クルマ好きならずとも、クラウンの名はご存知のはず。1955年、日本初の純国産設計モデルとして登場。以来、トヨタの最上位モデルとして15世代にわたって販売されてきたのがクラウンです。そして今年7月にお披露目された最新型はライフスタイルの多様化に合わせて4つのバリエーションを揃え、そのうち3モデルはSUV志向となっています。
外遊びのマインドを宿した最新型クラウンのうち、最も高い実用性(アウトドアにおけるという意味で)を誇るクラウン エステートについて解説します。
高級セダンだけではなかったクラウン
今よりも車格が重視された昭和の時代。クルマは小型大衆車に始まり、ファミリー向けモデル、そして高級モデルという風に位置付けが明確でした。トヨタ・クラウンはその頂点に君臨し、会社で役職付きになった人や中小企業の経営者などが乗る憧れのクルマでした。有名な“いつかはクラウン”というキャッチコピーは、日本がオイルショックから立ち上がり、クルマの性能や装備が飛躍的に進化していた1980年代に用いられたものです。

7月15日に披露された新型クラウン4車種。左から、クロスオーバー、スポーツ、セダン、エステート。
と聞くと、クラウンはフォーマル志向のクルマと思いがちですが、実際はその歴史の中で2ドアハードトップやピックアップトラック、ステーションワゴンなど、さまざまなバリエーションをラインアップしていました。中でも独自のプレミアム感を確立してきたワゴンは、途中から名称をエステートへと変更し、クラウン エステートとして2007年まで販売されていました。

横から見た写真。並びは上の写真と同じ。
従来のクラウン エステートはセダンをベースに車体後方を広い荷室へと設計変更したものでしたが、新型は派生モデルにとどまらない独自性が光るスタイリングです。SUV系には違いありませんが、ラゲッジ後端まで水平基調を保つルーフラインが、このモデルをステーションワゴンたらしめています。

クラウン エステートは力強さを感じさせるデザイン。フィールドでも映えそう。ハイブリッドシステムを搭載し、電気式4WDシステムであるE-Fourにより、悪路走破性も高いと予想されます。
新しいステーションワゴンのカタチを具現化
「いやいや、これをワゴンというには無理があるでしょ!」というアナタ。小型車ならそういう気持ちもわかりますが、クラウン エステートの全長は4,930mmもあるのです。当然、後席はフルフラットにもでき、荷室の広さは現時点で正確なデータこそ公表されていないものの、写真から伝わる以上と断言できます。

ルーフラインに注目。荷室まで天井が高く、積載能力の高さを感じさせます。全幅は1,880mm、全高が1,620mm 。
むしろ、クラウン エステートは「セダンの車体後半を荷室用に設計したステーションワゴン」という既成概念を覆す存在かもしれません。このカテゴリーの選択肢は年々少なくなり、SUV人気が高まるばかりですが、その理由のひとつにSUVのかっこよさがあります。商用車的な長方形のスタイリングは道具感があり、それはそれでいいものですが(ボルボの旧世代エステートがキャンプ好きに人気なのもそうした理由による)、毎日フィールドに行くならともかく、家族の普段使いや仕事での利用など、目的や行き先を選ばない汎用性の高さを誇るSUVこそ、現代のトレンドです。

欧州では高級スポーツカーなどをベースに荷室だけを専用設計とした、シューティングブレークが作られていました(現在のそれはよりステーションワゴンに近いタイプ)。貴族が狩猟に行くための実用性を加味した高級車という位置付けです。クラウン エステートには、そんなシューティングブレーク的なキャラクターも垣間見えます。
日本のスタイルが海外のアウトドア文化にも影響を与える!?
モダンなクラウン エステートは実用性のみならず、新しい価値観、ライフスタイルを投影できる、実に魅力的な存在といえるでしょう。ちなみにクラウンは長らく国内専売モデルでしたが、新型ではグローバルに展開されます。私たちは主にアメリカのアウトドア文化、クルマを使った遊びに大きな影響を受けてきましたが、これからは日本発のクラウンが海外に刺激を与えることになるかもしれません。
そんな誇らしい思いを巡らせながら、クラウン エステートで大人の雰囲気漂うアウトドアスタイルを構築する計画を立ててみませんか? 発売は2023年中が予定されています。

クラウン エステートの内装は未公開。写真はクロスオーバーのもので、基本デザインが大きく変わることはないと思われます。
※クラウン エステートの正確な発売時期、価格は未定です。
トヨタ自動車ホームページ

自動車ライター
佐藤篤司
男性週刊誌、ライフスタイル誌、夕刊紙など一般誌を中心に、2輪から4輪まで“いかに乗り物のある生活を楽しむか”をテーマに、多くの情報を発信・提案を行なう自動車ライター。著書『クルマ界歴史の証人』(講談社刊)。日本自動車ジャーナリスト協会(AJAJ)会員。