横浜市泉区・戸塚区を拠点に生態調査や里山保全活動を行なっている“ご近所生きもの観察案内人”の相川健志さん。今回は、メダカの知られざる生態について案内します。
メダカってどんな魚?
メダカは丈夫で飼育しやすく、繁殖しやすいため、シロメダカやヒメダカのように多くの改良品種がつくられています。今回は改良品種ではなく、もともと日本全国にいた野生のメダカにスポットを当てて見ていきます。
かつてメダカ(ミナミメダカOryzias latipesとキタノメダカOryzias sakaizumiiの総称)は、水路、浅い池沼、河川の流れの緩やかな岸辺などで出会うことができました。
しかし、現在では小川や水路のコンクリート化、農業水路と水田の分断、開発などにより生息地が少なくなっています。実は、環境省のレッドデータで「絶滅危惧Ⅱ類」にも選定されています。国内でもほぼ全域に生息していましたが、現在、メダカのすむ水域では、後述する特定外来生物のカダヤシに置き換わっている場所もあります。
メダカは雑食性で主に動物プランクトンを食べますが、底生生物や付着性藻類も食べます。
水面近くを群れで泳ぎ、水温が20度Cを超える4月から10月に水草などに産卵します。春に産まれた稚魚は、2~3か月で体長2cm程度に成長し、その年のうちに成熟します。自然界での寿命はふつう1年程度ですが、飼育下ではそれ以上生きることもあります。
メダカは、遺伝的に大きく北日本集団と南日本集団に分けられていましたが、形態的な差ともあわせて、それぞれキタノメダカOryzias sakaizumiiとミナミメダカOryzias latipesの2種類に分類されました。
メダカは地域によってそれぞれ独自の遺伝的特性があります。ヒメダカなどの改良品種、他地域や産地不明のメダカを放流することは、遺伝的攪乱の原因となってしまいます。
メダカの「違い」を知ろう
下の3枚の写真を見比べてください。
まずはオスとメスの違いです。(1)と(2)を見比べてみましょう。
どこが(どの鰭が)どう(形が)違うか、気づきましたか?
見分け方のポイントをわかりやすく説明します。下の「メダカのオスとメスの見分け方」を確認したら、もう一度(1)と(2)の写真を見比べてみましょう。
これでメダカの雌雄判別は完璧?ですね!
※小さい個体やオスに似たメスもいて判別しにくいものもいます。
メダカのオスとメスの見分け方
オス
- 背びれに切れ込みがある。
- 尻鰭が平行四辺形。
メス
- 背びれに切れ込みがない。
- 尻鰭が三角形
次に、ミナミメダカのオスとキタノメダカのオスの違いです。
(2)と(3)を見比べてみましょう。どこが(どの鰭が)どう(形、色などが)違うか気づきましたか?
下の「ミナミメダカとキタノメダカの見分け方」を確認したら、もう一度(2)と(3)の写真を見比べてみましょう。
ミナミメダカとキタノメダカの判別は、成熟したオスの特徴が顕著に出ているものしか判別できません。全国的にメダカの放流が行なわれていた時期があるので、採集したメダカをキタノメダカかミナミメダカかを同定するときは注意が必要です。特にオスは外部形態が酷似しているため判別が困難です。
ミナミメダカとキタノメダカの見分け方
ミナミメダカ
- 背びれの切れ込みが深い。
- 体側に黒い網目模様がない。
キタノメダカ
- 背びれの切れ込みが浅い。
- 体側に黒い網目模様がある。
メダカを飼育繁殖させてみよう
メダカは丈夫で繁殖しやすく、飼育もそれほど難しくありません。市販の飼育キットなどもあるので、ぜひ一度チャレンジしてみてください。
特定外来生物カダヤシとは
最後に、メダカに似た特定外来生物のカダヤシについて。カダヤシは北米産で、グッピーと同じように卵ではなく仔魚を産む卵胎生の魚類です。
日本には防火水槽のボウフラを駆除するため、全国的に放されました。「蚊を絶やす」ということで「カダヤシ」という和名がついています。
メダカとカダヤシの見分け方
- カダヤシは背びれの位置がメダカより頭側にある
- カダヤシはオスの背びれに切れ込みがない
- カダヤシのオスの尾びれが尖っている
- カダヤシのメスの尾びれが小さく、三角形ではない
- メダカは卵で増えるが、カダヤシは赤ちゃんで生まれる(お腹の中で卵を孵す「卵胎生」)