき具合が悪くなった樹齢1000年の古木の輸入に取り組み、日本で初めて成功させた。以降、オリーブの古木は各地で町づくりなどに活用されるようになった。
樹齢数百年のオリーブは、農場にもたくさん植えられている。しかし、枝先は切り落とされ、樹形はずんぐりむっくり。葉も少しだけ。大丈夫なのか?
「この枝、見てください。50~60㎝伸びてるでしょう。ちゃんと根付いている証です。枝を切るのは、コンテナに入るサイズにする必要があるのと、検疫のため。輸入の際に土を全部洗い流しますが、根から栄養が摂れない状態でも、葉があると運動していることになるので、眠らせるために葉を取り除くんです」