日本からも近く、ファンも多い台湾。その味を、キャンプでも食べたい! そこで前回は、キャンプで台湾料理を楽しむコツを、現地に詳しい料理家・沼口ゆきさんに伺いました。
今回は、台湾では朝ごはんの定番「蛋餅(ダンピン)」と、ユニークなサンドイッチの作り方を教わります。
ほどよいボリュームが朝にぴったり「蛋餅(ダンピン)」
蛋餅は、台湾では朝ごはんにおなじみ。基本は、もちっりした小麦粉の生地と薄焼き卵を焼いて折りたたむシンプルな料理です。現地では、バリエーションも豊富でさまざまな具が加えられます。
「今回は、失敗なく作りやすいクレープタイプです。基本をマスターしたら、生地を折りたたむときに、ツナとチーズや、缶詰のとうもろこしをのせたり、ベーコン、ハムなども合います。ある具材で楽しんでみてください」(沼口さん)
●基本の蛋餅
<材料(1人分)>
生地・・・1枚
卵・・・1個
細ねぎ(小口切り)・・・1本
塩・・・一つまみ
サラダ油・・・大さじ1/2
醤油膏(ジョンヨウガオ)・・・適量(お好みで。酢じょうゆに豆板醤の組み合わせや、ソース、ケチャップ、マヨネーズなどをかけても)
※醤油膏は前回の記事を参照
<作り方>
1 ボウルなどに卵を割りほぐし、細ねぎ、塩を加えてよく混ぜる。
2 フライパン(直径20cmくらいがおすすめ)に油を中火で熱し、1を流し入れる。表面が固まらないうちに、生地をのせ、ヘラなどで押し付けてくっつける。
3 上下を返して30〜40秒焼く。端から3回折りたたみ、たたみ終わりを下にする。食べやすく切ってうつわに盛り、醤油膏をかける。
●キャンプで作る生地
<材料(4〜5枚分)>
A ・中力粉・・・100g(または薄力粉、強力粉、それぞれ50g)
・片栗粉・・・10g
・塩・・・小さじ1/8
・サラダ油・・・適量
<作り方>
1 密閉袋にAを合わせてふるい入れる(家庭でつくる場合はボウルなどへ粉をふるい入れる)。
2 焼く前に、水1と1/5カップ(分量外)を3回ぐらいにわけて加え、ダマができないように滑らかになるまでよく混ぜる。
3 フライパン(直径20cmくらいがおすすめ)に油少々を弱めの中火で熱して薄く広げ、2をおたま1杯分ほど入れてすばやく広げる。表面が乾いたら上下を返し、両面で3~4分焼いて取り出す。
蛋餅(ダンピン)作りのポイント
1 卵液が固まらないうちに生地をのせてくっつける
実際に作ってみると、レシピにもあるようにいくつかコツがありました。その一つが、薄焼き卵がかたまり切らないうちに、生地をかぶせること。フライパンに卵液を流し込んだら手早く広げ、準備しておいた生地をかぶせます。作り慣れないうちは、全ての材料や調理道具などを使いやすく用意しておくとよさそう。
2 巻くのではなく折りたたむ
また、つい卵焼きのように巻きたくになりますが、この料理は「折りたたむ」が正解。菜箸やへらなど使いやすい調理器具で、端からたたんでいきます。
3 生地の粉類は全てふるって密閉袋で持参する
生地を混ぜる際は、キャンプなら密閉袋をボウル代わりに、お箸3本で混ぜると手軽で洗い物も少なくすみます。お箸3本を持ち、袋の中をホイッパーのようにぐるぐる。袋の角などに粉が残らないよう、滑らかになるまで混ぜます。また、袋の外から揉むのもおすすめです。「この方法なら、おたまを使わず、袋から直接フライパンへ注いでもよいでしょう」(沼口さん)。
密閉袋で作る方法で、記者も蛋餅を作ってみました。フライパンは、直径20cmのテフロン加工された、使い慣れたもの。
生地を焼く際、最初はおたまを使いましたが、想像以上にすぐ焼けていくため、袋から直接生地を注いでフライパンに回し広げるほうがスムーズに感じました。また、油をしきすぎると生地がベタッとなるため、レシピにあるよう「少々」を守るのもポイント。
完成! 生地が、もっちもち。卵に入れた長ねぎもいいアクセントです。これ一つでも満足感がありますが、いろいろな具材をはさみたくなる、懐の深いシンプルな味わいでした。
キャンプにもおすすめ「自由なサンドイッチ」
沼口さんによると、台湾はパン屋も意外と多いのだとか。中でも、朝食にも人気のサンドイッチ店は、焼いたお肉とピーナッツバター、トマトとキウイとチーズなど、日本ではお目にかかれないようなユニークなメニューもあるそうです。
「たとえば、薄切り肉をしょうゆと砂糖に五香粉をきかせたタレで焼き、ピーナッツバター、スライスチェダーチーズを挟んだホットサンドはいかがですか? 台湾の人たちは、ピーナッツバターもよく使います。ピーナッツバターは、加糖・無糖・粒ありなし、いずれでもお好みで。チーズなら、チェダーチーズ。この具材をレタスに巻いて食べてもおいしいですよ」
ちなみに沼口さんの最新著書『はじめてなのに現地味 おうち台湾菜』(主婦の友社)には「メロンパンサンド」なるものも! 切り込みを入れたメロンパンの、内側の上下にピーナッツバターを塗り、ハムとレタスを挟んだ一品です。「意外な組み合わせですが、パンと具をピーナッツバターが取り持ってくれます」(沼口さん)。
粉物が身近な台湾ならではの、自由なスタイル。でも、どこか親しみも感じるのは、私たちにとっても身近な食材や調味料でまるで現地のような味わいが楽しめるところにもあるのかもしれません。
世界の料理と聞くと、ちょっと難しく感じるかもしれませんが、台湾料理はおおらかで、日本人にとっても食べやすいものが多いのも特徴。次のキャンプで、どうぞ試してみてください。
PROFILE|沼口ゆきさん
フランス料理と製菓を学び、料理研究家・有元葉子氏に約8年間師事後、独立。台湾料理のおいしさとおおらかさに魅了され、2015年秋から台湾へ留学。東京と台湾・新竹の2拠点生活で、現地でも料理の仕事に携わる。著書に『台湾調味料いただきます手帖』(成文堂新光社)、『台湾のあまいおやつ』(文化出版局)ほか多数。2022年7月19日に『はじめてなのに現地味 おうち台湾菜』(主婦の友社)を発売したばかり。
『はじめてなのに現地味 おうち台湾菜』
ちょっと難しそうなローカル台湾ごはんを、日本にある調味料や食材で再現。不動の人気メニュー「ルーロー飯」や「ジーロー飯」のひと鍋で完成させる作り方から、台湾のおかあさんがざざっと手早く作る台湾式の時短料理、屋台めし、夜市めし、体にいいスイーツなどをたっぷりと紹介。また、台湾人は人口の約10%が、肉、魚を食べない菜食主義。体に負担のかからないヴィーガンおかずや体にいいおやつも紹介されています。